2024年04月30日( 火 )

ヨドバシカメラ、2代目藤沢和則社長による「打倒アマゾン」宣言(前)

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 創業者にとって、最大の課題は事業承継だが、失敗例も少なくないため、悩みは尽きない。現在、注目を集めているのが、(株)ヨドバシカメラの2代目社長・藤沢和則氏。ネット通販の巨人・アマゾン打倒を宣言した。和則社長は、創業者である父親・藤沢昭和氏を超えることができるか。

全国初、実店舗とネット販売を同じ比率にする

ヨドバシカメラ イメージ 家電量販店大手の(株)ヨドバシカメラ(東京・新宿区、藤沢和則社長)は10月22日、通販サイト「ヨドバシ・ドット・コム」の家電や雑貨などのネット販売比率を現在の3割から5割まで引き上げると発表した。

 物流拠点の整備に600億円を投じて全国で翌日配送ができる体制を整える。通販の拠点は現在5カ所ある。今後は三重県などにも新設し9拠点体制にする。

 ネット通販の競争力を高め、成長を続けるアマゾンジャパン(同)(東京目黒区、ジャスパー・チャン社長)などネット専業との顧客争奪に向けて、実店舗を軸にしてきた小売大手が「変身」を図る。

 ヨドバシ・ドット・コムは家電以外にも加工食品や雑貨、スポーツ用品などを取り扱っているが、新型コロナウイルスの感染拡大でネット通販市場が拡大していることもあり、コロナ前まで約600万点だった商品数を840万点まで増やした。

 ヨドバシ・ドット・コムは価格面でアマゾンに対応できる価格提供を実施しているが、商品のラインアップや在庫数が少ないなどの面でアマゾンに引けを取っていた。商品の拡充に加えて、物流拠点も強化して、アマゾンに対抗する。

 ヨドバシの2021年3月期の売上高は7,318億円で、ネット通販は全体の約3割にあたる2,000億円強だったという。グループで現在約2割のビックカメラ、5年後をめどに約1割を目指すイオンと比べても比率は高いが、それを5割まで引き上げる。

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 ネット通販専業は実店舗をもたない。一方、実店舗のネット比率は小さい。ヨドバシは、実店舗とネット販売比率を同じにする初の会社になることを目指す。

60年の創業以来初の社長交代

 ヨドバシカメラは20年7月1日、藤沢和則副社長が社長に昇格した。創業者の藤沢昭和社長は代表権のある会長に就いた。社長交代は1960年の創業以来初。

 和則氏は昭和氏の長男で、ネット通販事業を主導してきた。新型コロナ感染拡大の影響で、消費者の行動様式が変わるなか、世代交代でネットと実店舗との営業の融合を進める。昭和氏は持株会社の(株)ヨドバシホールディングス(HD)では引き続き社長を務め、経営に参画する。

 昭和氏は1960年に東京・渋谷で藤沢写真商会を創業。67年に東京・新宿に淀橋写真商会を設立して、74年にヨドバシカメラに商号変更した。89年に日本で最初といわれるバーコードを使った「ポイントカード」システムを開発して発行した。

 都市部の一等地に大型店を出し、単価の高いカメラを値引き販売して運営するビジネスモデルを確立。他の量販店と異なり、企業買収・合併は行わない。株式を上場しない。売上高よりも利益を重視するなどの経営方針を採る。また家族量販店としては珍しく不動産事業にも進出している。

 ヨドバシカメラは大阪・梅田と東京・秋葉原に都市型大型店を構えており、店舗あたりの売上高はいずれも1,000億円前後の巨艦店だ。

 転機は1997年。JR大阪駅前の旧大鉄局跡地をめぐり、入札で(株)三越と(株)パルコと競合したが、2社より250億円以上高い1,000億円強で落札した。「マルチメディア梅田」は日本最大級の売上高を誇る店舗に育ち、ヨドバシカメラは関東ローカルから全国区へと躍進した。

(つづく)

【森村 和男】

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