2024年04月23日( 火 )

都市福岡の国際化へ、2022年は攻守強化「元年」(中)

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 古くから「商都・博多」として繁栄し、1980年代半ばからは「アジアの玄関口」の位置づけで栄えてきた福岡。今後は国際都市への飛躍が期待される。そのカギを握るのが、世界に通用する金融集団やIRの誘致、それを視野に入れたリゾート開発など。2022年は国際都市化へ向けて、時代の流れをつかめるかどうかが試される1年になりそうだ。

時代の流れをつかめるか

 話を現在に戻すと、博多がさらなる発展を遂げるためには、時代の流れをつかむことが重要となる。

 東南アジア最強の財閥は華僑である。ところが、この5年間で習近平中国共産党政権は海外への資金流出を阻止するようになった。その流れに中国のリッチ層は危機感を抱き、小口の資金流出を積み上げて大口にするという、巧妙な手法による海外移転を画策してきた。当然、中国当局も次第に防御策を強化していった。資金流出をコンサルティングしてきたある日本人は白旗を挙げる。「中国側の網の目から飛び出させる策は、すべて封鎖されることになった」と話す。

 そして、華僑財閥も真剣に集団脱走を講じるようになった。香港の都市名を「南深圳」に改名するという噂もある。中国政府が本気で直轄にするという意思表明である。また、マカオのカジノ業者に対し、中国政府は「共産党幹部を経営部門に参画させろ」と恫喝している。22年はカジノ業者の権利登録の更新時期にあたる。いうまでもないが、経営参画の申し出を拒絶すれば、権利登録の剥奪が待ち受ける。厳しい現状を目の当たりにして、華僑財閥は覚悟を固めるようになった。

 友人・知人から日本の情報が伝えられる。「日本は自由で暮らしやすい。商売も組みやすい。福岡は潜在的な成長力がある」という情報である。華僑のトップクラスは「残された時間はない」という認識を共有している。筆者も中国の友人から、「金融グループの華僑集団が日本移転を必死で検討している」との話を聞いた。どういう経緯かは定かでないが、福岡に対する親睦感は強いという。

 ここで力説しておきたい。華僑と中国共産党政権が一体という誤った認識は捨てたほうが良い。利害が一致しているときは同一行動を取ることもある。だが、今や中国共産党政権は「あまりにも莫大な資金をもった華僑財閥は目障りになった。貯めた莫大な資金を略奪しよう」と決断。これに対し、華僑集団は「本当に死活問題となった。国を捨てて流民覚悟で新天地を求めよう」と覚悟を決めた。現在、福岡市が誘致を要請している香港金融グループも、前述した集団の1つである。

壱岐のリゾート計画

 先ほど述べた金融グループはリゾートの拠点を求めている。その一例として、壱岐の島にリゾート計画を立てていることを知った。取材で現地へ飛んだ。壱岐市長から「プライベートビーチ用として所有不動産を売らないか?」と勧められた地主を取材した。東と西に長い岬があるプライベートビーチの地形は波から守られている好条件。取材が進むにつれて、地主は予想外のことを話し始めた。

 「不動産を売ることはしないよ。タイアップして共同事業として貸与することは検討する。ただ壱岐の島単独では大したことはできない。福岡の開発状況と照らし合わせながら連係プレーを行う」。続けて、「福岡『海の中道』へのテーマパーク誘致の結果と、『恋の浦』開発の顛末に注目している。この2つのゾーンへは壱岐の島から船を利用すれば1時間20分で到着できる。そうなると、玄海灘一帯がマリンレジャーのメッカになる可能性がある。構想するだけで楽しい」という。

どのようなプロジェクトが進行中か?

恋の浦海岸 イメージ    国際都市・福岡の実体化をどう押し進めるのか。最も重要なのは、世界に通用する金融グループの誘致である。この点について福岡市も理解していて、水面下で仕込んでいる。さまざまな国際的なプロジェクトが絡んで一体化できたときに、国際都市・福岡へと発展できる。そのためには、巧妙な「国際化攻守強化」策が求められる。

 津屋崎町(現・福津市)にある「恋の浦」といえば、「あの城山観光が倒産した原因となった呪われたゾーンだ」と誰もが反応する。城山観光の倒産後、所有権は二転三転したが、近々持ち主が定まるとみられている。約120万m2の広大な土地だが、モータースポーツ場が細々と運営されているだけだ。国定公園に指定されているために複雑な規制があり、数多くの事業計画が日の目を見ずに潰れていった。

 最近、飛び込んできた情報に「モナコ型世界グランプリが開催できるサーキットの建設」がある。モナコ方式とは「この地で生活し、年1回の世界グランプリを楽しむ」というもの。このスタイルを「恋の浦」に再現するというプロジェクトだ。総工費は1,000億円という。順次、工事を行っているといわれているが、非常に注目される事業である。ある関係者は「日本各地から東アジア、東南アジア全域まで最適な場所を求めましたが、結局、『恋の浦』がベストであると結論付けました。最後の決め手は後ろに『国際都市・福岡が控えている』ことです」と打ち明ける。

(つづく)

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