2022年05月28日( 土 )
by データ・マックス

コロナ禍でサプライチェーンが寸断されるリスクの増大:食料備蓄が必要

 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は1月21日付の記事を紹介する。

 中国では昨年、商務部が国民に向けて「食料と日用品の備蓄」を呼び掛けたことで、一部地域ではパニック状態が発生しています。というのは昨年9月にも「エネルギー備蓄」に関する指示が国営の電力会社に出されており、昨年末に出された一般市民向けの「食料備蓄」の指示と相まって、「何か重大事態が迫っているのでは」という不安感が高まっているからです。

 2022年秋には5年に一度の共産党の党大会が北京で開催されます。習近平国家主席の任期延長が決まると目されているため、緊迫した雰囲気が随所で感じられているようです。しかも、2月4日に開幕する北京冬季オリンピック・パラリンピックまで2週間ほど。北京のすぐ隣に位置する天津市をはじめ、中国各地で新型コロナウイルスの急拡大が起こっており、緊迫感に輪をかけている感じがします。

 北京でも感染拡大防止のための学校閉鎖やロックダウンが実施されています。また、全国123の主要駅では北京行きの列車のチケットは販売停止になったままです。北京への感染者の流入を食い止めるための措置に他なりませんが、春節の時期と重なり、移動制限がかけられたことで国民の不安や危機感は半端ないようです。

 北京では主な博物館、映画館、図書館、公園までもが閉鎖となりました。加えて異常な寒波の襲来もあり、食糧生産が滞ったり、石炭価格の高騰が日常生活にも暗雲を投げかけています。地域によってはスーパーマーケットでの食料品が品薄となり、買い物客による奪い合いも起きている様子です。社会不安の原因になりかねません。

 さらには、「米中新冷戦」と揶揄されるように、台湾をめぐる緊張状態も影響し、中国人の間では「万が一に備えておかねば」という気持ちが広がり始めているわけです。実は、その影響はアメリカにおよんでいます。ガソリンやディーゼル燃料の価格が高騰中で、場所によっては20倍もの値上がりです。石炭に至っては2023年の供給分まですべて予約済みになっています。

トイレットペーパー 売り切れ ィメージ    アメリカではトイレットペーパーがスーパーから消えてしまうという、「どこかで見たような光景」も見られるようになりました。というのも、中国政府が強力に推し進める「コロナ・ゼロ」政策の影響で、中国製の日用品の海外輸出に歯止めがかかっているからです。アメリカ西海岸の港湾にはタンカーが数多く立ち往生しています。

 これは中国が進める「コロナ対策」に名を借りた「対米経済戦争」に他なりません。その影響はアメリカにとどまらず、ヨーロッパにもおよんでいます。表向きは「オミクロンの影響」もあり、港湾従事者が手当できないため、「物流に支障が出ている」とされていますが、欧米の金融機関の共通認識は「中国によるサプライチェーン寸断による経済的圧力の行使に他ならない」というものです。

 何しろ、中国は世界最大の製造工場と言っても過言ではありません。アメリカは過去30年に渡り、中国へのアウトソーシングを続けてきました。消費物資はもちろん医療関係のマスクや人工呼吸器なども、大半を中国からの輸入に依存するようになっています。半導体の供給不足で自動車や家電製品の製造にも支障が出ているほどです。要は、アメリカが中国への経済制裁をかけようとしても、その被害を受けるのはアメリカという「中国依存」状況に陥っているため、効果的な対中政策を打ち出しようがないのです。

 今週、スイスの世界経済フォーラム(通称「ダボス会議」)でオンラインですが基調講演を行った習近平国家主席は余裕しゃくしゃくの様子で、アメリカや世界に対して「コロナ禍を乗り越え、新たな経済成長に向かって共に前進しよう。中国は世界の課題に真正面から取り組む用意がある」とアピールしていました。

 この自信の源は14億人という世界最大の中国の市場の存在と共産党の一党独裁による政策決定の速さから生まれているようです。「メイド・イン・チャイナ」に世界が依存する環境を生み出したことは間違いありません。

 これは日本にとっても他人事ではありません。米中両国で加速する物価高騰と買い占めの動きは遅かれ早かれ日本にもおよぶことになるでしょう。「備えあれば患いなし」。パニックが起こる前に、必要な備蓄を心がけるべきと思われます。と同時に、必需品の国内生産基盤を確保することも欠かせません。日本はコロナ用のワクチン1つをとっても欧米の製薬メーカーに依存しています。

 追い打ちをかけるかのように、原油価格の高騰も避けられない雲行きです。すでに過去7年で最高値を更新しています。ゴールドマンサックスの予測では2023年にはバレル105ドルを突破する可能性が指摘されているほどです。ヨーロッパではウクライナをめぐりロシアとアメリカ、NATOとの戦争の恐れが加速していますが、アジアでは台湾をめぐる中国とアメリカの対立が懸念されています。

 そして産油国が密集する中東情勢も緊張が高まる一方です。今週もイランが支援するイエメンがドローンを使ってアラブ首長国連邦(UAE)への攻撃を加えました。アメリカの関心はウクライナと台湾に向いているため、中東には手が回りません。

 さらに不穏なのがロシアの動きです。ヨーロッパ向けの原油の供給を当初予定の半分に減らすと一方的に通告してきました。ウクライナ情勢をめぐっての交渉カードに違いありません。ウクライナのNATO加盟を阻止しようとする魂胆に他なりません。

 しかも、エネルギー最大手のエクソンモービルは2050年までにグリーンハウスガスの排出量をゼロにするとの野心的な環境対策を打ち出しました。これほど長期的な観点に立ち、二酸化炭素の排出抑制策を表明したのは前例がありません。その結果、間違いなく原油の生産量は大幅に削減されることになるでしょう。

OPECでは2022年夏までに原油の在庫が過去最低レベルに落ちると言われています。

 食料も原油などエネルギーもその大半を輸入に頼っている日本にとっては、2022年は生き残りを賭けて、どこまで自給自足体制を構築できるか、勝負がかかった年になります。

 先ずは、無駄を排し、リサイクルを通じて食生活を見直すことから始める必要があるでしょう。

 次号「第281回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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