2024年07月13日( 土 )

次世代ペロブスカイト太陽電池、2023年に実用化か~低コスト化、発電効率向上へ

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東京大学大学院総合文化研究科 教授 瀬川 浩司 氏

 次世代太陽電池であるペロブスカイト太陽電池の開発が進んでいる。ペロブスカイト太陽電池の発電層の厚さは一般的なシリコン太陽電池の500分の1以下と非常に薄く、エネルギー変換効率はシリコン太陽電池と同等の最大25.5%。製造工程が簡便なため、製造コストはシリコン太陽電池の約5分の1から3分の1になると予想されている。2023年には実用化される可能性が見えてきた。

ビルの壁やEVの屋根にも設置可能に

東京大学大学院総合文化研究科教授・瀬川浩司氏
東京大学大学院総合文化研究科教授・瀬川浩司氏

 太陽光発電は、容量ベースで100万kWの原発60基分に当たる5,984万kWがすでに導入されている(2020年12月時点)。ペロブスカイト太陽電池の研究を行っている東京大学大学院総合文化研究科教授・瀬川浩司氏は、「全国の太陽光パネルの設置面積は、東京・山手線の内側約65km2の約60倍にあたります。次期『エネルギー基本計画』で掲げている、電源構成における再生可能エネルギーの割合36~38%の大部分を太陽光発電で実現するには、太陽光パネルを現在の約3倍の面積に設置することが必要となりますが、ペロブスカイト太陽電池は薄くて軽く、ビルの壁やEV(電気自動車)の屋根などさまざまな場所に貼ることができるため、今後普及することが期待されます」と話す。

 ペロブスカイト太陽電池はプラスチックのフィルムなどにも加工できて、軽くて折り曲げられるため、メガソーラーやビルの屋根のほか、ビルの壁やEVの屋根など一般的なシリコン太陽電池を置けない場所にも設置できる。また、室内などの光の弱い場所でも発電できる。ペロブスカイト太陽電池セルのエネルギー変換効率は最大25.5%と、研究レベルではシリコン太陽電池とほぼ同じ水準まで高まっており、各メーカーは製造ラインを組み立てている段階にあり、早ければ約1年半後には実用化されると予想されている。

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 瀬川氏は「ペロブスカイトをベースにした太陽電池の変換効率が将来的に35%まで高まれば、EVの車庫の屋根(10m2)に設置すると、約100kmの走行に必要な電力10.5kWhを1日で発電できるようになります。また、EVが増えると充電スタンドが足りなくなることが予想されますが、ペロブスカイト太陽電池をEVの車体の屋根(2m2)に設置すれば約20kmを走行できる電力2.1kWhを車載太陽電池1日分で賄えるため、近所への買い物なら充電せずにこれだけで走れるでしょうし、長距離でも車載太陽電池で充電時間を節約し走行距離を伸ばすことも期待されます」と語る。

 住宅用のシリコン太陽電池(平均で約4kW)は重量があり、既存住宅の屋根には重量制約で載せられないこともあるため、軽量で設置しやすいペロブスカイト太陽電池の需要があると見込まれている。また、「太陽光発電所を建設して20~30年が経ち、シリコン太陽電池を交換するタイミングでも、低コストで設置できるペロブスカイト太陽電池の需要が出てくると考えています」(瀬川氏)。

 ペロブスカイト太陽電池は、EV向けであれば10年程度、ビルの壁向けは30年以上、住宅の屋根向けは20年以上の耐久性が求められるため、耐久性を高める研究も進む。熱や光に安定性のある材料を組み合わせることで、耐久性を上げる工夫が行われている。

 「海外では、すでに太陽電池研究の約8割がペロブスカイト太陽電池の研究になっています。一方、現在の太陽電池の約95%以上を占めるシリコン太陽電池は製造技術がすでに確立しているため、原料シリコンの調達価格や電気代、大量生産によるスケールメリットにより、いかにコストダウンできるかが焦点となり、中国が有利となっていますが、ペロブスカイト太陽電池は国内で原料調達が可能で、日本企業が得意な技術を活用して製造できる日本に有利な分野となることが期待されます」(同)。

ペロブスカイト太陽電池、1.1mm厚のガラス基板(左)と高分子フィルム基板(右)
ペロブスカイト太陽電池、1.1mm厚のガラス基板(左)と高分子フィルム基板(右)

今後の太陽光発電の活用

 再エネが普及しているドイツでは、現在の消費電力約8,000万kWの約2.5倍に当たる2億kWの太陽光発電を30年までに導入し、温室効果ガスを60%以上削減すると発表している。欧州では、再エネが日本の2倍以上普及しているため、蓄電池やITを活用しながら、天候や時間帯によって供給量や需要が変わる電力をどう管理するかという段階まで進んでいるという。

 ソフトバンク(株)の子会社のHAPSモバイル(株)は、地上約20kmの雲の上で基地局を飛行させる「HAPS(高高度基盤ステーション)」事業を展開し、スマホなどの通信に必要な電力を賄うソーラーパネルを搭載した基地局のテスト飛行を進めている。

 瀬川氏は「雲の上に基地局があれば天気に左右されず、台風など非常時に地上で停電が起こったり、地震が起きたりしても影響を受けないため、災害に強い通信インフラとなることが期待されています。このような基地局の電力供給においても、ペロブスカイト太陽電池が活用できるのではないかと考えています」と話す。ペロブスカイト太陽電池は次世代太陽電池として、今後幅広い分野での利用が予想される。

【石井 ゆかり】


<プロフィール>
瀬川 浩司
(せがわ・ひろし)
 東京大学教授(大学院総合文化研究科広域科学専攻、大学院工学系研究科化学システム工学専攻、先端科学技術研究センター)。1989年京都大学大学院工学研究科博士課程修了。京都大学助手、東京大学大学院助教授を経て、2006年から東京大学教授。主な研究テーマはペロブスカイト太陽電池、量子ドット太陽電池、色素増感太陽電池、蓄電機能内蔵太陽電池などの次世代太陽電池の開発。

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