2024年04月17日( 水 )

「ななつ星」グレードアップ(前)9周年を迎え

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

運輸評論家 堀内 重人 氏

 JR九州は4月8日、「ななつ星in九州」の車両や運行コースのリニューアルを10月に行うと発表した。今回は、JR九州の企業イメージ向上にも大きく貢献した「ななつ星」について振り返ってみる。

「ななつ星in九州」の運行開始

ななつ星in九州
2013年10月15日に運行を開始

 「ななつ星in九州」は、九州旅客鉄道(株)(以降、JR九州)運行の周遊型クルーズトレインで、2013年10月15日に運行を開始。九州各地の自然、食、歴史などを楽しむことを目的とした寝台列車で、豪華な設備や上質のサービスを売りにしている。

 列車名の由来は、九州にある7つの県と、7つの観光素材(自然・食・温泉・歴史文化・パワースポット・人情・列車)、さらに7両編成の客車を表現したものとなっている。運行当初の価格は、一番安い1泊2日のコースで1人あたり15万円、3泊4日コースでは1人あたり38万円だった。

 「ななつ星」構想は、11年1月30日にJR九州から発表され、同5月28日には列車名などの詳細が発表された。構想を練ったのは、JR九州社長・唐池恒二氏(当時)だ。唐池氏は、韓国で運行されている周遊型の豪華クルーズトレイン「ヘラン」に乗車。その際、「ヘラン」が平日でも満室で運行しているという現実を知り、「日本でも同様の列車を運行できないか」と考え、反対派を説得しつつ、プロジェクトを進めていった。

 「ななつ星in九州」は、12年10月1日から同31日に13年10月~12月出発分(第1期)の予約を受け付けたところ、定員の7倍以上の応募があり、抽選となった。その後も毎回、抽選を行わなければならないほどの人気ぶりで、5回乗車したリピーターもいるという。ちなみに「ななつ星in九州」は14年にブルネル賞(鉄道の国際デザインコンペティション)を、16年には「第1回日本サービス大賞」で、内閣総理大臣賞を受賞している。

価格の値上げと運行距離短縮

▼おすすめ記事
「ふたつ星4047」で西九州の海めぐり 新D&Sトレイン(前)

 「ななつ星in九州」は、旅行商品として販売されているため、JRの「みどりの窓口」では購入できず、「ななつ星in九州」のツアーデスクに申し込むか、JR九州の旅行センターで申し込む必要がある。このように申し込み方法が限られているにも関わらず、毎回、抽選倍率は7倍~10数倍にものぼる。

 運行開始当初、アルコール類は有料だったが、その後はアルコールも含めたすべてのドリンクが、24時間無料で提供されるようになった。しかし、その代わりに、旅行代金が徐々に上がり、一方で運行距離は短縮された。

 運行開始当初の1泊2日の九州北部コースの場合、博多を発車して長崎方面に向かい、長崎駅に数時間停車後、長崎本線を経由して鳥栖に向かう。その後、熊本方面に向かい、早朝、阿蘇に到着。阿蘇駅構内のレストランで朝食後、周辺の散策を行う。大分からは進行方向を変え、久大本線を走行後、久留米からは鹿児島本線で博多へ戻っていた。

 しかし、16年4月に熊本地震が発生し、豊肥本線の立野~阿蘇間が不通になったのを受け、豊肥本線に入らず、熊本から八代へ向かい、八代から博多へ折り返したり、久留米から湯布院へ向かい、そこで博多へ向けて折り返したりするようになった。

 コースは短くなったものの、抽選倍率が下がらなかったことから、その後、1泊2日の“スイート”を利用するコースは、1人あたり22万円となり、その後、25万円、そして、ついに30万円の大台に乗る。

 コロナ禍になると、「三密」回避のため、34名の定員を30名に減らし、1泊2日の“スイート”の1人あたりの価格を40万円強に値上げした。さすがに30万円超だった価格が、急に40万円になるのは「具合が悪い」と思ったのだろうか、豊肥本線や久大本線も全線で復旧したこともあり、運行開始時のコースに戻している。

(つづく)

(中)

関連キーワード

関連記事