2022年06月28日( 火 )
by データ・マックス

【BIS論壇No.378】経済安全保障推進法について

 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。今回は5月15日の記事を紹介する。

経済安全保障推進法 イメージ    自民党政権の岸田内閣が準備していた「経済安全保障推進法」が11日、参議院本会議で賛成多数で可決され、成立した。同法案の内容について日本ビジネスインテリジェンス協会は昨年末から、メリットとデメリットの面から研究を開始。当協会と協力関係にある日本コンペティティブ・インテリジェンス学会(高橋文行会長、日本経済大学大学院教授、情報学博士)とも共同研究を開始した。昨年12月7日に第1回合同研究会を開催。今後も共同研究を継続する予定である。

 同法案の背景には米中貿易戦争があるとみられ、日本政府には米国への配慮があるようだ。とくに中国を念頭に、高度先端技術の流出防止や医薬品など経済や生活に欠かせない重要物資の確保のため、政府が企業の設備を審査するほか、先端技術研究にも関与し、罰則も設けられる。さらに警察庁が大幅に関与することについても、公正で透明な運用をどう担保するかなど、対象の不明確さ、運用などでの問題点も指摘されている。従って、今後の動向については慎重な対応が求められる。

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 この経済安全保障推進法は4本柱で構成。(1)医薬品や半導体などを安定的に確保するサプライチェーン(供給網)の強化(半導体・医薬品・レアアース・蓄電池など)、(2)サイバー攻撃に備える基幹インフラの事前審査(電気・電気通信・放送・郵便・鉄道・航空分野など広範な14分野にわたる)、(3)先端技術の官民協力(宇宙・海洋・AI・量子・バイオなど)、(4)特許非公開(先端技術や高度な武器に関する特許の非公開、原子力や武器関連の技術などが含まれる)。

 違反した企業などには最大で2年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科される。同法は2023年以降に段階的に施行される見通しという。だが、米国の経済スパイ防止法の罰則(個人6,500万円以下の罰金、15年以下の懲役、企業13億円以下の罰金)に比べて軽すぎる。

 岸田政権が同法の整備に動いた背景には、米国と中国の先端技術をめぐる覇権争いがあるとみられている。日本でも自民党が主導し、情報や高度な技術が流失しないための法整備を求める声が強まっていたという。しかし、経済界では基幹インフラの事前審査は規制色が強いとして、懸念の声がある。どの企業のどの施設が審査対象になるのかがわからず、政府の恣意的な運用を問題視する見方も根強い。

 ウクライナ紛争にも関連し、アングロサクソン5カ国のスパイ組織「ファイブ・アイズ」(別名「エシュロン」:梯子の隠語)の動きも脚光を浴びており、日本とファイブ・アイズとの安全保障共有などが話題に上がっている。だが、あくまでも日本企業の国内外の企業活動を制約しないような配慮が必要だ。当協会も、同法の運用に対して十二分な監視が必要と考えている。


<プロフィール>
中川 十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)

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