小売こぼれ話(15)ドラッグストアの懸念すべき動き(前)
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優越的地位の乱用
公正取引委員会はこのほど、独占禁止法で禁止している「優越的地位の乱用」の疑いで楽天グループへの立ち入り検査を実施した。戦後、施行されたこの法律が注目されたのは高度経済成長期だ。雨後の筍のように生まれた新型小売業は、あっという間に市場を席巻した。
新興小売業の売上は毎年二桁の伸びが定着し、店舗間の価格競争も熾烈を極めるようになる。販売量も従前の個人店舗と異なり、桁違いになる。そんな実績と将来性に着目したメーカーや卸が日本型GMS、スーパーマーケットの商品部に日参した。
メーカーと卸はよりたくさん売り込みたいし、小売は売上と合わせてより大きな利益を手にしたい。それぞれがぎりぎりの交渉で取引に臨む。そこには当然、過当な要求も発生する。
小売業に限らず、すべての取引で有利な立場に立つのはいうまでもなく、買い手だ。売り手はよほどのことがない限り、買い手有利のかたちを変えることはできない。そこに出来上がるのが「ご無理ごもっとも」の構図だ。やれ価格を下げろ、やれ店の作業を手伝え、リベートをよこせと、買い手の要求はとどまるところを知らなくなる。
背景は違うものの…
卸やメーカーが重視するのは安定的な売上の拡大。だから、市場の伸びが頭を打っている昨今では、順調に売上を伸ばす業態は垂涎の的だ。とくに順調な出店で売上を伸ばし続けるドラッグチェーンは外せない。
近い、安い、新鮮というのは、消費者の店舗選択の優先順位。どんなに安くても、あるいは新鮮でも遠くの店まで毎回の買い物に出かける人は稀だ。ドラッグチェーンの特長は、食費者の居住地から距離的に近いこと。結果として、行先の決定は近くて便利ということになる。
大手コンビニチェーンのキャッチフレーズに似ているが、ドラッグストアとコンビニとの違いは品ぞろえと売り場面積だ。コンビニは店舗面積の制限により、商品アイテムも在庫数も限定され、FC両者(本部と店)の利益を確保するために売値も高い。早くいえば、近いけれど商品価格が高く、選べる品数も少ない。消費者の基本条件を満たすのは、近いことだけだ。
一方、ドラッグストアは生鮮がないことを除くとスーパーに近い。生鮮がないから店舗の運営コストは小さく、ロスも出ない。だから、スーパーよりも食品を安く売ることができる。
(つづく)
【神戸 彲】
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