2024年05月16日( 木 )

韓国の対中貿易収支が赤字に、貿易戦線に異常の兆し(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

韓国にとって貿易とは

韓国 貿易 イメージ    韓国は天然資源に恵まれておらず、貿易への依存度が高くならざるを得ない。韓国(朝鮮)戦争後の経済状況は、産業インフラは未整備で、原材料も常に不足していたので、貿易収支は当然ながら赤字だった。

 そうした状況下、韓国にとって輸出は至上命題となった。朴正照大統領はクーデターで政権を取った後、韓国経済を立て直すため、「経済開発5カ年計画」を立案し、韓国経済の基礎づくりに取り組んだ。

 「貿易立国」という旗印のもとに、政府と企業が力を合わせて輸出を目指す産業政策にまい進し、韓国は1986年に初めて貿易黒字を記録。その後、韓国の貿易収支は、98年から2021年までの間、世界金融危機が起こった08年を除けば、ずっと黒字だった。

 1960年代半ば頃の韓国は、国民1人あたりのGDPは65ドルくらいで、北朝鮮やフィリピンよりも劣っていた。しかし、その後、「経済開発5カ年計画」で目覚ましい発展を遂げ、今では世界10大貿易国の仲間入りをしている。

 昨年貿易額が1兆ドルを上回った10大貿易国のなかで、貿易黒字を記録したのは韓国、中国、ドイツ、オランダの4カ国のみだった。韓国の貿易が現在のように成長できた理由として、「世界の工場」である中国の存在が挙げられる。中国が世界2大経済大国に成長するなかで、韓国はその恩恵に預かったわけだ。中国への輸出額は、現在他国を圧倒し、全輸出の4分の1を占めるほどになった。韓国は中国を相手にずっと多額の黒字を記録してきたが、先月から対中貿易収支が赤字に転じ、韓国経済の先行きに対して不安が増している。

対中貿易が赤字に転落

 中国との貿易が本格化したのは、中韓国交樹立後の92年8月からだ。国交樹立翌年の93年(12億ドル)に中国との貿易で黒字を記録した後、2021年までの間、ずっと韓国は対中貿易収支において黒字を記録してきた。ところが、最近になって中国との貿易黒字額が段々縮小し、ついに貿易収支が赤字に転落したのだ。

 韓国の対中貿易収支は、5月には10億9,900万ドルの赤字、6月には12億1,400万ドルの赤字を記録した。このように対中国の貿易収支において赤字となったのは、1994年8月以来初めてのことである。韓国が29年間中国に輸出した金額の合計は10兆1,466万ドルで、年平均成長率は7.6%であった。一方、中国からの輸入額の合計は9兆3,248億ドルで、年平均成長率は7.2%だった。しかし、中国も技術力が向上し、韓国から輸入せずとも自国で調達できるようになった品目が徐々に増えているのも事実で、現在の状況はある意味ではすでに予想されていた結果かもしれない。

 いずれにせよ、中国は今でも韓国の最大の貿易相手国だし、貿易黒字の多くは中国との貿易で占められている。中国への輸出は全輸出の4分の1を占めているし、黒字額のなかで中国の比重は86.0%に達しており、韓国経済は中国への輸出でいかに潤ってきたかが如実にわかる。

 そのような貿易相手国である中国であるが、ユン大統領になってからは、2カ月連続対中貿易収支が赤字を記録するようになった。このようになった要因の一つに中韓FTAを挙げる専門家もいる。中国とFTAを締結後、韓国の輸出は0.1%伸びた反面、中国からの輸入は18%も急増し、貿易収支赤字の原因となっている。その他にも米中衝突をはじめ、中国の技術力アップ、中国が半導体立国を目指していることなど、さまざまな要因があり、中国への輸出が今後再び回復するという見込みはない。韓国のディスプレイ、船舶、鉄鋼、造船などでは、すでにそうした兆しがある。

(つづく)

(後)

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