2022年08月18日( 木 )
by データ・マックス

【提案】箱崎キャンパス跡地を「グリーンフィールド」に(中)

懐かしい未来へ

 これまでは、人間中心主義で社会を思想してきた。これから大切なのは、日常生活のなかに「自然」をどう取り戻していくかということではないだろうか。生命は、海で始まったと言われている。その後、海と陸それぞれで進化が展開されるが、やがて森ができ、拡がっていく過程で人間は生まれ、はじめ人間は完全に自然のなかに埋没して生きていた。つまり、自然に生かされてきたのだ。

自然とのシンクロ性
自然とのシンクロ性

    人間の生活が大きく都市化したタイミングを18世紀以降の産業革命と仮定すると、それからわずか2~300年しか経っていないのだ。現代の都市生活で大きなストレスが生じるというのはある意味当然の話で、産業革命以降も1980年代のIT革命、そして現在のコロナ禍と、現代社会はすさまじいスピードで変化し続けている。現代人は脳が覚醒し過ぎ、常に過活動の状態にあるが、自然のなかで過ごすことで鎮静化することがわかっている。人間の体は、そもそも自然のなかでリラックスするようにできているのだ。この 「自然とのシンクロ性」 が古くから生活に根付いているのが、私たち日本人である。キリスト教に代表されるような西洋思想では、人間は特別な存在であり、一段上にいると考える。良くいえば自然とは守るべき存在だが、一方で征服する対象でもある、と。こういった西洋の縦の関係に対して、東洋では横の関係と捉えられてきた。

リバースシティ構想

 西洋型の生活が根付いた20世紀は、“石油とコンクリート”という物質に規定された時代だったが、それ以前の日本は“木という物質とそのスケール感”で規定されていた。そこに戻ることができたら、日本は随分変わるのではないか。都市建築を木造にして、そこらじゅうに木を植えて緑地にする。元来、森に暮らしてきた民である我々は、砂漠やサバンナで暮らす民と違って、でこぼこの土地で、足下の感覚を頼りに生きてきた。家のなかでも、裸足あるいは足袋で床や畳を踏みしめ、土地とつながっている身体感覚を得ていたのだ。しかしそれも、均一化されたコンクリートの高層マンションに住み、地面から遠く離れたことで、日本人の土地感覚は失われてしまっているのではないか。これまでの豊かさが、人工物(石油やコンクリート)やフィクショナルな西洋型の閉ざされた空間世界だったとしたら、これからの豊かさは、東洋型の開かれた自然界との近接に「都市型利便性+テクノロジーの享受」を混ぜていくようなイメージだろうか。

 「リバースシティ構想」とは、都市をその土地の本来の生態系に戻していく作業だ。価値の転化された土木の“再新発”に建設会社の動員を求め、森や林や木々が茂る里山のような自然風景に、現代テクノロジーやICTネットワークを編み込んでいく。中層中密程度の建築物が、自然と同居していく空間構成。そんな“新しいかたちの都市“が伝播していってほしいと願う。


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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