2024年04月25日( 木 )

【技能実習生】ベトナム人実習生にみる搾取の構造(前)

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 主にベトナム人技能実習生や特定技能の在留資格で日本に入国する実習生たちの大半が、母国の送り出し機関に法外な手数料を支払って来日しているという現実がある。日本政府の入国規制措置により、自国で長期間の待機を強いられていた外国人の大半が、この手数料といわれる多額の“債務”を背負って入国しているのである。

外国人入国者に対する水際対策緩和

 日本政府が観光目的以外の外国人の入国制限を3月1日から大幅に緩和したのは、読者の方々もご存じだろう。

 新型コロナウイルス感染症が発生して以降、日本は、海外からの入国者に対して“鎖国”ともいわれるほど厳しい入国制限を課してきたが、水際対策の緩和を受け、在留資格を取得していながら長期間の待機を余儀なくされていた外国人たちが続々と入国してきている。また、政府は現在1日あたり7,000人とされている外国人の入国制限も、4月以降、1万人とする方針も示している。

いまだに搾取続く

 筆者はコロナ禍前から、とくにベトナム人が留学生・技能実習生・特定技能の在留資格で母国を出国する際、送り出し機関に多額の手数料を払って入国している事実について、多くのベトナム人に聴き取りを行い、それを記事にしてきた。だが、いまだにこの手数料という名の「搾取」は存在している。

 このたびの水際対策緩和を機に、改めて日本に入国してきた技能実習生や特定技能の在留資格を持つ外国人たちが背負う法外な借金について、ベトナムの送り出し機関および実習生に聞き取りを行った。

在留資格により雇用に大きな違い

労働者 イメージ    まず、技能実習生と特定技能の在留資格で入国し、日本企業に雇用された際の働き方の違いや雇用する企業の受け入れ方の違いについて、大事なポイントを要約して説明する。

 技能実習制度で入国する技能実習生たちは、予定された実習計画に沿って決められた業務だけを行わなければならない。その理由は、実習計画に沿った業務の技術や知識などを在留資格で認められた期間中に、働きながら学び、ここで学んだ内容を母国に持ち帰り、自国の発展に寄与することを目的とした制度だからである。そうした技能実習生を、もっぱら人手不足解消の労働力として雇用することは、法の下で厳しく禁じられている。

 一方、特定技能の在留資格で働ける外国人たちは、技能実習生とは異なり、人手不足解消を目的として企業が雇用できる制度である。たとえば、同じ業種の同じ現場で働いていても、雇用者側からすれば、働かせ方がまったく異なる。外国人を雇用して企業の人手不足を補うという目的で技能実習生を雇用するのは適当ではないということを改めて考えていく必要があるだろう。

 人手不足解消を目的に雇用できる特定技能の在留資格は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類である。これまでに外国人を雇い入れた実績がなくても、法で定められた14業種に該当する企業であれば、単純労働を含めて雇用ができる。順序としては「特定技能1号」の資格取得者から雇用していくことになる。

技能実習生雇用企業も特定技能に移行可能

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 参考までに、現在、すでに技能実習生を雇用している企業ならば、技能実習期間が3年間を満了しており、かつ、この3年間が終了するまでに従事していた業種の専門的な試験に合格すれば、「特定技能1号」の在留資格が取得できる。ただし、特定技能に移行する在留資格を取得するには、相応の技術や知識以上に、円滑な会話ができる日本語力が必要となる。

 雇用している企業としては、技能実習1号から3号までの在留資格を継続させて雇用し続けるか、技能実習期間途中で、特定技能の在留資格を取得させて雇用するか、どちらがその企業にとって最善な判断なのか迷うのも当然だといえる。さらに特定技能に移行する場合、日本人と同等以上の給与・福利厚生・待遇、つまり正社員と同等以上の雇用環境を準備することも必要となる。

(つづく)

【岡本 弘一】

(後)

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