2024年04月26日( 金 )

「飯塚×ゆめタウン」「小郡×コストコ」進出の影響いかに(前)

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飯塚市

共存共栄?競合?既存商業施設への影響

 一方で、ゆめタウン飯塚の開業による、市内の既存商業施設への影響も気になるところだ。ゆめタウンのような大型商業施設の特徴として、市外などの広域からの集客が期待できる反面、市内の他商業施設の客足を奪ってしまうことも懸念される。

 この点について、飯塚商工会議所・商工振興課長の下原健司氏は、「たしかに、ゆめタウン進出による地場の商業施設の集客減などの影響は、大なり小なり想定されています。ただし、影響は懸念されるにせよ、『(ゆめタウンが)近隣の他自治体にできるよりは、飯塚市内にできてもらったほうが良い』との見方が多いように思います」と見解を述べる。

 今年4月26日に開催された「第1回飯塚市周遊商業エリア連絡協議会」の資料では、ゆめタウン飯塚のほか、中心商店街、イオン穂波SCなどとの連携イメージ図を提示。ゆめタウン飯塚の周辺を「多世代の交流と最先端技術の集結による魅力を創造するエリア」と位置付けるほか、中心商店街を「コミュニティと伝統、子育て・教育エリア」、イオン穂波SC周辺を「商業と健幸の拠点エリア」などと位置付け、各エリアの連携によって、市の中心部に人を呼び込み、賑わい創出や地域活性化へとつなげていきたい考えを示している。だが、異なる商業施設同士の連携がどれだけ機能するのかには、疑問符も付く。

連携イメージ図
連携イメージ図

 ゆめタウン飯塚から穂波川を挟んで北側の対岸に位置し、約300mと距離的にも近い中心商店街では、従前より飯塚市自体の人口減に合わせて人口減が進み、商店街内の歩行者通行量や来街者も減少傾向で推移。21年度の空き店舗率は27.0%と、全体の約4分の1が空き店舗となっており、シャッター通りの様相を呈している。

 5つの中心商店街(本町、東町、吉原町、昭和通、新飯塚)で構成される飯塚市商店街連合会の林和久会長は、「高齢者の多い飯塚市では、皆さまの日常の買い物の場としてだけでなく、人と人との交流の場としても、商店街はなくてはならない場所です。ゆめタウンはどちらかといえば、子育て世代などの若い客層がターゲットですから、その点で商店街との棲み分けはできると思っています。穂波川を挟んで距離的にも近いですから、何かしらの連携を行って相乗効果を発揮しながら、一緒に飯塚のまちを元気にしていきたいですね」と、何とか共存共栄の道を探っていきたい考えだ。

中心商店街の1つ「本町商店街」
中心商店街の1つ「本町商店街」

 一方で、中心商店街よりも深刻な影響が懸念されているのが、前出のイオン穂波SCだ。そもそもゆめタウンとイオンは、ともに近い性質をもった大型商業施設同士であり、入居するテナント構成も似通っている。飯塚市に限らず、各地で熾烈な集客合戦を繰り広げている、いわばライバル関係といってよい。ゆめタウン飯塚とイオン穂波SCの場合は、間に穂波川を挟むとはいえ、その距離は約1kmしか離れておらず、商圏は完全に重なっている。仮に“ガチバトル”となった場合は、店舗面積や駐車場台数で上回るうえ施設として新しく、しかもシネコンという強力なコンテンツを備えているゆめタウン飯塚のほうに軍配が上がって然るべきだろう。

 「ゆめタウン飯塚とイオン穂波SCとの競合は、おそらく避けられないでしょう。場合によっては、イオン穂波SCが撤退を決断する事態も起こり得るかもしれません。ただ、イオン穂波SCも、周辺住民にとっては欠かせない生活利便施設の1つです。できればうまく棲み分けしてもらえれば、というのが本音です」(前出・下原課長)。

イオン穂波ショッピングセンター
イオン穂波ショッピングセンター

JA新施設やバイパス拡幅、地域浮揚なるか飯塚

 飯塚市内ではほかに、JAふくおか嘉穂による複合型ファーマーズマーケット「KAHO TERRAS(カホテラス)」の開発が、今年11月の開業を目指して進んでいる。約4万1,700m2の敷地に、JAの農産物直売所のほか、ドラッグストアや和食レストランなどのテナントを備える同施設は、前出の連携イメージ図でも「食と快適空間を彩るエリア」と位置付けられており、ゆめタウンとは違ったかたちで、飯塚活性化への寄与が期待されている。

建設中の「カホテラス」
建設中の「カホテラス」

 大型商業施設ではないが、「八木山バイパス」の4車線化に向けた整備の進行も、飯塚市の活性化に向けて期待が寄せられている動きの1つだ。飯塚市と福岡都市圏とを結ぶ八木山バイパスは、飯塚市にとっては最重要な交通インフラの1つであるが、片側1車線しかないことによる脆弱性が問題視されていた。それを解決すべく、国交省が19年3月に4車線化(片側2車線化)の整備を認可し、翌20年4月に整備が着工。4車線化の開通は、篠栗IC~筑穂IC間で24年度、筑穂IC~穂波東IC間で29年度を目指している。

 JA新施設やゆめタウンの開業、八木山バイパスの4車線化完了、さらには本誌39号(21年8月末発刊)で取り上げた「福岡市地下鉄空港線」と「JR福北ゆたか線」の接続に向けた動きなど、明るいニュースはいくつも控えている。これらを契機にいかに地域浮揚に結び付けられるかが、飯塚市にとって今後問われてくるだろう。

【坂田 憲治】

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