2024年05月05日( 日 )

【東京-ロンドン グリーンファイナンスセミナー2021】COP26での決定をどう実現するか、金融市場の変革でESG投資本格化へ

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

英国金融行為規制気候ESG部門長
サシャ・サダン 氏

 ESG投資を受ける側の投資対象企業が、どのような情報開示を行う必要があるのか、どこまでを開示する必要があるのか、といった「適切な開示の促進」が求められている。環境に配慮した活動を行うことができているか、それがどのようなシステムによって成り立っているかを説明できない会社が、今後は許されなくなってくる。環境配慮を騙った「グリーンウォッシング」の出現阻止のために、規制当局での連携や会議を詰めていく方針だ。

FTSE Russell
CEO アーン・スタール 氏

(株)日本取引所グループ(JPX)    21年10月に当社が発表した「2021サステナブル投資サーベイ」では、アジア太平洋地域においては資産オーナーの3分の2が気候変動問題を懸念しているという結果が出ており、今後の投資の市場において、気候変動に配慮した商品に注目が集まると考えられる。

 ネットゼロ()への機運が世界的に広まっているものの、いまだ目標数値である1.5℃を下回れずにいる。そんななか日本は、2030年までに温室効果ガスを46%削減するという目標を掲げるなど、積極的な姿勢を見せていると感じる。

 気候変動をはじめとした地球環境がうまく改善されないとき、トランジション(転換)が求められることになる。そのときには証取グループとして、資金調達やツール・データの提供、グリーンな意思決定のための支援などを行うのが当社の役割だ。

 現在、当社では(株)日本取引所グループ(JPX)との共同で、気候関連指数「FTSE/JPXネットゼロ インデックス シリーズ」を開発しており、気候変動に対して具体的な活動を実行することができているということを非常に嬉しく思う。気候への投資は、今後の主流となっていくだろう。

※Net-zero(ネットゼロ):温室効果ガスあるいは二酸化炭素の排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにすること ^

ブルーベイ・アセット・マネジメント
CEO   エリック・ガース 氏

 現在、フィクスト・インカム(債権投資とほぼ同義)の市場は128兆ドルの市場となっており、ESG投資において効果的なアプローチを図る場合に、債権の必要性は無視できない。これまでESG投資といえば、「悪いものを排除した商品への投資」という部分だけに注目がされてきたものの、債権保有者は株主ではないため、経営に対して直接意見することはできないが、投資の仕方によってサポートの姿勢もその逆も見せることができる。

(株)東京証券取引所
取締役専務執行役員 小沼 泰之 氏

 現在、上場している3,800社への情報発信に力を入れている。グリーンファイナンスやそれにともなって会社に求められる情報開示の要項が浸透しておらず、情報共有の場が求められている。情報開示実務のハンドブック作成やグリーン市場に関するコミュニティ創生のほか、プライムに属する企業(22年4月の東証市場区分再編成のうち、グローバル企業向けとなる市場)へのTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)をベースにした情報開示を、他の市場に先駆けて実行していく予定だ。

ニッセイアセットマネジメント(株)
代表取締役社長 大関 洋 氏

 08年から他社に先駆けてESG投資に取り組んでおり、「S(Social)・G(Governance)評価」は早い段階からリターンの高さに比例する構図になっていた一方で、「E(Environment)評価」が実際の良し悪しとリンクし始めたのはつい最近のことであり、ESG投資の概念が浸透しつつあると感じる。また、これまでの投資の観点であるリスク、リターンに加え、今後は気候変動や持続可能性へのインパクトをどの程度考慮できているかなど、投資を行う側の変容も求められつつある。

 日本生命グループでは14年からグリーンボンドへの投資を本格化させており、また資産運用会社として主要イニシアチブへ参加するなど、ネットゼロへの貢献は今後も狙っていきたい。

 今回のセミナーには、日英合わせて10名の有識者が登壇したが、全員に共通した認識が「ESG投資やグリーンファイナンスが主流化していくこと」だった。これまで、ESG投資はいわゆるニッチな分野であり、努力の範囲に過ぎなかった。しかし、気候や地殻変動に起因する災害の頻発や20年からのコロナ禍により、「環境に配慮した商品であること」の価値は急激に高まっている。

 COP26で、今後の気候変動への取り組みや到達すべき目標が明文化された。今後は、すべてのビジネスにおける行動力の源泉となる金融市場が本格的に動き出すことで、この10年の企業活動の在り方も変化していくことは間違いないだろう。

【杉町 彩紗】

  • 1
  • 2

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事