2021年12月07日( 火 )
by データ・マックス

地域中間流通(卸)と今後の戦略(後)

コモディティー化という新たな脅威

ネットショッピング イメージ 最近、消費のコモディティー化をあちこちで耳にする。たとえばファッションだが、かつてそれは文化であり個性の発露だった。ショーがあり、マスコミが取り上げ、店がその商品を消費者に提供した。

 しかし、今やファッションはコモディティー化した。低価格で次々と新商品が提供されることが日常的になった。ユニクロなどのファストファッションがその象徴だ。専門店、百貨店の不振はファッションコモディティー化の結果といえる。

 勝ち組といわれるファストファッションにも新たな敵が現れ始めた。たとえば、SHEIN(シーイン)というオンライン専業企業だ。オンライン専業だから店舗はもたない。紳士・婦人・子どもの服飾雑貨、軽家電やペット関連商品をネットで世界中に販売する。店舗がないから価格が安い。オンラインを介して豊富な商品情報を消費者に提供する。セールやサービスもふんだんに用意する。

 本拠は中国だ。「世界の工場」が今や販売者に変わろうとしている。新しい企業とシステムは、ユニクロやZARA、H&Mといった巨大ファストファッション企業にとって対岸の火事ではない。

 似たような流れは食の分野にも必ずやって来る。自らの足を店舗に運び、重い荷物をその手にもって、ほぼ毎日同じ行動を強いられることに楽しさはない。それを省略してくれるシステムが誕生すれば、消費者はそれに目を向ける。

 今のところ、オンラインは水などの飲料や米といった重量物が中心で、売上も大きなものではないが、オンライン利用人口のさらなる増加を見込んで有機栽培生産者、通販専業者、加工食品メーカーなどが積極的に参入を始めている。参加者が多くなれば、そこに競争と工夫が生まれ、システムは効率化しサービスも充実する。流通構造そのものが激変するのだ。

新たな競争者と卸

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 たとえば、一昔前までは家庭にモノを運ぶといえば、ヤマト運輸や日本郵便などの宅配会社だった。ところが、オンラインの普及に合わせてウーバーイーツなどのフードデリバリー、ハコベルなどのプラットフォーマー、物流支援のラクスルなど、宅配会社に加えて15社以上のラストワンマイル業者が、今や年間10兆円を超えるオンラインニーズに取り組んでいる。そのほか、ヨシケイなどのミールキットや食事の宅配を手がける企業も、高齢者や富裕層の支持を集めている。

 参入者が増えるとそこに競争が発生し、消費者への提供手法も進化する。遠からず、オンラインリテールはさらに消費者に浸透し、やがて奔流になる。それは卸と、卸に頼る小売に激変をもたらす。

 いくら大きな売上を手にしたとしても、卸の粗利益率は一桁だ。販売管理費の削減もできないから、結果として1%の経常利益を手にするのも容易ではない。上位の企業がほぼ不変なのは、儲からないために積極的なM&Aが行われなかったことを物語る。それは方向性を変えない限り、遠からず卸業態の限界がやって来ることを意味している。

ホールディングスの役割

 小売が巨大化し、圧倒的なシェアを手にするのに合わせて、卸も同じように巨大化して互いの適正利潤を手にできるようになれば理想的だが、おそらくそうはならない。理由は「儲からない」からだ。儲からない事業に積極的な投資を行う企業はない。それは卸の先行きを暗示する。規模に関係なく、細々と生き残るか、消え去るかのどちらかだ。

 ヤマエ久野はこのほど、ホールディングス化という戦略に転じた。ホールディングス化の目的は、多様な選択と次世代へ乗り継ぐための対策の決定だ。単にグループ企業の統括ではない。有望業種のリサーチと、そこへの思い切った投資をジャッジする極めて重要な役割がある。それには先見性に合わせて胆力も必要だ。それがなければホールディングス化に価値はない。

 ヤマエ久野に問われるのは、選択と集中投資の部分だ。「利益は顧客の満足量=3%の経常利益率は満足分岐点」ならば、卸の数値はそのレベルからほど遠い。ヤマエ久野も同じ課題をもつ。このため、本業にこだわらず、思い切って新たな分野への転身も目指すべきだ。それができるかどうかが、今後のヤマエ久野に問われると言ってもいいだろう。

(了)

【神戸 彲】

(中)

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