商都・福岡には名建築が少ない?「かっこいいビル」を考察(後)
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高層ビルという商品
超高層という形式が誕生したのは、19世紀末から20世紀初頭だ。これを可能にしたのは、大きく3つの技術革新である。スチールをベースにした構造技術、縦方向の移動手段であるエレベーター、人工環境をつくり出す空調技術だ。これらの革新とともに、人類の欲望は縦方向への開拓が可能になったというわけだ。
この高層ビルという商材は、「資本主義的合理性」「建築的効率性」「最少の投資と最大の費用対効果」などと武装し、空間量を効率的に最大化して商品化した非常に優秀な投資商材となった。いわば「かっこよくない」ビルが多いのだ。「かっこいい」とは主観的な感じ方で、論理的な説明が難しいが、感覚的な選別であるデザイン、いわゆる「意匠」といわれる手法は、これらの武装された目的の下僕となって、これからもさまざまな意匠をつくり出していくのだろう。
福岡は、「何か面白いことをやっているみたいだから応援してやれ」という気風があるまちだ。天神ビッグバンによる高さ制限規制緩和を受け、肉厚になっていく天神界隈のビル群をよそ目に、ヒューマンスケールな屋台のような福岡独自の建築的深化も期待したい。都市を纏う叡智の象徴として、超高層だけを追従するどこにでもあるような都市像は、九州には似合わない。
(了)
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、その後独立。現在は「教育」「デザイン」「ビジネス」をメインテーマに、福岡市で活動中。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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