2024年04月25日( 木 )

物価の上昇が止まらない その理由は?(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

為替レートの上昇

為替レート 上昇 イメージ    為替レートの上昇は物価上昇の大きな要因となる。とくに韓国のように原油を海外から輸入している国にとって、為替レートの上昇は、輸入物価の上昇をもたらす。それに、原油だけでなく、原材料も高騰し、物価上昇に拍車がかかる。このように物価上昇の要因となっているウォン安の原因はというと、アメリカによる利上げである。米FRBはインフレ率の上昇を抑えるため、年内に6,7回の利上げをすると予想され、これによってドル高、ウォン安となっている。基軸通貨であるドルの利上げは韓国ウォン安につながるのである。

長期金利に注目

 長期金利は株式市場と債権市場に大きな影響を与えるので、米FRBをはじめ世界各国の中央銀行は長期金利の推移に神経を尖らせている。加えて、長期金利は市場操作より市場の流れによって動く傾向がある指標である。ところが、長期金利は時差を置いてインフレ率に連動する。

 物価上昇率が7%を上回っているなか、長期金利の上昇が2%を超えるようになっており、実質金利はマイナス状態なので、今後長期金利はもっと上昇する可能性がある。このように長期金利が上がると、一般市中金利も上がることになり、銀行からお金を借りた人は利子の支払い額が増加することになる。

 利上げは結果的に消費を減らすことにつながる。その他にもサプライチェーンの崩壊、人件費の高騰、原材料費の高騰などが物価上昇の原因となっている。

 人手が不足している状況下においては、企業はより良い条件を提示しなければ人材が集まらない。そのため、賃金が上昇し、企業の人件費負担が大きくなり、商品の値段やサービスの値段に転嫁される。こうした流れにより、物価の高騰が加速していく。人件費の上昇に加え、原材料の価格高騰も発生して、製造業にとっては、まさに「泣きっ面に蜂」である。

 脱炭素が叫ばれて久しいが、脱炭素技術は未熟で、それによって供給不足や製品価格の上昇を起こしている点も見過ごせない。脱炭素政策はたしかに環境に優しいが、視点を変えると、技術開発費、設備投資が発生し、コスト増加という結果を招く。

 太陽光発電や風力発電は脱炭素政策という方向性としては間違いないものの、当分の間、莫大な投資とコスト上昇をもたらし、電気料金の上昇につながる。電気料金の上昇は製造業のコスト上昇、ひいては物価上昇を引き起こすことになる。

 このように物価上昇を引き起こす要因がいくつも重なり、物価上昇が進んでいるわけである。世界金融危機、新型コロナウイルス対策としてお金を大量にばら撒いたが、急激なインフレを引き起こすこともなく、経済成長を後押ししてきたが、ここにきて物価上昇というかたちで「異常シグナル」が市場に送られている。今後、世界の金融当局がどのような対応をしていくのか、金融市場の動向に世界が注目している。

(了)

(前)

関連キーワード

関連記事