2024年04月20日( 土 )

暴走する弁護士たち

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 かつて弁護士は「花形職業」の代表ともいえる存在だった。しかし、近年は弁護士の所得格差が広がり、若手を中心に「食えない弁護士」が増加。また、新司法試験の導入によって質の低下も叫ばれており、トラブルが頻発している。以下に弁護士が起こした最近のトラブルを紹介する。

社会人のモラル欠如の弁護士

 今年2月21日に業務停止2カ月の懲戒処分を受けた三山直之弁護士の場合は、弁護士資格を利用してとか、法を悪用してなどの話ではなく、社会人としてのモラル欠如が原因だ。

 同弁護士は昨年9月28日未明、早良区の市道で酒を飲んだ状態で軽自動車を運転し、信号待ちのトラックに追突する事故を起こし、酒気帯び運転の疑いで現行犯逮捕された。呼気からは基準値の倍以上のアルコールが検出されたと報じられ、罰金30万円の略式命令が出された。「自宅で焼酎の水割りを飲んだ」後に子どもを車に乗せ、自宅と事務所を往復する途中で事故を起こしたという。午前1時30分過ぎに、このような行動をする理由はまったく理解できない。同時に弁護士会の業務停止2カ月という処分も、事の重大さから考えれば軽い印象だ。

お金にだらしないネコババ弁護士

弁護士とお金 イメージ    交通事故の示談金として振り込まれた700万円を依頼者に無断で流用したのは東武志弁護士だ。2019年4月に交通事故の裁判で示談金として振り込まれたものを勝手に流用し、依頼者が「示談金の清算がされない」と福岡県弁護士会に相談したことで発覚した。同会の聞き取り調査では「示談金は清算した」とうその説明をしていたという。

 昨年4月に1年6カ月の業務停止処分を受けた東弁護士は、県弁護士会に行政不服審査法の規定による審査請求をしたが、今年2月15日、懲戒委員会の議決に基づいて審査請求を棄却する裁決が行われた。同弁護士は15年と19年にも別の預かり金の不適切な処理で懲戒処分を受けている。ネコババしても弁護士資格は失わないらしい。

1,200万円を手に消息不明 「拉致された」と呆れた抗弁

 兄弟で弁護士、父親は九州大学教授という触れ込みの福岡県弁護士会所属の男性弁護士K。福岡市の自営業Aは知人の企業経営者から「優秀」という評価とともにK弁護士を紹介されたものの、そのメッキはすぐに剥げた。A依頼の簡単な案件を複数堅実にこなしたものの、不動産売買に絡む抵当権抹消の事案で不自然な言動が目立つように。ついには今年1月、抵当権抹消のために用意した1,200万円をK弁護士の口座に移した直後に連絡が途絶え、ようやく連絡がとれた際にはLINEで「コロナ中毒症(原文ママ)で入院となった」と送られてきた。

 驚いたAの追及に、今度は電話で「体調不良で折尾駅下車後に福大病院に入院した。極秘入院で第三者には秘匿されている」と態度を一転。北九州市から福岡市に救急搬送されることなど通常では考えられず、不審に思ったAが福大病院に入院していないことを確認すると、今度は「博多駅で拉致されてホテルに軟禁された。以前の案件でミスをした責任で800万円払えと迫られて、1,200万円が入った口座の通帳と印鑑を取り上げられた」などと意味不明の抗弁。

 Aは弁護士会に相談しようかとも考えたが、K弁護士からは開き直りにも威圧にも受け取れる言葉が送られてきた。「懲戒処分になれば被害金弁済もできない。1,200万円は返済されたと弁護士会に伝えてほしい」。Aはさすがに腹を立てたものの、1,200万円を取り戻すことを優先して提案に従っている。しかしそれ以降も、供託金名目で400万円預かったにもかかわらず供託した形跡がないなど、K弁護士をめぐる別のトラブルが明らかに。Aは周囲から「被害者を増やさないためにも弁護士会に相談すべきだ」と対応を促されているという。

仕事熱心か、人権無視の圧力か

 訴訟の相手方に前科があることを金融機関に伝え、不当な圧力をかけたとして、福岡県弁護士会は奥田克彦弁護士と毛利倫弁護士を3月14日付で戒告の懲戒処分とした。会社間の請負代金をめぐる訴訟で、支払いを求める側の代理人だった奥田弁護士は、相手方が金融機関から追加融資が受けられないため支払えないと主張したことから、その金融機関に対して相手方が過去に有罪判決を受けたことを伝えた。

 さらに「執行猶予中の融資はコンプライアンス違反ではないか」「(対応次第で)金融庁に捜索依頼を行う」などと通知し、追加融資の方針などについて回答を迫った。この会社と共同事業を行う人物の代理人だった毛利弁護士も同様に通知した。

 前科情報の漏えいはプライバシー侵害、また金融機関への通知も不当な圧力とし、弁護士法の「品位を失うべき非行」と判断された。なんとしても回収したかったのだろうが、「脅された」と反撃を食らうようでは、弁護士として脇が甘いと言われても仕方ないだろう。

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