2024年04月20日( 土 )

こども病院跡に医療・教育施設?変貌する「福岡・唐人町」(後)

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近隣の大規模施設と、いかに差別化図れるか

 一方で、冒頭に触れた福岡市立こども病院をめぐっては、11年5月に高島宗一郎・福岡市長がアイランドシティへの移転の決定を発表。当初、高島市長はこども病院跡地に小児専門病院を設置する旨も発表し、市西部の小児科高度医療の空白化を危惧してこども病院の現地建替えを望む市民らに理解を求めて、了承を得たかたちだった。だが、13年6月に中央区長浜へ新築移転した「国家公務員共済組合連合会 浜の町病院」で小児科が増強されると、こども病院跡地に新たな小児専門病院はもはや必要ないと判断。当初予定していた跡地での小児専門病院の設置を白紙にした。その後、14年11月の移転をもって唐人町のこども病院は閉院。その後、既存建物施設等が取り壊されて更地となり、MARK IS 福岡ももちの開業に合わせて臨時駐車場として暫定利用されたこともあったが、現在は福岡市発注の公共工事等の車両・資機材置き場などとして、一時的に利用されている。

 今回明らかになった、医療福祉や教育などの機能を有する施設を設置するという跡地利用の方向性は、かつて存在したこども病院の“レガシー”を受け継ぐ意味では妥当だといえるかもしれない。ただし、同地が地下鉄・唐人町駅から福岡PayPayドームやMARK IS 福岡ももちへと徒歩で向かう際の中間地点であり、約1.7haというそれなりの面積をもつことを考えると、単なる医療福祉や教育施設というだけでは、あまりにも芸がない気もする。せっかく、目の前を徒歩で多くの人々が移動していくことは確約されているのだから、その人流を滞留させて賑わいを誘引するような、何らかの機能もほしいところだ。

 たとえば、うきは市の「エバーガーデンうきは」と「うきは幸輪保育園」のような幼老連携型施設をベースとした案はどうだろうか。同施設では、園庭を挟んで介護付き有料老人ホームと保育園とが向かい合い、入居する高齢者や保育園の園児が日常的に触れ合うことができるのが特徴となっている。子どもたちが園庭で遊んでいると、その声に誘われるように高齢者も外に出てきて一緒に遊ぶ光景が見られるほか、毎日の昼食前には園児が老人ホームを訪問して一緒に手遊びや歌などを楽しむ時間が設けられるなど、両者の自然なかたちでの活発な異世代交流を促している。

 こども病院跡地ではそうした幼老連携型施設をさらに発展させ、たとえば、保育児童学科や介護福祉学科などを有する大学や専門学校のサテライトキャンパスも盛り込み、幼老だけでなく、若者も集める場所にしてみてはどうだろうか。さらに、海や川を臨む施設の外構部分には、「アクロス福岡」や熊本市の「SAKURA MACHI Kumamoto」のように階段状の積層型立体都市公園を設けて、移動する歩行者のための休憩場所としての機能も付与し、人流を滞留させて賑わいを誘引していく――。すぐ近くのMARK IS 福岡ももちとの差別化も図っていけそうだ。

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開発が進む「グランドメゾン大濠公園THE TOWER」
開発が進む「グランドメゾン大濠公園THE TOWER」

    福岡市地下鉄・唐人町駅から天神駅まで約4分、博多駅まで約11分と都心部へのアクセスの良さに恵まれ、すぐ近くには大濠公園や西公園といった大型の公園もあり、エリア周辺に多くの学校が集積する文教地区でもあることから、居住する場所としては相応に高い人気を誇る唐人町。現在も地下鉄駅周辺を中心に、タマホーム(株)による「グランアーキ大濠一丁目 ザ・レジデンス」(14戸、20年12月竣工)や、(株)福岡地行を中心としたアクロス大濠特定目的会社による「アクロス大濠公園プレミアフォート」(31戸、22年11月竣工予定)、積水ハウス(株)による「グランドメゾン大濠公園THE TOWER」(99戸、23年6月竣工予定)など、新築マンションの開発が相次いでいる。今後、こども病院跡地の再開発進行とともに、この唐人町の人気がさらに加速していくのか、あるいは何も変わらないのか――。唐人町の未来図に期待しつつも、その動向を注視していきたい。

(了)

【坂田 憲治】

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