2022年01月24日( 月 )
by データ・マックス

ソフトバンク、ホークス代表代行、後藤芳光氏の嘆き(前)

softbank2 ソフトバンク(株)の孫正義社長は5月11日の決算記者意見の席上、グーグルから引き抜いたニケシュ・アローラ氏(現・ソフトバンクバイスチェアマン)を6月の株主総会後、副社長に起用する人事を明らかにした。「後継者ということか?」と尋ねられて、孫氏は「答えはイエスです」と即答。慎重に言葉を選びながらだったが、「事故にでも遭わない限り、彼が最も重要な後継者候補であると明らかにしたい」。そんな孫氏のプレゼンテーションと記者とのやりとりを、苦虫をかみつぶしたような表情で聞いていた男がいた。ソフトバンク取締役で、ソフトバンクホークス社長兼オーナー代行の後藤芳光氏である。

 決算記者会見で、後藤氏は、孫氏やアローラ氏の後ろの席に座っていた。孫氏がアローラ氏を持ち上げ、彼を後継者指名し、さらに将来の構想を滔々とまくしたてるにつれ、後藤氏の表情は次第に険しくなっていった。

 ソフトバンクは、孫氏に唯一面と向かって意見を言えたナンバー2の笠井和彦氏(ソフトバンク取締役最高財務責任者兼ホークス代表代行)が2013年10月に急逝した後、新たな経営体制をつくろうと翌14年6月、財務部長の後藤氏と、携帯電話事業を主に担ってきた藤原和彦氏の両名を取締役に抜擢したばかり。それなのにアローラ氏を副社長に引き上げると同時に、後藤氏、藤原氏の両名は取締役を降格。創業直後からの腹心の宮内謙副社長は副社長職を解かれ、平取締役になるというのだから面白いはずがない。後藤氏は、たった1年で取締役の任を解かれる。

 詰めかけた記者の1人が怪訝そうな面持ちで聞いた。「後藤さんと藤原さんの退任はどういう意味があるのですか?」。孫氏はこともなげに答えた。「ソフトバンクグループとして世界の戦略を練るうえで経営陣の強化がなされないといけません。世界をにらんだステージに変えようと任務を交代しました」――。

 ソフトバンクは1月、通信子会社4社を合併してソフトバンクモバイルに統合したばかりだが、宮内氏はこのソフトバンクモバイルの社長になり、後藤氏と藤原氏も同じくソフトバンクモバイルの経営に専念することになった(そのうえで7月、今のソフトバンクがソフトバンクグループに、ソフトバンクモバイルがソフトバンクにそれぞれ商号変更する)。世界戦略を練るうえで後藤氏(と藤原氏)は役不足、グループ全体の統括機能の持ち株会社の取締役から離れ、国内市場を相手にした通信事業を担ってもらう――。孫の「任務を交代」という台詞は、あまりにも苛酷であった。全世界に、「後藤は役不足」と発信したようなものだからである。

(つづく)

【経済ジャーナリスト・神鳥 巽】

 

(後)

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