2024年05月08日( 水 )

【福岡】国際金融機能の誘致に向けたフォーラム開催

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ディスカッションの様子
ディスカッションの様子

融資ではなく出資の活性化を(つづき)

 国際金融都市・香港の代替都市としての福岡という可能性も、チーム福岡にとって追い風となっている様子がうかがい知れた。

 BNPパリバ証券(株)の取締役で、チーム福岡の一員としても活動してきた岡澤恭弥氏は、「福岡はよく支店経済都市と言われますが、私はそうは思いません。都市のもつポテンシャルは非常に高く、成長著しいアジア諸国との距離感、市や県が国際金融都市としての成長に前向きな今は、国内外の企業が本店を構えるまちへと変貌するチャンスだと思っています。九州・福岡から東京へビジネスの最新情報を与えるというような、地方創生のロールモデルとなれるだけのものがそろっているのです」と、福岡の将来性を評した。

 アジア諸国の勢いを福岡に取り込むことで、100年後も活況を呈する、新陳代謝が持続するまち、福岡へ。チーム福岡が先頭となって進める国際金融都市機能の誘致は、次世代につなぐ種でもあるのだ。

 同フォーラムで強調されたのは、いわゆる「失われた30年」の根底にある、新技術やスタートアップ企業に対する出資が進まず、市場の新陳代謝が止まってしまったことだった。併せて、設備投資や労働者の待遇向上といった、利の循環がなされなかったこと。総じて、誰もリスクを取ってこなかったツケだということだ。そして喫緊の社会課題への解決策の1つとして、外国・外資系も含むファンドの利用が提案された。日本では、担保を要求する融資が依然主流だが、そうではなく、技術や事業など、無形資産への可能性に対する出資を促す必要があるという。

 アメリカの例として、15年時点で時価総額に占める無形資産の割合は80%超、21年時点では90%超であることが紹介された(同フォーラム内提示資料より)。日本では前述の通り資金調達に際して担保を求められることが多く、その結果として、無形資産よりも土地などの有形資産に価値が置かれるケースが多い。

 しかし、人材のもつ技術や人脈、事業に対する将来可能性を含む無形資産に出資することは、新しい企業、新しい産業の創出につながり、社会のダイナミズムを生む。少なくとも、日本とアメリカの経済成長を比較した場合、無形資産への出資に対する抵抗感の有無が、市場の新陳代謝に関係しているといえそうだ。担保なしで無形資産に出資できるファンドの存在とその利用は、国際金融機能の誘致に重要な役割をもつ。もちろん、出資を受けたならば、自社の経営に対して出資者から厳しい要求が出ることを覚悟しなければならない。

九州全体で成長の果実を共有

 ファンドの誘致で、世界の投資家と福岡をつなぎ、国際金融都市としての成長を図る。福岡から時価総額1,000億円の「ユニコーン企業」を輩出し、次世代にまで活況が続くまちづくりの基礎を築く。そして、福岡がロールモデルとなり九州全体に利益が循環するようにする。チーム福岡が目指すのは、誰もが新しいことにチャレンジできる風土が醸成された九州なのだ。

 同フォーラム内のトップリーダーズセッションにおいて倉富氏((一社)九州経済連合会会長)は、「九州と聞いて日本の西端と考える人は多いと思われますが、このイメージを日本の中心にしていきたいと考えています。古来より、福岡・九州は大陸との交流を通じて、進取の気性に富んだエリアであり続けています。また、福岡市でいえば、渡辺通りに名を遺す西鉄の始祖・渡辺與八郎氏は、当時何もなかった天神を、現在の都心部にまで発展する礎を築くなど、将来の可能性に対する投資を行った人物です。ファンドの利用による無形資産に対する評価および出資など、次世代のためのまちづくりを行える風土はあると思いますので、国際金融機能の誘致に対する機運を九州全体でさらに高めていければ」と、九州のポテンシャルについて話した。

 今はまだ、金融都市としての知名度は低い福岡市だが、金融機能誘致の推進にあたって見据えるのは、福岡だけでなく九州全体の発展である。そしていつかは、日本の持続可能な成長を牽引する地方創生のロールモデルとなることに期待したい。

(了)

【立野 夏海】

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