2022年08月20日( 土 )
by データ・マックス

アマゾンの創業社長ジェフ・ベゾス氏が全米の土地を買い漁るワケは?

 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、7月1日付の記事を紹介する。

アメリカ 農地 イメージ    新型コロナウィルスが蔓延し、ここ3年間は世界的にロックダウンなどで経済活動が大幅に制限されていました。しかし、そうした厳しい状況下、飛躍的に業績を伸ばした企業の代表が1994年創業のアマゾンです。在宅勤務や巣篭もりライフスタイルが広がった結果、オンライン・ショッピングが急増したことが追い風になったことは否定のしようがありません。

 コロナが猛威を振るう前からアマゾンは同業他社を圧倒し、世界最大のネット・ショッピング網を確立していました。その立役者といえば、坊主頭が売り物のジェフ・ベゾス氏です。

 2017年7月にはマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏を抜いて世界1の大富豪に登りつめました。そのとき、ベゾス氏の資産は900億ドルを越えたのです。その後、2021年、資産額世界1の座を電気自動車「テスラ」のイーロン・マスク氏に譲り渡すことになりましたが、その差はわずかです。いつ逆転劇が起きても不思議ではありません。

 マスク氏は電気自動車以外にも宇宙ロケットの打ち上げ会社「スペースX」をNASAのお抱え企業に仕立て上げましたが、ベゾス氏も負けじとばかり「ブルー・オリジン」という宇宙船会社を立ち上げ、宇宙旅行ビジネスにも熱心に取り組んでいます。

 さて、ベゾス氏は27年かけて育て上げたアマゾンのCEOを2021年春、退任し、今では会長職に収まっています。この間、アマゾンを1.7兆ドルの巨大企業に大躍進させたわけです。世界19カ国にプライム会員1億5,000万人を擁するまでになりました。ネット通販ビジネスの隆盛を背景にアマゾンの株価は急騰を続け、ベゾス氏の個人資産も1,990億ドルにまで膨れ上がっています。

 ベゾスのモットーは「失敗しても、やらなかったことを後で後悔するよりマシだ」というもので、祖父から学んだ生き様に他なりません。「Why ?」と自問するのではなく、「Why not ?」と、進んで挑戦するのが彼の流儀です。

 当初、ベゾスが新たな顧客とビジネスの打ち合せをするのはシアトルの自宅兼事務所の側にあった大手書店「バーンス・アンド・ノーブル」でした。待ち時間にも売れ筋の本を見定め、お客の行動パターンを観察できたため、一石二鳥だったようです。徐々にですが、アマゾンは全米50州のみならず、世界45カ国に書籍を販売するシステムを確立しました。

 1997年5月には上場をはたしたのです。ベゾスの挑戦はそこで終わりませんでした。最初は書籍に限っていたのですが、徐々に販売する商品を拡大し、「想像できるものは、すべて扱う」という大方針を打ち出したのです。日用品、洋服やゲームのアプリはもちろん、クラウド・コンピューティングのサービスまで事業を拡大して、今日に至っています。

 その間、ベゾス氏はネット通販ビジネスに限らず、2013年8月には有力紙「ワシントン・ポスト」を2億5,000万ドルで買収し、さらには有機食材の育成と販売のトップブランドである高級スーパーマーケットの「ホール・フーズ」を137億ドルで買収しました。こちらは2017年8月のことです。しかも、アマゾン・プライムの会員には「ホール・フーズ」での買い物が10%割引でできるという特典を付けています。いわば、ネットと紙媒体や生の食品販売現場との融合を図る戦略に他なりません。

 というのも、トランプ元大統領は「アマゾン・ワシントン・ポスト」と呼んでは、「ワシントン・ポスト」紙を目の敵にしていました。トランプ氏は得意のツイッターで「ベゾスの新聞はフェイクニュースばかりだ」とこき下ろしました。すると、ベゾスは「あんな大統領は地球に要らない。俺のロケットで宇宙に放り出してやる」と反撃するのが常でした。

 アマゾンのCEOを下りた直後のインタビューで、ベゾスは意気揚々と話しています。曰く「CEOの職務からは解放されたが、アマゾンの重要事項には関与し続けるつもりだ。それ以上に、これまで十分にエネルギーを割けなかった『デイワン・ファンド』『ベゾス地球ファンド』、それに『ブルー・オリジン』や『ワシントン・ポスト』を強化したい。他にも、やりたい事業がたくさんある。どんどんやっていくつもりだ。正直言って、これまでの人生で今ほどエネルギーが湧き上がってきたことはない。引退などはあり得ない」。

 そんなベゾス会長がこの数年、力を入れているのが土地の買収です。過去2年間だけで22億ドルを投入したと言われていますが、実際はもっと多いと見られます。南カリフルニアからテキサス、イリノイ、フロリダに至るまで、それ以前と比べると所有する土地の広さは3倍に膨れ上がっているほどです。もちろん、倉庫や配送センターの数を増やせば、ネット注文でもこれまでの2日以内の配送が5時間以内となるわけで、アマゾンへの注文は飛躍的に拡大するでしょう。

 注目すべきはホール・フーズなど傘下の企業で新鮮な食材、とくに野菜や果物類を扱うようになり、その販売モデルが未来志向である点です。何かといえば、店内に配置した数千台の監視カメラによって顧客がカートに商品を入れた瞬間に課金されます。そのため、レジで支払いをする必要がありません。こうした買い物の利便性を追求する実験場のようなスーパーを全米に広げることを狙っているわけです。

 実は、ビル・ゲイツ氏も全米で農地の買収に熱心に取り組んでおり、今では個人の農地所有者としては全米1となりました。これからの食糧不足の時代を見据え、その生産拠点や種子を押さえようとするゲイツ氏。そして、その販売拠点を我がものしようと目論むベゾス氏。どうやら2人は意気投合しているようです。

 次号「第302回」もどうぞお楽しみに!


著者:浜田和幸
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