2024年05月20日( 月 )

「千年産業を目指して」 有機農業を通じ持続性を向上

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金沢大地グループ

 「千年産業を目指して」を経営理念とする金沢大地グループ。オーガニックファームとしては国内最大規模であり、有機農業と耕作放棄地の再利用などにより、地域の持続可能性向上や生物文化多様性の保持などに貢献している。また、農業の6次産業化に早くから取り組み、加工品の製造・販売、飲食店での提供により地域産農産物・食品のブランド力を高めることにも尽力している。

千年産業を目指す 国内最大規模の有機農業者

金沢大地    石川県で環境保全型農業を営むオーガニックファーム、金沢大地グループ。「千年産業を目指して」を経営理念とし、有機農業を通じて、サステナビリティや生物文化多様性を大切にすることを掲げる。有機農業を営む事業者としては日本最大規模の1つであり、耕作放棄地を中心に金沢市郊外や奥能登に位置する広大な農地(約180ha)を耕し、米、小麦、大麦、大豆、蕎麦、ハトムギ、野菜、ブドウなどの有機栽培を行っている。

 最も多く栽培しているのは大豆で、作付面積は2013年時点で約140haあり、日本の有機大豆の約10%を供給している。大豆はかつて、「世界で最も予約が取れないレストラン」といわれたスペインの三ツ星レストラン「エル・ブジ」(11年に閉店)でも使われたほど高い評価を得ている。

 同グループが掲げるコンセプトは、「生産者が安全性と品質に責任をもち、生活者にお届けする。伝統的で風土に合った食文化を伝承する。食品、農業関連産業といった幅広いなかで農業を捉え、強固な経営体を確立する手段として、農産物の付加価値を高める」ことだ。

 これらを実現するために、以下の3点を大事にしている。

(1)双方向トレーサビリティ

 加工食品においても、農場および生産者までトレース(追跡)可能な「生産者の顔が見える」食品づくりに取り組んでいる。食品の生産地、生産者を知りたいという消費者の欲求に応えるとともに、つくり手と食べる人との関係をより深く身近なものにしたいと取り組んでいる。

(2)有機JASマーク

 「有機JAS認証」を積極的に取得・表示し、消費者の誤認のない表示を心がけている。

(3)健康に資すること

 オーガニック、ノンカフェイン、伝統食品、発酵食品、無添加、砂糖不使用など、食べる人の健康に資する商品開発に重点を置いている。

 この有機JAS認証取得により、米国で通用する「全米有機プログラム(NOP)」(米国農務省)、EU各国で通用する有機認証「Organic Farming」の基準も満たしており、海外への展開を可能としている。

人気商品の
「有機きな粉」(左)、「有機醤油こいくち」(中)、「有機六条大麦茶」(右)

「6次産業化」の取り組み

 農業の生産性向上のために提唱される方策の1つが、製造業(2次)およびサービス業(3次)への展開だ。同グループは農産物の生産に加えて、自社農場で有機栽培した米など地元産、国産の農産物を主原料とした、金沢らしいお菓子や伝統食品などの加工品の製造・販売に早くから取り組んできた。2007年にネット通販を開始、11年に金沢市中心部の近江町市場に直営店「たなつや」をオープンさせ(20年に閉店、21年にJR金沢駅構内の名店街にて新装開店)、販売している。

「たなつや」(金沢駅構内)
「たなつや」(金沢駅構内)

    グループ会社、(株)金沢ワイナリー(17年設立)では、金沢市中心部の金澤町家を改修し、18年に同市で初の都市型(アーバン)ワイナリーとなる「金沢ワイナリー」を設置した。ここでは石川県産ブドウを100%使用したワインを醸造しており、19年からワインの販売を開始した。また、地産地消フレンチレストラン「A la ferme de Shinjiro(ア・ラ・フェルム・ドゥ・シンジロウ)」をオープン、グループで生産した有機農産物・加工品などを提供している。

 こうした取り組みは、製品の付加価値を増して、生産性を向上させるのみならず、地域の自然の恵み、豊かな食文化など、地域資源の魅力を発信するうえでも重要な役割をはたしている。

有機農業普及に向けて

 SDGsが世界で重視されるなか、農林水産省は21年5月、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立および有機農業の普及を目指す農業戦略「みどりの食料システム戦略」を策定した。現状では1%にも満たない有機農業の農地を2050年には25%、100万haに拡大する目標なども盛り込まれている。農水省には目標実現のための方策の提示や農家への支援などが求められる。

代表取締役 井村 辰二郎氏 能登・山是清の自社グループ有機大豆農場にて
代表取締役 井村 辰二郎氏
能登・山是清の自社グループ有機大豆農場にて

 (株)金沢大地代表の井村辰二郎氏は、全国有機農業推進協議会副理事長、日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会(JONA)理事、さらに政府の関連審議会の委員などを務め、自社グループの枠を超えて有機農業および有機食品の推進のために活動している。

 直近では、同社は21年2月、国産の有機農産物を主原料とする新しい食品ブランド「Local Organic Japan」(ローカル・オーガニック・ジャパン)を立ち上げた。ブランドのコンセプトおよび役割は、「国産の有機農産物を主原料とする有機JAS食品ブランドを提供する」「日本における有機農業・地域農業の持続可能な振興を図る」「生活者に安心でおいしい国産オーガニック食品を提供する」というもの。第一段商品として、有機JAS認定の「国産オーガニック味噌」「国産オーガニック醤油」「国産オーガニック十割蕎麦」の販売を開始した。「有機農家を増やし、オーガニック市場を拡げ、消費者がオーガニック食品をもっと手軽に買えるように」との想いのもと、同グループの挑戦は続いていく。

【茅野 雅弘】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:井村 辰二郎
所在地:石川県金沢市八田町東9
設 立:2002年3月
資本金:2,400万円((株)金沢大地単体)
TEL:076-257-8818
URL:https://www.k-daichi.com/

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