2024年04月25日( 木 )

第二青函トンネルの是非と物流の在り方(後)

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運輸評論家 堀内 重人 氏

 いまだ民間レベルの構想段階であるから、正式に着工が決まったとしても、完成するのは50年ごろになるだろう。そのときには、自動運転が実用化されているだけでなく、自動車やトラックが電気や燃料電池に置き換わっていなければ、この計画は無意味になる可能性が高い。

 また、第二青函トンネル内が全線単線であるうえ、25‰の急勾配が続くことも問題視している。在来線の線路があるということは、団体列車などが乗り入れることも考えられるうえ、北海道~本州間は貨物輸送に関しては「幹線」である。

 ダイヤ設定の制約が生じる以外に、1,000t程度の貨物を牽引する列車が多数運転されていることから、貨物列車にとって勾配は輸送力増強の大きなネックであり、距離が少々長くなっても勾配を緩和しようとする。

 そのため、25‰の急勾配を貨物列車が走行できるのかという問題が生じる。またJAPICの計画では、第二青函トンネル内は直流1,500Vで電化するという。津軽線や道南いさりび鉄道が交流20KV・50Hzで電化されており、第二青函トンネル内だけが直流1,500Vの電化では非常に効率が悪い。

北海道新幹線 イメージ    筆者は、第二青函トンネルを建設する場合、海底部分の上は自動運転対応車が通行する片側1車線の道路でよいが、下は複線の貨物鉄道と緊急車両が通ることを前提にした避難路とすることを提案したい。

 単線の鉄道ではダイヤ設定のネックになるだけでなく、「保線」の問題も生じる。複線で線路を敷設しておけば、時間帯によって片側の線路を止めて保線を実施できる利点もある。

 貨物輸送を前提とするならば、25‰の急勾配は絶対に回避しなければならない。三厩から12‰の勾配で下り、第二青函トンネルの本州側の海底部へ向かう。ここから北海道側の海底部までは平坦線として、道路と鉄道の二重構造のトンネルとしたい。北海道側の海底に達すると、12‰の勾配で木古内に向けて登ることになる。

 一方の道路トンネルの場合、ゴムタイヤでアスファルトの路面を走行するため、60~70‰の急勾配でもトラックは登坂することが可能であり、トンネルが短くなる分、建設費が安くなる。

 鉄道もトラックも同じ勾配で考えている点に問題があり、出入り口では道路と鉄道のトンネルは分離して建設し、海底部で合流させる必要がある。

 鉄道を複線で建設するとなれば、もう一回り大きなシールドマシーンが必要となるが、トンネル断面が大きくなることで、鉄道用のトンネルも交流20KV・50Hzで電化することが可能となる。

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 第二青函トンネルは建設に関して技術面ではクリアしており、完成することで新幹線と貨物列車の運行が分離されるだけでなく、トラック輸送も可能となれば人流・物流の両面で大きな社会的な効果が得られる。

 だが課題として、自動運転技術の進歩とそれに対する法整備、電気自動車や燃料電池車の技術面の進歩と普及が挙げられる。

 自動運転の自動車については、高速道路などでは実用化が近いと言われており、第二青函トンネル内は交差点などがないため、無人運転は無理としても、監視員として運転手を乗務させるかたちで実施することは可能となるだろう。この場合、機器のトラブルによる追突事故の発生も考えられるため、法整備は不可欠といえる。

 一方、電気自動車などの価格が高止まりとなって思うように普及しなければ、自動車の通行台数が見込みを下回ってしまい、建設費用の回収に支障を来すことになるだろう。そのリスクもあるため、自動運転に非対応のトラックや自家用車だけでなく、ガソリンやディーゼルエンジンのトラックや自家用車に対応するため、青森~函館間を結ぶフェリーを存続させることも視野に入れざるを得ないかもしれない。

 このため、第二青函トンネル(アクセス道路や鉄道も含む)は鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設を行い、完成後、道路は東日本高速道路、鉄道はJR貨物へリースする方法が望ましいと考える。

(了)

(中)

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