2024年04月25日( 木 )

「飯塚×ゆめタウン」「小郡×コストコ」進出の影響いかに(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

飯塚市

かつての炭都・飯塚、その栄枯盛衰──

 飯塚市は、福岡県下4位の人口(12万6,118人/22年5月末現在)を擁し、筑豊エリアの中心的な役割を担う都市だ。5市8町(直方市、田川市、筑紫野市、宮若市、嘉麻市、桂川町、小竹町、篠栗町、須恵町、宇美町、筑前町、糸田町、福智町)と多くの自治体と境界を接する214.1㎢の市域のほぼ中央部を遠賀川が流れ、遠賀川沿いを中心に市街地を形成。市内にはJR九州の3線(筑豊本線、篠栗線、後藤寺線)が通り、計11駅(飯塚、浦田、上穂波、上三緒、九郎原、新飯塚、筑前内野、筑前庄内、筑前大分、天道、鯰田)を擁するほか、国道200号・201号・211号などの幹線道路も充実しているが、高速道路は通っていない。

 古くは江戸期に長崎街道が通り、2つの宿場町(飯塚宿、内野宿)が置かれたことで、宿場町周辺や街道筋を中心にまちは発展。その後、近世・明治期に入ると、飯塚を中心とした筑豊地域一帯は、国の基幹産業となった石炭産業で日本経済の成長を支えた。飯塚でも全国各地から多くの炭坑労働者が移住して人口が急増。炭鉱労働者の疲れを癒すために甘い菓子が好まれたことで数々の菓子舗や銘菓が生まれたほか、嘉穂劇場をはじめとする多くの劇場や映画館などの娯楽産業も栄え、飯塚は「炭都」としての栄華を極めた。

 その後、戦後の復興期においても筑豊地域から算出される石炭が寄与していたものの、1955年以降は石炭から石油へのエネルギー革命とともに石炭産業が衰退。炭鉱の閉山によって、飯塚市では急激な過疎化が進んでいった。
 現在では、近畿大学や九州工業大学のキャンパスを擁する学園都市としてのほか、研究開発と産業振興の拠点が集積する情報都市としての性格も帯び、ベンチャー企業の育成などの「産・学・官」の連携によるまちづくりを推進。炭都の頃の勢いは失われてしまったものの、筑豊エリアの中心都市としての地位はいまだ健在だ。

JR飯塚駅
JR飯塚駅

ゆめタウンの周辺開発、都計変更含め「まだこれから」

 その飯塚市に、新たにゆめタウンが開業する。飯塚市にとっては、1994年10月開業の「イオン穂波ショッピングセンター」(旧・ジャスコ穂波店/以下、イオン穂波SC)や、2003年11月開業の「あいタウン」以来の大型商業施設の誕生とあって、その開業による交流人口の増加や、雇用創出、地域経済の活性化などへの寄与が期待されている。

 とくに気になるのは、ゆめタウン周辺への影響だ。ららぽーと福岡の場合は、青果市場移転にともない、卸業者の物流倉庫などの関連する施設も移転して空土地が生まれ、周辺エリアでも新規分譲マンションをはじめとした土地開発が活発化していった。今回のゆめタウン飯塚も卸売市場の跡地に開発されるとあって、条件的にはららぽーとのときと似通っている。ところが、既存建物の解体工事が進む卸売市場跡地を除けば、現状は周辺でとくに目立った開発の動きは見られない。

 この点について、飯塚市の不動産会社・(有)坂口不動産の坂口隆社長は、「卸売市場の周辺は、もともと卸倉庫などの関連施設が集積していたわけでもなく、卸売市場が移転したからといって空土地ができて開発が進む、というような場所ではありません。そもそもJR飯塚駅前にあたる菰田・堀池地区は、炭鉱全盛期には飯塚の玄関口として栄えていましたが、その後は次第に寂れていき、現在は市内でも人口減や高齢化が顕著なエリアとなっています。ゆめタウンを起爆剤として再開発が進むことを期待したいですが、市の都市計画変更などもまだこれからですし、そうすぐには進まないでしょう」と話す。

 飯塚市でも18年12月に「菰田・堀池地区活性化基本方針」を策定したほか、今年3月には「飯塚駅周辺地区整備基本計画」を策定。今後、飯塚駅の駅舎や自由通路を含めた駅前広場の再整備や、交差点改良を含めた道路整備などを進めていくとしている。こうした整備の進行とともに、ゆめタウン周辺エリアでも新規の開発が活発化していくことが期待されている。

 飯塚市の不動産会社・(株)ダイドー不動産の松本英作社長は、「福岡都市圏の地価上昇により、JR福北ゆたか線沿線で土地探しをする方は増加傾向にありましたが、ゆめタウン飯塚の進出決定でそれは加速しています。とくにここ2~3年、飯塚駅からは40分程度で博多駅まで移動できるため、通勤圏として検討する方は増えてきている印象です」と話す。

 また、これまで飯塚市内で2棟94戸の分譲マンション供給実績がある、(株)シフトライフの樋口由紀夫社長は、「当社では2016年、ゆめタウン飯塚の開業予定地にも近い飯塚市堀池で分譲マンションを供給させていただきましたが、福岡市が通勤圏にある飯塚市は、非常にポテンシャルがあるまちという印象です。ご縁あって、現在はJR飯塚駅の東側で50戸前後と、さらに堀池エリアでも50戸前後の分譲マンションを企画しているところです。ゆめタウン飯塚も近く、発展が期待されるエリアだけに、付加価値の高いマンションを開発することで、地域貢献につなげていきたいと考えています」と話し、ゆめタウン開業を契機とした周辺エリアの発展に期待の声を寄せている。

 現状はまだそれほど進んでいないものの、今後、ゆめタウン周辺での開発が活発化していく可能性は大いにありそうだ。

【坂田 憲治】

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事