2024年04月25日( 木 )

物価の上昇が止まらない その理由は?(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

尋常ではない物価上昇

世界 不安 イメージ    米国はかつて物価と失業率を低く抑えることに成功していた。それが可能だったのはグローバル化が進むことによって、中国が「世界の工場」となり、中国から安い製品が提供されていたからだ。ところが、現在は中国の状況が一変し、歯車が逆に回り始めた。

 バイデン政権は半導体のサプライチェーンから中国を外そうとしており、それが結果的に半導体不足と構造的なコスト上昇をもたらしている。このような状況下、食品や日常品なども一斉に値上がりし、米国では昨年春以来、消費者物価指数(CPI)の上昇が止まらず、2022年1月は前年同月比で7.5%の上昇となっている。これは1982年2月以来の高水準で専門家の予想値である7.3%を上回っており、市場では物価の上昇に対して警戒感が強まっている。

 物価上昇が進んでいる原因としてはオミクロン変異株の感染急増によってサプライチェーンの混乱が継続していることと、住宅価格の上昇が挙げられる。物価の高騰が進めば、家計は「火の車」となり、消費が委縮するのは間違いない。今回の物価上昇はなにが原因で発生しているのだろうか。

マネーサプライの急増

 マネーサプライとは端的には実体経済に流通する貨幣量であり、それが増加するということは将来的に物価上昇をもたらすことが予見できる。各国の金融当局は、新型コロナウイルスによる景気低迷を回避するため、大量の国債を購入して市場にマネーを供給する量的緩和策を実施してきた。市中に大量にお金がばら撒かれると、当然のことながら物価の上昇につながる。

原油価格高騰が物価上昇を牽引

 今回の物価上昇は、マネーサプライの急増による貨幣量増加に加え、原油価格や食糧価格の高騰が引き金となっている。原油価格の上昇をきっかけに、あらゆる一次産品の価格が上昇し、それが多くの製品価格に波及して物価が上昇している。

 原油価格が7年ぶりの高値を記録している。世界最大規模の原油先物市場であるWTIの原油価格は16日に1.72%上昇し、93.66ドルとなった。韓国の場合、原油はほとんど海外から輸入しているが、原油価格が高騰すると、物価に与える影響は大きい。実際、原油高で燃料油価格は前月対比で9.5%、 前年同月対比で46.5%も値上がりした。韓国の原油価格は国際価格に比べ2,3週間のタイムラグが発生するので、今後さらなる値上がりも予想される。

 しかし、それよりも恐ろしいのは原油価格と為替レートが同時に上昇している点だ。普通は原油高になると、ドルは安くなり、相対的にウォン高になるのが一般的だ。原油高になってもウォン高になれば、原油高の価格上昇を多少吸収できた。ところが、今回は原油高とウォン安が同時に発生し、物価の上昇を加速させている。また、ロシアがウクライナに侵攻すると、原油価格が120ドルまで上昇することもあり得るとブルムバーグ通信は報じている。

 原油高は物価高だけでなく、関連業界の業績にも甚大な影響をおよぼしている。大韓航空の場合、原油価格がバレルあたり1ドル値上がりすると、約3,000万ドルの損失が発生するという。

(つづく)

(後)

関連キーワード

関連記事