2024年04月19日( 金 )

第二青函トンネルの是非と物流の在り方(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

運輸評論家 堀内 重人 氏

北海道新幹線 イメージ    第二青函トンネルが完成しても、貨物列車の所要時間は現行と大して変わらず、トンネル内に25‰(パーミル)の急勾配ができるため、1,000t牽引の貨物列車の運行が可能かどうか疑問である。また単線であるため、ダイヤ上、大きな制約が生じる。

 第二青函トンネルの完成で、大きな効果が得られるのは新幹線である。現在の青函トンネルが新幹線専用になるため、160km/hに抑えられている最高速度の向上が実現する。

 JAPICの資料によれば、青函トンネルを含む盛岡~札幌間の最高速度が320km/hになることで、東京~札幌間が4時間33分となり、全線の最高速度が350km/hになれば、約4時間になるという。

 現在の青函トンネルには12‰の勾配があるため、トンネル内で350km/hの運転は難しいが、仮に260km/h運転が実現した場合でも20程度の時間短縮の効果がある。

 自動車の所要時間としては函館~青森間が2時間30分となり、現状のフェリー航送を含めた5時間に比べて半減することになる。

▼おすすめ記事
地方路線バスの危機脱出に向けて~長電バスの事例(前)

 第二青函トンネル構想の総事業費は、トンネル部分が7,200億円と試算されている。東北自動車道へのアクセスとして、60kmの道路の整備費2,500億円と、貨物を輸送する鉄道の三厩、木古内アクセス路線の整備費として1,500億円を別途見込む。それらも合わせると1兆1,200億円となる。通行料金は現時点で大型車が1万8,000円、普通車が9,000円と仮定している。これは建設費以外に、津軽海峡を運航するフェリーへの配慮もある。

 事業方式は、PFI事業・BTO方式のサービス購入型を検討しているという。サービス購入型とは、民間の管理運営者に対して公共団体がサービス購入料を支払い、施設整備費と維持管理運営費を回収する方式である。

 具体的には、国や独立行政法人などが第二青函トンネルを保有し、特別目的会社(SPC)が運営する手法を検討している。こうした手法で、32年で投資を回収できると考えているが、筆者は甘い見通しだと言わざるを得ない。

 BTO方式では、莫大な費用を要するインフラは、民間事業者が建設しなければならない。はたして民間事業者では資金を調達して建設することが可能かという問題がある。そして事業期間は、調査設計から数えて完成まで約15年を見込んでいる。

 第二青函トンネル構想は、民間ベースの議論の域を出ておらず、国交省が関わった本格的な検討には入っていない。また民間事業者と言っても、JRも加わっていない。第二青函トンネルが整備されるか否かは、まずは「トンネルを掘る」という方向性を政府が決める必要がある。

 「まったく実現性がない夢物語」ではなく、「津軽海峡に道路トンネルが必要」という認識は広まりつつある。やはり物流に関してトラック輸送を行うとなれば、必ずどこかでフェリーに積み替えなければならず、それによるコスト増や輸送時間の増加が問題視される。

 筆者も、完成すれば日本の国土軸を構成するインフラになることから、1兆円を超えるビッグプロジェクトになるが、決して無駄にはならないと考える。ただ、第二青函トンネル構想については、肝心のJRが加わっていないこともあり、数点の疑問があることもたしかである。

 まず、第二青函トンネルが鉄道貨物と道路の併用で計画されたことである。距離が31kmと短くなるとはいえ、長大な海底トンネルである。自動車を走行させるとなれば、火災防止とトンネルの換気の問題がある。長大トンネルになるため、居眠り事故を防止する観点から、「自動運転の自動車のみ通行可能」としているが、「トンネル内の換気」という問題もあるため、電気自動車や燃料電池車でなければならない。

(つづく)

(前)
(後)

関連キーワード

関連記事