防水工事会社からITのエキスパート誕生　新しい時代への懸け橋に（後）

創業者の心、継承者の気概

　31歳での入社以来、8年にわたって私を育ててくれた宇都顧問。話を切り出されたときはさすがに動揺しました。けれども、80歳を目前に、会社が一番幸せになる継承の在り方を日々模索する姿を見てきましたし、お心はすぐ伝わりました。「CG部門はたしかに会社に貢献してきたが、建築防水技術とIT 技術とでは専門性がすでに離れてしまっていることでもあるし、今後はおのおのの道を歩んでいこうではないか」と。

　こうしてIT部門の未来を託されたわけですが、まったく不安を感じないわけではありません。これまで苦楽をともにしてきた直属の部下をはじめ、現地スタッフとその大勢の家族も、今後は自分の力で長く支えていかなければなりませんから。しかしながら、私はこれまでの学びを通じて、理念に共感する人たちが会社を動かせばできないことはないと信じています。仕事では常にたしかな手応えを感じてきましたので、どんな試練も乗り越えていけます――なんて、新人がちょっとカッコつけすぎですね（笑）。

IT技術で世の「格差」をなくす

　私どもの事業は実際、社会のさまざまな「格差」をなくすことに貢献できると思うのです。たとえば、住宅購入を検討しているお客様側もネットを少し調べれば簡単に個々の企業の「通知表」を知ることができますし、店舗に足を運ぶ時には、候補の会社がすでに2、3件に絞り込まれているというデータがあります。一方で、営業マンが心身をすり減らしながら夜中まで駆け回るような旧来の営業がいまだに行われています。社会に内在するこのようなギャップを解消することは、働き方改革の点でも有意義ですし、私どものDX事業はそこにお役に立てるものと確信しています。

　また、私どもはIT技術を駆使して、社内業務のあらゆる部分をお引き受けすることができます。在庫管理から受発注業務、施工業者さまの図面作成まで、すでにいくつものご相談を頂戴しています。DXは時間と場所の制約から人々を解き放ちました。遠くからでも事業に参画できること。これは、経済の大都市一極集中を緩和して各地方の活性化に、ひいては持続可能な社会というものにつながるのではないでしょうか。

　さらに、フィリピンの若く優秀なIT技術者と協働する私どもの在り方は、慢性的な人材不足に悩む今の日本において、1つの刺激になると思います。若者たちが仕事を渇望して一生懸命勉強してもなかなか見つからない国と、募集しても人材が来ない、定着しない国とが、具体的な仕事のシェアリングによって結び合う。世界レベルでの不均衡は、こうしてなくすことができると思います。

　「僕は威張って商売したいんだ」と宇都顧問はよくおっしゃっていました。日々汗水流して一緒に働いてくれる職人さんたちを泣かせたり、恥ずかしい思いをさせたりするような経営は絶対にしないと。誰にも気づかれない、収益にも一見結びつかない、そんなことも厭わず行い、信頼を積み重ねてきた宇都顧問に倣って、私どもは新しい時代への懸け橋になれるよう頑張っていきます。

（了）

【文・構成：黒川　晶】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：原口　潤也
所在地：福岡市博多区博多駅前2-12-12
設　立：2021年9月
資本金：1,000万円