2022年06月28日( 火 )
by データ・マックス

【日本地方再生の道(5)】「京都府伊根町」地の利をいかして産業推進

京都府与謝郡伊根町    京都・丹後半島の北東部に位置する京都府与謝郡伊根町は、人口1,995名(2022年4月30日現在)、面積61.95km2のまちである。なぜ同町を訪問したのかというと、町の最南部にある「伊根の舟屋」をぜひ見ておきたいと思ったからである。

京都府与謝郡伊根町    「伊根の舟屋」は、伊根湾(伊根浦)沿いに立ち並ぶ民家で、船の収納庫の上に住居を備えた同地区独特の伝統的建造物で、重要伝統的建造物群保存地区に選定されており、国内外にその名を知られている。

 地元の観光業関係者は、「当地の建物は、海に面している家屋は倉庫(ガレージ)。母屋=住居は、道を挟んで別に設けています。つまり2つの家屋を有しているのが大半です」と説明する。

 「伊根の舟屋」は05年に「伊根町伊根浦伝統的建造物群保存地区」として、漁村では初めて重要伝統的建造物群保存地区に選定された。「伊根の舟屋」の始まりは不明だが、一説では戦国時代に建てられ、現在のロケーションは、伊禰浦(いねうら)と呼ばれていた江戸末期頃に出来上がったと言われている。軒数は230軒で、江戸末期頃から変わっていないという。

 伊根湾は直径1kmあまりの小さな湾で、江戸時代はクジラ、ブリ、マグロ、カツオ、イカなどが豊富に獲れる優れた漁場であった。現在は岩ガキやマダイの養殖が盛んだという。同町の和食店経営者によると、若手の漁師は、若狭湾や日本海に“ノドグロ、スズキ”などの漁に出ており、通年で養殖できるマダイなどだけではなく、季節の旬を求めて、よりお客さんのオーダーに応えられるように努力しているという。

京都府与謝郡伊根町    また06年から「伊根マグロ」の養殖も行っている。6月〜7月にかけて日本海で群れをなす天然のクロマグロを獲り、伊根湾にある専用の生簀で厳正に管理し、養殖を行う。「伊根マグロ」は12月頃が最もおいしい時期だと言われており、ブランドとして認知され、全国各地のお客さんに購入されているという。

 伊根湾は波の荒い若狭湾に面しているが、南向きで、湾の出入り口に鎮座する青島が天然の防波堤となっているため、波が穏やかで潮の干満差も少なく、養殖に適している環境だという。さらに冬の水温が12度~夏は30度と寒暖差も大きいため、良質なマグロを育てるのに適しているそうだ。なお、波が穏やかで潮の干満差が少ない環境は、舟屋の建築にも適している。

 伊根町は人口2,000人を下回り、面積は坪換算で1万8,000坪超と決して大きなまちとは言えない。同町のデータによると、1960年の人口が6,958人、現在は1,995人と71%も減少している。2030年には約1,300人まで減少するとの予測もあるが、同町では30年の人口1,600人を目標に掲げている。

 「伊根の舟屋」という観光資源─江戸時代からのこる我が国伝統の建築物は、飲食店や宿泊施設として有効活用されている。230軒すべての舟屋が有効活用できるかどうかは分からないが、まだまだ開拓の余地はある。

 現在住んでいる方々はもちろんのこと、建物の継承者がいないなら、ぜひ地域外から人を呼び込み、舟屋の存続ならびに商業ベースで有効活用するための施策を行政と一体となって取り組んでいってほしい。

京都府与謝郡伊根町

 また、漁業は、同町にとって観光・農業とともに中心となる産業である。伊根町の若い漁業者たちは、恵まれた環境に甘んじることなく、産業の推進に挑戦している。観光業との連携を深めながら、養殖を含めた新たな漁業の手法を実践しつつ担い手を募り、さらなる産業振興を推進する─―。舟屋の有効活用と同様、行政との連携強化は急務だ。

 同町は、我が国有数の伝統的財産である。未来永劫、次世代へと継承されていくことを切に願う。

【河原 清明】

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