【独自】糸島市発注工事、「入札不調」多発の謎(前)
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糸島市発注の「糸島市新庁舎建設工事」を村本建設(株)九州支店が45億8,000万円(税別)で落札した。同工事の総事業費は64億9,000万円。市発足以来、最大規模のプロジェクトであり、市を象徴する新たなランドマークを建設する予定だが、応札者に地場企業の名前はない。目立つのは、落札者の村本建設をはじめとする外様企業の名ばかりだ(表参照)。入札は、市があらかじめ選んだ業者だけで競争入札を行う指名競争入札方式で実施された。市は24社を指名したが、応札したのはわずか4社、1JVのみ。残りの19社は辞退するという異例の事態となった。
辞退者続出の新庁舎建設工事
対象企業から聞かれた辞退の理由は、大きく分けて2つ。1つは人手不足、もう1つは準備期間(見積り準備)が短すぎるというものだった。
正確な見積りを出すためには、歩掛(ぶがかり)(※)の計算や資材費の調査など、相応の手間と時間がかかる。大型工事の受発注ともなればなおさらで、依頼がきたからといってすぐに作成できるようなものではない。そのため、建設業法(第20条第3項)では発注者に対して、見積りをするために必要な一定の期間を設けることを義務づけている。
適正な見積り期間を設けることで、図面落としや見積り落としを防止し、元請・下請の双方が十分な検討を行ったうえで契約を締結できるようにしているのだ。必要な期間については、1件あたりの工事予定額によって以下のように定められている。
(1)工事予定額が500万円未満:1日以上
(2)工事予定額が500万円以上5,000万円未満:10日以上
(3)工事予定額が5,000万円以上:15日以上ただし、(2)(3)については、やむを得ない事情があるときに限り、5日以内の範囲で期間を短縮することができる。
上記の期間は、具体的な工事内容や契約条件の提示から、契約締結または入札までに空けなければならない最短の期間である。今回の新庁舎建設工事のような大型案件では、設定された期間以上に、余裕をもった見積り期間を設けることが求められる。このことは、建設業法令遵守ガイドラインにも明記されている。
市は、スケジュール通りに新庁舎建設工事を進めたいという考えを優先させたのだろうが、辞退者の多さと辞退の理由からは、建設業者への配慮に欠けた「無茶振り」だったと言わざるを得ない。
※:ある工事に要する作業の手間や作業日数などを数値化したもの。 ^
(つづく)
【代 源太朗】
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