2024年04月26日( 金 )

久留米市舞台に睡眠測定器の実用化へ~東大発ベンチャー「アクセルスターズ」

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 久留米市が実施する特定健診への導入を念頭に、東京大学発ベンチャー「アクセルスターズ」が同市を舞台に“良質な睡眠”が取れているかを測る睡眠測定器の実用化に乗り出した。腕時計型端末のプロトタイプを使って、年明けから同市職員や(株)ブリヂストン久留米工場の社員を対象に実証実験を始める。

 同社は、福岡市出身で東京大学大学院医学系研究科の上田泰己教授が設立。上田氏は久留米大附設高校、東大医学部卒。生物が生まれながら持つとされる「体内時計(生物時計)」研究の第一人者として知られる。

 「眠りが浅い」「ぐっすり眠れない」といった睡眠の質を調べるには、入院してセンサー付きのヘッドギア風の機器を頭に装着し、睡眠脳波を測定する方法が一般的。

 これに対して上田教授は、微小な時間あたりの加速度の変化率を表す「加加速度(かかそくど)」によって筋肉の動きを測定するセンサーを組み込み、「睡眠」と「覚醒」を峻別する腕時計型睡眠測定端末のプロトタイプを開発した。

 良質な睡眠の判断には、睡眠中に目が覚める中途覚醒の正しい検出が欠かせない。同社によると、プロトタイプは、睡眠ポリグラフ検査(PSG)で記録される睡眠と覚醒が正しいデータとすれば、覚醒を判定できる確率は82.2%に上るという。

 実証実験は2021年度からの3年間を想定。まず、年明けから久留米市職員と3交代勤務制のブリヂストン久留米工場社員の計10~20人に、入浴時などを除き2週間連続でプロトタイプを装着してもらい、睡眠時間など必要なデータを集める。

 その後、さらに対象人数を拡大し、睡眠時間と病歴などを突き合わせる。集めたデータを基に、睡眠不足の蓄積による「睡眠負債」が原因となる生活習慣病やうつ病などとの関連性を分析、生活習慣改善の指導方法や治療法などを探る。

 同社は22年度中に腕時計型睡眠測定端末の開発を終え、(独)医薬品医療機器総合機構に医療機器としての製造販売を承認申請する予定。支援する久留米市は特定検診に“睡眠健診”の導入を計画している。

 プロジェクトには不眠症などの睡眠障害研究で実績が豊富な久留米大学、久留米医師会、特定健診・特定保健指導を手がける(公財)ふくおか公衆衛生推進機構(福岡市)も参加する。久留米大学の内村直尚学長は日本睡眠学会理事長で、「午睡(昼寝)の勧め」でも知られる。

 久留米市は、福岡県がバイオ産業の拠点と位置付ける久留米リサーチ・パークに関連企業の集積を進めている。アクセルスターズは同パークに本社兼福岡オフィス、東大付属病院の研究棟を改修したビルに東京オフィスを置く。

【南里 秀之】

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