商都・福岡には名建築が少ない?「かっこいいビル」を考察(前)
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明治竣工の近代建築
「福岡市赤煉瓦文化館」(設計:辰野金吾+片岡安)、「旧福岡県公会堂貴賓館」(設計:三條栄三郎)の2つの建物は、ともに明治竣工。この手の近代建築は福岡市内に少ない。中洲から天神に抜ける明治通り沿い、那珂川にかかる西大橋から両建築を左右に臨める。
赤煉瓦文化館は日本生命保険(株)の九州支店として、1909(明治42)年に竣工した。この場所は、明治時代中ごろまで福岡城下町の入口である枡形門があり、まさに福岡の玄関口だった。69年に明治洋風建築を代表するものとして国の重要文化財に指定されてからは資料館として活用され、94年から市民に開かれた文化施設「福岡市赤煉瓦文化館」として開館した。現在は地元のベンチャー企業などを誘致してエンジニアカフェやレンタル会議室など、若者の交流拠点として運用活用されている。ちなみに東京駅の設計にも携わった辰野金吾は、佐賀県唐津市出身だ。
近代建築物の保存は、その時代の隆盛を想起させ、またそれを遺してきた脈絡を感じさせる。かつて九州の中心は長崎→熊本→北九州→博多へと移り変わってきたが、博多が中心となってからの歴史はまだ浅い。「鉄は国家なり」と、日本国家の礎を築くために、八幡製鐵所をはじめとする北九州の湾岸地帯が鉄で繫栄し、九州の玄関口として力をもった時代がある。その名残で、北九州には明治・大正期のころの隆盛を象徴するような近代建築が多く残っているのだ。
福岡市が力を持ち出したのはそれよりもずっと後の1970年代、高度成長期も後半のころだった。国を形づくる鉄鋼の成長時代を経て、成熟社会へと移った21世紀には、北九州市と福岡市の経済・人口規模は逆転し、今に至っている。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、その後独立。現在は「教育」「デザイン」「ビジネス」をメインテーマに、福岡市で活動中。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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