2024年05月03日( 金 )

【大学サバイバル】福原学園・九州共立大学 理事による私物化? 学園に新たな火種

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 本格的な少子化の到来と、それにともなう大学全入時代(大学入学希望者総数が入学定員を下回る状況)を迎え、各地の私立大学はいよいよ生き残りの方策を模索し始めている。九州共立大学は九州国際大学と並ぶ北九州の私立2強大学。スポーツ学部の実績で注目を集めるが、積極的設備投資には不安の声もあがっている。

北九州を代表する総合学園

九州共立大の専用グラウンド(同大HPより)
九州共立大の専用グラウンド(同大HPより)

 全国高等学校駅伝競走大会。毎年12月に京都の都大路(みやこおおじ)を舞台に開かれる高校陸上・長距離界の晴れ舞台に、福岡県男子代表として出場したのは、学校法人福原学園が運営する「自由ケ丘高校」(北九州市八幡西区)だった。同大会への出場は2年ぶり2回目。福岡県内の駅伝競技では、全国優勝5回を誇る私立大牟田高校(大牟田市)や同じく3回優勝の福岡大学附属大濠高校(福岡市中央区)など県中・県南の学校が覇を競ってきたが、近年は自由ケ丘高校を筆頭に北九州地区の高校が実績を出すようになっている(女子代表は北九州市立高校)。

 自由ケ丘高校を運営する福原学園は、九州共立大学を頂点に九州女子大学、九州女子短期大学の大学3校、さらに自由ケ丘高校と幼稚園3園を運営する、北九州地区を代表する学校グループだ。学園の創立は1947年。小倉師範学校の教師を務めていた創立者の福原軍造氏が財団法人として設立し、同年に福原高等学院を開校した。50年に校名を福原高等学校に変更して51年に学校法人化、その後、法人の悲願だった大学運営にも乗り出し、60年に九州女子短期大学、62年に九州女子大学と附属幼稚園を開設。同学園の旗艦校となる九州共立大学(八幡西区自由ヶ丘)は65年に開校され、以降、学部や学科の統廃合を繰り返して今日に至っている。

 九州共立大学(以下、九共大)の名前を一躍全国に知らしめたのは、同大硬式野球部の活躍だった。沖縄県出身で中京大学を経て同大コーチに就任した仲里清氏(1979~2014年まで監督)が指揮を執るようになると、福岡六大学リーグ優勝36回、全日本大学選手権16回、明治神宮大会6回出場など輝かしい実績を上げ続け、99年の明治神宮大会で九州勢として初の大学日本一にも輝いた。

 仲里氏は、夏の甲子園で2度の準優勝の実績を持つ沖縄県立沖縄水産高校の名物監督、故・栽(さい)弘義監督の愛弟子でもあり、プロ野球界に大瀬良大地(広島)、馬原孝浩(ソフトバンクなど)、新垣渚(同)らエース級投手など20人を送った名伯楽としても知られている。仲里氏は選手の素質を見抜く独特のノウハウのもと沖縄県からタレントを発掘し、実績はなくとも将来性豊かな沖縄県出身の高校生を九共大野球部に迎え入れて、同校野球部の黄金時代を築いた。その伝統と人材供給ルートは現在も引き継がれており、野球部には沖縄県出身の学生が多数在籍している。

スポーツ名門大への転換

 野球部の活躍によって全国区の知名度を得た九共大だが、過去には2度も補助金減額の危機に直面したことがある。84年の学生数の過少申告による行政処分と、98年に発覚した20億円の海外不正流出だ。いずれも日本私学振興財団(現・日本私立学校振興・共済事業団)から受け取る補助金が減額される事態に発展し、学園は外部人材の登用などを行って組織改革を進めた。

 2007年、福原軍造氏の甥の福原弘之氏が7代目理事長に就任。スポーツ部門強化による差別化を進め、これが前述した九共大野球部の躍進や自由ヶ丘高校の甲子園出場などにつながり、同大学はオリンピアンも輩出する全国屈指のスポーツ強豪校として知られるようになる。自ずと同大のスポーツ学部が脚光を浴びるようになったものの、一方で工学部は定員確保に苦戦するようになり、電気工学科を電機電子情報学科へ改組するなどの学科再編を繰り返したのち、2010年に工学関連の学科を全廃。11年には大学院や建築学科などの3学科も廃止して13年に工学部自体を廃止、現行の経済学部とスポーツ学部の2学部体制に移行した。こうしたさまざまな学園改革に着手した弘之氏は15年に死去し、現在は弘之氏の妻の公子氏が理事長に就任している。

一部理事が学園を私物化?

活動区分資金収支計算書(抜粋)

    現在の九共大は約26.6万m2の広大な校地内に、看板学部であるスポーツ学部が主に使用する、ラグビー場とサッカー場を1面ずつ備えた人工芝の多目的グラウンドや野球場、陸上競技場など、チーム強化とアスリートを育てるための充実した施設をそろえている。

 福原学園が運営する2大学と短大の学生数は九共大が2学部計2,932人(うち98人が留学生/21年5月1日時点)と概ね定員を満たしており、九州女子大と九州女子短大は若干収容定員に届いていない程度。少子化のなかでこの点は財務内容のプラス要因ではあるものの、九共大に関しては入学者の誘因効果も生む施設建設に充当される積極的施設整備がのしかかり、直近5年で4回の赤字を計上していることは不安材料だ。

 本格的な少子化と大学全入時代が到来するなか、こうした攻めの経営姿勢に対して一部の学校関係者からは不安の声も挙がっている。中長期的運営方針のもとで計画的な設備投資が求められるものの、法人運営についてはまったくの素人である福原公子・現理事長のもと理事会がイエスマンで固められ、結果的に一部の理事が学園を私物化しているという疑惑も浮上しており、同学園のガバナンスに注目が集まっている。

※九州共立大学と福原学園に関する情報をお寄せください。情報は こちら まで。

【データ・マックス編集部】


<INFORMATION>
(学)福原学園

理事長:福原 公子
所在地:北九州市八幡西区自由ケ丘1-1
設 立:1948年3月
業 種:学校運営
教育活動収入:(21/3)約69億6,779万円

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