2024年04月28日( 日 )

【福岡IR特別連載91】長崎IR、予測以上に早かったハウステンボスの「転売墓穴」

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 昨日、読売新聞が「HISが香港の投資会社へハウステンボス売却…」と報道している。また、全国の報道機関も一斉にこれを伝えている。長崎IRは、完全に「大きな墓穴」を掘ってしまった!

ハウステンボス イメージ    筆者は、本編87号以後、HISによるハウステンボスの転売問題を可能な限り、具体的に予測し、解説してきた。しかしながら、こんなに早く結果が出るとは予想外であり、驚きである。澤田氏の手腕とその素早さに敬服する次第だ!まさに”背に腹はかえられない"問題である。

 この国の行政を含めた組織人、コンプライアンスにガバナンス症候群のサラリーマン重役諸氏とは訳が違う、素早い決断である。

 ただし、このハウステンボス転売問題は、いろいろな見方ができる。

 まずは、筆者が予測し、解説してきたように、長崎県行政と議会は完全に無視され、完全にハシゴを外されたかたちでの今回の結果なのかということである?「多分、そうだろう」というのが筆者の主たる見方である。

 または、長崎県行政と議会の一部と、九州電力、西部ガス、JR九州の福岡財界関係者の一部は、事前にこれらを認知し、すでに内諾済みなのか?

 なぜなら、各社の報道では、HIS所有の株式(67%)のみならず、彼らが所有する株式(33%)まで、すでに売却合意済みと伝えているからだ。

 さらに、HISとCAIJ(カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン)と今回の香港投資企業(買主)は、当初から全員“グル”で、水面下では、すべて、これらの話が事前についていたのか?などの疑問が残るのだ。

 各報道機関は、この疑問を九州電力などに早急に確認すべきである!

 なぜなら、筆者は以前から、昨年長崎県による本件公開入札時(香港中華系からの入札時の公正性を問う疑惑訴訟問題)以降に、CAIJは難航する資金調達を解決するために、こともあろうに、その時点で外された香港の中華系2社に接触し、彼らに資金調達の依頼を要請したという"噂"がまことしやかに流布しているのだ。

 もう、“味噌もクソも一緒"の泥沼化していた当時の環境ゆえである。HIS側が憶測で勝手に「福岡財界側も同様に株式を手放すだろう」と言っているのかもしれないが、それは考え難い。もし、事前に彼らの了解・合意済みならば新たに別の問題が発生する。

 この後に、長崎県行政がこれらの結果を折り込みずみとして、HISと記者会見でもしたら、これらは県民に対する背任行為であり、世間に対する裏切りとなる。行政の公開入札疑惑も重なり、IR関連法に抵触する可能性も出てくるのだ。

 すでに解説しているように、当該地管轄の長崎県行政は、毎日新聞による県に対するCAIJとの基本協定書およびコミットメントレターなどに関する「公文書開示請求」、併せて、長崎市民からの今後の外注費用1億円に対する「監査請求」などへの回答に一切応じていない。

 しかし、もしかしたら、この基本協定書等の内容は、これらの諸条件や転売問題も予想し、すでに記載されているからこそ、公開できないのかもしれない。こう考えれば辻褄が合う話となる。しかし、もし、こうした高い能力と戦略があれば、今回のような突然の片手落ちのお粗末な報道にはなってはいないだろう。来月の早い機会に長崎県行政とHISが共同で記者会見し、長崎IRの誘致開発中断を公に告知すべきことなのだ。

香港投資企業の買収は、IRの完全崩壊を意味する

 前述した昨年の長崎県による本件公開入札問題は、香港に本社がある中華系のカジノ開発投資企業「オシドリ・インターナショナル・ディベロップメント」と同じ香港に本社がある中華系「ニキ チャウフーパークビュー」の2社を県行政が、自身の落ち度を隠し、恣意的にこれら中華系を外し、止むなく、現在のCAIJ(欧州企業)を選択し、落札者としたものである。

 いまだ、この県行政の入札訴訟問題は決着がついていない。この顛末を簡単に解説すると、長崎県行政とその関係者は、近年の"米中覇権争い"による我が国政府の「日米経済安全保障問題」に、気付くことができず、当初はこの香港中華系の2社のいずれかを落札者とすることになっていたのだ。要するに、両社に巨額な準備費用を使わせておいて、結果はドタキャンし、納得のいく説明がないままの状態が現在も続いているのだ。

 こんな長崎IRの環境下でのHIS主導の「ハウステンボス売却」は予想通りではあるが、公には大変な”片手落ち”である。

 先に報道されて困惑しているのか?または、あえて、HIS自らが恣意的に外に出しているのか?これらは定かではないが、来月には何らかのかたちで公の記者会見を長崎県行政とHISが共同で実施すべきである。

 すでに、県行政とHISは、タダ同然で手に入れた本件隣接地(HTB所有地)を約200億円で本件IR事業者に売却するという約束をしているのだ。従って、今回のハウステンボス売却にはこれらを含むのか?含んでいないのか?など、さらに、コンセプトなどを連動させている長崎県行政と議会が進めてきたIR誘致開発事業の根幹の話でもあるのだ。

 いずれにしても、今回のハウステンボス売却は本件IR事業の「崩壊」を意味するもので、購入者の本社が中国本土にある香港に本社がある企業ならば、なおさら、前述の「日米経済安全保障問題」に関わり、蚊帳の外の話となるのだ。

 重ねて説明するが、この長崎IR問題は、当初から問題だらけで、お粗末過ぎて解説しようがない。報道の通り、福岡財界関係者およびその株式の全部が香港本社の次期ハウステンボス運営社に移れば、大多数の福岡財界の組織人たちは、一部の財界人に忖度する必要がなくなるので、福岡IRの本格的な出番が早々にくるだろう。

【青木 義彦】

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