2024年04月19日( 金 )

こども病院跡に医療・教育施設?変貌する「福岡・唐人町」(後)

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臨海部を埋め立てる一方で、商店街は再開発ビルへ

地下が暗渠となっている黒門川通り
地下が暗渠となっている黒門川通り

 唐人町一帯に大きな転機が訪れたのは80年代に入ってからだ。まず81年7月には、福岡市地下鉄1号線(天神~室見)の開業とともに、唐人町駅が開業した。

 そして、福岡市の市制施行100周年の記念イベントとして89年に開催された「アジア太平洋博覧会」(通称:よかトピア)のために、82年から臨海部エリアでの埋め立てが開始。よかトピアのモニュメントであった福岡タワーを始め、各種パビリオンが建設されるとともに、周辺道路などのインフラ整備も併せて進められ、現在の「シーサイドももち」の原型が誕生していった。その後、盛況のうちに閉幕したよかトピアの跡地は、百道浜エリアと地行浜エリアとに分かれ、住宅地や商業地、公園などへと整備が進められていった。なお、このときに黒門川が暗渠化され、現在は黒門川通りという幹線道路になっている。

 その後、ダイエー創業者・中内㓛氏が行った大阪本拠地の「南海ホークス」買収によるプロ野球団「福岡ダイエーホークス」の誕生により、臨海部はさらなる変貌を遂げていく。ダイエーはホークスの福岡移転と同時に、よかトピア跡地の一角である地行浜の埋立地で、大規模な商業施設の開発を行う計画を発表。新たな本拠地として使用する「スポーツドーム」と、屋内遊園地などを有する「アミューズメントドーム」の2つのドームのほか、リゾートホテルを建設するという一大プロジェクトだった。整備が着々と進められ、93年3月に開閉式屋根をもつ多目的ドーム球場「福岡ドーム」が開業。95年には隣接する「シーホークホテル&リゾート」も開業し、一連の商業施設群「ホークスタウン」が誕生した。だが、バブル崩壊により、母体であるダイエーグループも経営上の深刻なダメージを受け、予定されていたもう1つのドーム「アミューズメントドーム」の計画は事実上の中止に。その代替策として、2000年4月にショッピングモール「ホークスタウンモール」がオープンした。

 そのように臨海部で劇的な開発が進められる一方で、古くから栄えていた唐人町商店街では、建物の老朽化および密集化が進行。また、天神地区や西新などの近隣エリアへの商業集積により、相対的に唐人町商店街が沈滞化していった。その商店街の活性化や近隣の居住環境の改善を図ろうと、福岡市は唐人町商店街周辺において、「優良建築物等整備事業」を実施した。優良建築物等整備事業とは、良好な市街地形成や優良の住宅の供給を促進するために、一定の条件を満たす民間等の任意の再開発事業に対して国と地方公共団体が支援する制度のこと。事業の特徴として、「法定手続き(都市計画決定、高度利用地区等)に縛られず手軽に活用できる」「施行区域の対象地域が広い」「規模が小さい地区でも対応が可能」などが挙げられ、市街地再開発事業に比べて即効性は高い一方で、補助内容・税法上の優遇措置は少ない。福岡市内ではこれまでに6地区で同事業が実施されているが、うち3地区が唐人町商店街界隈だ。

左:唐人町商店街 / 右:唐人町プラザ・甘棠館
左:唐人町商店街 / 右:唐人町プラザ・甘棠館

 まず、97~99年にかけて「唐人町一丁目西地区」(敷地面積1,800m2、SRC地上14階建、総事業費約22億円)で事業が施行。続いて98~2000年にかけて「唐人町一丁目西第2地区」(敷地面積1,200m2、RC地下1階・地上9階建、総事業費約14億円)が、02~06年にかけて「唐人町商店街東地区」(敷地面積2,710m2、RC地上15階建、総事業費約32億円)と、エリア全体では3期に分けて優良建築物等整備事業が行われた。いずれも1階などの低層部が店舗に、2階以上の上層部が住居という複合ビルとなっており、快適な住空間と商業機能の融合が図られている。なお、そのうちの唐人町一丁目西地区の事業施行によって誕生した「唐人町西地区再開発ビル」では、2階部分に「唐人町プラザ・甘棠館」を設置。かつて失われた西学問所「甘棠館」の名前を継承した同施設では、商店街の集客力の向上と来街者の滞留時間の延長を目的に劇場やカルチャーホールなどが備わっており、1階広場部分と合わせて地域コミュニティの核としての役割を担っている。

 こうしてアーケード商店街の北側に3棟の再開発ビルが整備されたことで、現在の唐人町商店街の基盤ができあがり、以降は「ドームに一番近い商店街」として、地元民や来街者で賑わうようになった。

【坂田 憲治】

(前)

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