2022年06月27日( 月 )
by データ・マックス

保健機能食品制度の行方(2)機能性表示食品のSR、「PRISMA2020声明」への対応

 「機能性表示食品」「特定保健用食品(トクホ)」「栄養機能食品」で構成される保健機能食品制度の今後を占う。2回目は、機能性表示食品のシステマティック・レビュー(SR)で求められる「PRISMA2020声明」への対応、「UMIN臨床試験登録システム」への事前登録について検証する。

「PRISMA2020声明」への対応は緊急テーマ

研究論文 イメージ    食品の機能性を証明するために、世界中の研究論文を集めて総合的に評価するシステマティック・レビュー(SR)。連載1回目で、機能性表示食品の効果の証明方法はSRが9割を占め、制度を支えていると述べた。届出企業による適切なSRの実施は、消費者の信頼に応えることにつながる。

 そのため、消費者庁の届出ガイドラインは「PRISMA声明(2009年)」に準拠してSRを実施すると規定。「PRISMA声明」はSRを適切に実施するための指針で、09年に公表された。検索式、バイアスリスク、研究の選択など、SRの質の向上に必要な27項目の報告を求めている。

 過去10年ほどでSRの手法が進化したことを受けて、昨年、09年版の不十分な点を補完した「PRISMA 2020声明」が公表された。

 09年版との相違点は何か。まず、「データ項目」「結果の統合」などいくつかの項目を細分化した点がある。さらに、評価対象から外した研究論文の除外理由の明確化、感度分析の提示など、多くの点で厳格化している。

 SRの手順を示すフローチャートも変更。先行レビュー(以前に実施したSR)を加味した流れとなった。過去にSRを実施した場合、先行レビューの採用論文をベースに、新たに報告された研究論文を含めてレビューすることを明確化している。

 機能性表示食品制度のテコ入れで、消費者庁が急がなければならないのは「PRISMA 2020声明」への対応だ。消費者庁食品表示企画課保健表示室では、届出様式の変更がともなうものならばシステム改修が必要で、すぐに対応することはできないが、システム改修におよばないマイナーチェンジならば対応自体は可能と説明する。

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 厳格な内容となった「PRISMA 2020声明」への対応は、制度のレベルアップにつながる。消費者庁には早急に届出ガイドラインを改正し、業界に周知することが求められそうだ。

SRの事前登録をめぐる是非

 機能性表示食品のSRの課題に、「UMIN臨床試験登録システム」(以下、UMIN)への登録も挙げられる。届出ガイドラインは、ヒト試験(人に食品を摂取させる試験)については登録を必須としているが、SRの登録は義務づけていない。

 UMINは、全国の国立大学病院のネットワーク組織が構築。ヒト試験の実施前にUMINに試験デザインなどを登録し、誰でも閲覧できるようにしている。試験結果が期待していたものと違った場合に公表されないこと(「出版バイアス」と呼ぶ)を防ぐのが目的だ。

 とくに健康食品業界では、効果が出なかった試験を“お蔵入り”とする傾向にあった。その結果、効果が認められた研究論文ばかりが目に付く状況が続いていた。

 本来、UMINはヒト試験を登録するためのものだが、SRの登録も可能。機能性表示食品のSRについても出版バイアスを防ぐため、事前登録を義務化すべきと考えられる。しかし、そう単純に言い切れない事情が横たわっている。

 SRは、複数のヒト試験の結果を収集して総合的に評価する。ところが、SRのベースとなるヒト試験のUMIN登録をめぐり、深刻な問題が指摘されているのだ。

直近では、UMINに登録した試験デザインと、論文に掲載した試験デザインが食い違うという事例も。UMINに登録したものの、都合の良い結果を導くために、論文にする段階で当初の試験デザインに手を加えた(インチキした)わけである。

 また、ある識者は「SRの対象としたアウトカム(研究結果)が主要アウトカムではなく、セカンダリーアウトカム(副次的な結果で、機能性の根拠に用いることができない)であるなど、いいとこ取りをしたSRの報告が目立つ」と指摘する。

 不適切なヒト試験やSRが横行している状況下で、SRのUMIN登録を義務化したとしても、問題を複雑にするだけという懸念がある。まずは、ヒト試験やSRの適正化を進めることが優先課題に挙がっている。

 機能性表示食品のSRのUMIN登録は、制度の信頼性を高めるうえで避けて通れない。だが、現時点では時期尚早といえそうだ。

(つづく)

【木村 祐作】

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