2024年04月26日( 金 )

VRシアター「4DOH」を浸透 社会に有用なメタバース推進(後)

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(株)ピー・ビーシステムズ 代表取締役社長 冨田 和久 氏

(株)ピー・ビーシステムズ
代表取締役社長 冨田 和久 氏

 Facebook(現・Meta)がメタバース(仮想空間)企業への変貌を宣言するなど、メタバースへの注目度が高まっている。そんななか、企業のデジタルワーク推進支援で定評のある(株)ピー・ビーシステムズは昨年、メタバース推進部を立ち上げ、得意とする3Dの映像技術による感動共有型VRシアター「4DOH」の活用などにより、企業や自治体などの問題解決に貢献するメタバースの提供を目指している。代表取締役社長・冨田和久氏に同社が目指すメタバースの取り組みや社会像について話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 取締役 緒方 克美)

テレワーク環境を整備 働き方も変わる

 ──アナログ的な中小企業に対して、どのようなDX支援が可能でしょうか。

 冨田 DXとはデータの活用であり、データをつくることが必要ですが、多くの中小企業には活用できるデータが蓄積されていません。販売、在庫、会計などのデータを再利用できるかたちで蓄積することが必要であり、そのためのシステム化が必要です。当社も顧客のDX支援を始めていますが、実際に最初に行うことは社内のITシステム整備です。手作業が残っていて活用できないデータがあれば、それを利活用できるようにする必要があります。顧客には「DXをやる」「データの利活用をする」という目標をしっかりと定めて、仕組みをつくること、きちんとしたデータおよびデータベースとなる指標をつくることを提案しています。

 当社は基幹システムのクラウド化を最大の看板としており、セキュアクラウドシステム事業を中心に順調に成長を続けています。現在はネットの通信速度が向上し、社内でシステムを使うのと同じ感覚で、クラウドのシステムを使えるようになりました。クラウド化によって、データの利活用の幅が広がっています。また、クラウド上でもバックアップが取れ、アクシデントが発生しても業務を止めなくてよいため、投じたコストが無駄になることも防げます。これらの点からクラウド化は必要だと勧めています。

 当社はテレワーク環境をつくる会社として、企業にその環境を提供する責任があります。現状はやや中途半端な状態であり、さらに推し進めたいと思います。現在、人々の働き方がようやく変わってきているところですが、今後は社会全体で「時間は短くても集中して良い仕事をしよう」という流れに変わるべきだと感じています。役所の窓口業務は午前9時から午後5時までですが、技術上は人がいなくても24時間対応が可能な仕組みを実現できるはずです。こうした大きな変革をしていけば、日本はより良い国になっていくと思います。

(株)ピー・ビーシステムズ    4DOHは一昨年前に、小型機を使用したサービスの提供を開始しました。当初から思い描いていた、家族4~5人で見るというコンセプトをより具現化したものです。企業からの問い合わせが増えてきています。

 使用場面の1つに住宅展示場があります。従来の住宅展示場のVRでは、家族が別々にVRゴーグルをつけるため、見ている世界が異なり、同じ気持ちにはならないと思います。しかし、4DOHでは家族がそろって同じ体験をするVRを提供することができ、それを基にいろいろな意見を言い合えます。住宅は1人の決断だけでなく、家族の合意があって初めて購入するものであり、一緒に見ることで購入までスムーズに進むと思います。また、住宅は長く暮らすものということを踏まえ、春夏秋冬や天候の変化の体験を提供し、安心して購入できるように促すことができれば、入居後の満足度が異なってくると思います。

 建設関係では、とくにプラント設計、都市設計において活用してほしいと思っています。設計したプラントや街のなかを歩くイメージを疑似体験できれば、それをより洗練させていくことができるでしょう。設計事務所1つに4DOHが1台ということもあり得ると思います。

 このほか、学習や防災訓練では、先生が3Dの全周画像を見せながら指導するという活用の仕方ができると思います。4DOHは現在、アミューズメント系から産業・社会系へと活用の場が広がろうとしているところです。社会にとって有用であることを体験してもらい、浸透させていきたいと思っています。

(了)

【文・構成:茅野 雅弘】

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<COMPANY INFORMATION>
代 表:冨田 和久
所在地:福岡市博多区東比恵3-3-24
設 立:1997年2月
資本金:2億4,689万円
売上高:(21/9)21億6,536万円


<プロフィール>
冨田 和久
(とみた・かずひさ)
1963年生まれ、福岡市出身。福岡高校、九州大学卒。野村コンピュータシステム(株)(現・(株)野村総合研究所)、(株)シティアスコム勤務を経て、97年(株)ピー・ビーシステムズ設立、代表取締役社長に就任。2019年、福岡証券取引所Q-Boardに単独上場をはたす。

(中)

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