【中洲クライシス】見えてきた #中洲の未来(後)
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(株)ヤマシタ
代表取締役社長 山下 俊也 氏
(株)サクラグループHOLDINGS.
代表取締役社長 松岡 三貴 氏新型コロナ対策のため1月27日から福岡県に適用されていたまん延防止等重点措置(まん延防止)が3月6日に期限を迎えた。第6波の急激な拡大にともなって病床使用率が一時は9割近くまで上昇していたが、直近の病床使用率が改善傾向にあることで服部誠太郎知事が国に措置の解除を要請、なんとか延長を免れたかたちだ。コロナ関連破綻(負債1,000万円以上)が140件と、全国でも高い水準の福岡県。コロナ禍が県経済にじわじわとダメージを与えているなか、歓楽街「中洲」も度重なる営業自粛要請の影響でまちはその在り様が変わろうとしている。
地域の声をまとめる~中洲再生のカギは納税とイメージアップ
──中洲の未来はどうなるのでしょう。
松岡 これまでは行動規制がかかっている間にも闇営業をしているお店があって、それが中洲のイメージダウンにつながっていました。
山下 どこの店とは言わないけれど、時短要請期間中にもかかわらずフルオープンしていた店がありまして、そのママが何を言い訳にしたかというと「従業員の生活を守るために店を開ける」と言っていたんです。その店は今回のまん延防止でお店を閉めていますが、じゃあこの間言っていた「従業員の生活補償」はどこにいったんだと。単に前回はお客さんがいるから開けていて、今回はまったく入らないから閉めているだけなんです。こういった詭弁が一番やっかいだと思いますね。
松岡 やはり私たちの業界がやり玉に挙げられている背景には、そういった部分があるのだろうと思います。私たちの仕事は日本の歴史にずいぶん長く根付いてきましたので、なくなることはないと思いますが、イメージアップにはまち全体で取り組むべきですね。世間体を気にするお客さまでも足を運びやすいように、自分さえよければ、自分の店が儲かればそれでいいのではなくて、全員で力を合わせることが長い目で見れば最も大事でしょう。
山下 そのためには地域を巻き込んだ組合のような組織がほしいですね。いまはまったく統率されていないので、それを束ねるような組織があると違うんだけれど、それをできる人がいない。同業者でそれをやるのは厳しいんですよ。本当は地域の大手不動産屋さんなど、たとえばラインビルさんあたりがやるのが良いのでしょうが、不動産屋さんから見れば組合ができて家賃交渉をされると困るでしょうから痛し痒しといったところ(笑)。
──結局、中洲はみんながライバルで独立心がある方が多い。まとめるのは難しい。
山下 昔スナックをやっていたときにキャストのための制服をつくったんですが、年齢も体形も異なる全員に似合う制服をつくるのは思いのほか難しいんです。それと同じで、みんなが納得する理想的システムはなくて、反対者は絶対に出ます。十人十色で難しいですよ。
──だからこそ面白いまちでもある。ライバルに負けないように特色を出し合っている。
山下 中洲は「1+1」が3にも4にもなるまちなんですよ。たとえばセット料金を1万円と安く設定しておいて、追加オーダーをどんどん出して結果的に4万円売り上げる店があります。一方で、セット料金は2万円と高めなんだけれど、できる限りその範囲内に納める店もある。一般的に、経営者がオーナーママの店は追加オーダーで料金を上げていくやり方ですね。そこが男性経営者と女性経営者の違いにもなっていて、商売のやり方がまったく違います。オーナーママは甘えられるので、甘えの「付加価値」をどれだけ追加で取れるかがカギになるんですね。あるママなんかは、「うちが潰れてなくなったら博多に遊びに来ても行くとこがないやろ?困るやろ?」という理屈をつけて、東京のお客さんに請求書を送っているなんて話も聞きますから(笑)。そこは女性だからこそできる荒業なのだろうと。
松岡 あと、我々が店舗を閉めることで影響を被っている業界、たとえばおしぼりであったりお酒の卸であったり、そういった周辺業界への影響も実は甚大なんです。だから、ぜひ補償の範囲をそこまで広げてほしいです。場合によっては飲食店への補償額を下げてでも、周辺業界を支えることが必要になると思います。知り合いの屋台のオーナーは、関連業界を助けるために店を閉めないという選択をしました。
山下 それが本当なら美談だけど、店を開けるための口実にもなりかねない危うさもあるね。
──今後、さらに新しい変異株が出る可能性もあります。中洲はいつまで翻弄されるのか、まちの未来は?
山下 きちんと納税して、助成金や補償金、あるいは銀行融資が受けられるお店はさほど問題ないと思います。ただし、キャバクラなどの納税がグレーで補償が受けられないところは客足が落ちたらもたないですよ。日々の売上だけが頼みの綱ですので、すぐに潰れる可能性が高いですね。それを考えると、キャバクラが客層にしている若年層が中洲を敬遠し始めるときつい。逆にいえばキャバクラは補償がないから開けているわけで、納税とセーフティーネットがカギなんですよ。
松岡 同感ですね。ママさんと女の子たち3人くらいでやっているスナックは、給付金がある限りびくともしないと思いますよ。納税している店が残るというイメージですね。自分さえよければ、ではなくて、ある程度は従業員の生活の面倒をみないと、コロナ以外の理由で閉める店が出てくると思います。コロナの2次被害ともいえますが、コロナのときに経営者がどれだけ従業員のことを考えられたかで、残る店とそれ以外に分類されるのでは。もともと在籍キャストが少なかった店は派遣で補っていましたが、派遣会社自体が女の子を集められない状況ですので。
山下 お客さんをつなぎとめる力をもった良い子が集まるチャンスにもなるのかな。松岡さんは日本一の店をつくることを目標に掲げていますが、どうですか?
松岡 東京進出も視野には入れていますが、先輩たちが築き上げた歴史ある中洲で日本一の店をつくりたいという夢があります。まだまだ勉強中ですし、山下社長に教えていただくことも多くあります。コロナ禍をくぐり抜けてさらにサービスの本質を考える機会にもなりましたので、夢を追い続けたいですね。
山下 まん延防止措置が解除されましたらぜひ、うるわしとともにサクラグループをよろしくお願いします(笑)。
【中洲クライシス取材班】
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会員制クラブ「ショパール& Member'sキャッツ・アイ」福岡市博多区中洲3-2-12 第三ラインビル2F(株)サクラグループHOLDINGS.
「櫻ロワイヤル」福岡市博多区中洲2-6-26 日港ビル2F
「しらゆき」福岡市博多区中洲2-8-2 パインコート中洲B1F
「たまより」福岡市博多区中洲2-3-12 八和ビル9F
※すべて完全会員制
山下 俊也(やました・としや)
1959年生まれ。79年、20歳のときに中洲で働き始めて今年で43年目。趣味は筋トレとサウナ。松岡 三貴(まつおか・みつたか)
1973年生まれ。学生時代には空手に熱中。大学生のときにクラブ「うるわし」でアルバイト経験も。関連キーワード
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