2024年04月19日( 金 )

原発・憲法・TPP運動体の連携を

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 NETIBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、原発再稼動や日本国憲法(集団的自衛権)、そしてTPPなどの問題について、安倍政権に立ち向かっている多数の市民の連携を図るための運動について触れた、5月8日付の記事を紹介する。


 「平和と共生の連帯運動」の目的は主権者の連帯の実現である。主権者の多数が安倍政権の政策運営に賛同していない。

 日本各地の火山活動の活発化が伝えられている。このことは、とりもなおさず、日本の原発の危険性の高まりを意味する。東京電力福島第一原発の過酷事故が発生した原因に地震と津波があったことは間違いない。事故発生の詳細な原因はまだ解明されていないが、地震と津波が原発の電源喪失の原因になったことは疑いようがない。
 原発が内包する過酷事故発生のリスクのなかで、最大のものが地震と津波である。昨年は御嶽山で大規模な水蒸気噴火があり、多数の尊い命が失われた。宮城県と山形県にまたがる蔵王でも火山活動が活発化している。九州でも熊本県の阿蘇山や鹿児島県の桜島の火山活動が活発化している。首都圏でも箱根山の火山活動が活発化し、水蒸気爆発の可能性さえ指摘されている。地震学の権威である神戸大学名誉教授の石橋克彦氏が指摘するように、日本はいま、地震と火山活動の活動期に突入しているのである。
 安倍政権が再稼働のトップバッターに据えている鹿児島県の九州電力川内原発は五つの活動中のカルデラに隣接しており、これらの火山活動が活発化する場合、火砕流が原発にまで到達する恐れさえ指摘されている。

 このなかで原発を再稼働させるというのは「狂気の沙汰」である。福井地方裁判所の樋口英明裁判長は、大飯原発の運転差止訴訟で運転中止命令を発した。また、高浜原発の運転中止を求める仮処分申請では、運転中止を命ずる決定を示した。樋口裁判長は、現在の状況で原発の安全性は確保されていないことを厳しく指摘した。
 安倍政権は原子力規制委員会に規制基準を作らせ、この規制基準をクリアした原発を再稼働させる方針を示しているが、樋口裁判長は原子力規制委員会が設定した規制基準が原発の安全性を担保するものではないことを指摘した。そして、この基準で原発を再稼働させることは、日本国憲法が保障する人格権、生存権に反すると指摘したのである。

 日本国憲法第13条は、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利について、国が最大の尊重をすることを義務付けている。安全性が確保されていない原発を稼働させることは、生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利を侵害するものである。
 したがって、日本国憲法の規定により、国は原発の再稼働を認められないのである。これが日本の司法が示した判断である。

 安倍政権は集団的自衛権の行使を容認する方針を示している。しかし、これも憲法違反の暴挙なのである。
 日本国憲法第9条は、国際紛争を解決するための手段として、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使を永久に放棄することを定めている。「集団的自衛権の行使」は「国際紛争を解決するための手段として、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使を行うこと」であり、日本国憲法第9条が明確に禁止している行為である。したがって、憲法を改定しない限り、日本は集団的自衛権を行使できない。
 ところが、安倍首相はこれを強引に推進している。

 TPPは国民の利益を増大させることを目的とした仕組みではなく、大資本の利益を極大化させるための仕組みである。
 そして、TPPには致命的な欠陥、本質的な大問題がある。それは、TPPが国の主権を喪失させる側面を有していることである。具体的にはTPPに盛り込まれるISD条項が問題なのだ。TPPの問題は無尽蔵に広がるが、とりわけ重大であるのがISD条項が盛り込まれているという点である。

 「平和と共生のための連帯」運動は、原発、憲法(集団的自衛権)、TPPの問題を軸に、安倍政権に立ち向かっている多数の市民の連携を図るための運動である。多種多様な運動体、グループ、団体が、熱心に活動している。しかし、各グループが乱立して、ばらばらに活動していたのでは、安倍政権を打倒して、政治権力を掌握することが難しい。
 そこで、志を共有する市民、団体が連携する仕組みを構築することが求められているのである。そのための運動を展開することを目指しているのだ。

※続きは5月8日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1141号「多数乱立市民運動の大連立実現を目指す」で。


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