2024年04月25日( 木 )

民主主義は特定価値観強要しない

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は「岸田首相は国葬実施方針を撤回するべきだ」と訴えた7月22日付の記事を紹介する。

岸田文雄首相の誤判断。

安倍晋三元首相死去にともない、岸田首相は国葬を執り行う方針を示した。

しかし、国葬を定める法令が存在しない。

内閣法制局は内閣府設置法を根拠に国葬を実施できる考え方を岸田内閣に伝えたとされるが、正当な法解釈でない。

7月17日付ブログ記事
「国葬を規定する法的根拠なし」
https://bit.ly/3Pzt0vM

に既述したように、内閣府設置法は国葬に関する法的根拠ではない。

内閣府設置法の条文は以下のもの。

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、内閣府の設置並びに任務及びこれを達成するため必要と
なる明確な範囲の所掌事務を定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的
に遂行するため必要な組織に関する事項を定めることを目的とする。

(任務)
第三条 内閣府は、内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けることを任務と
する。

(所掌事務)
第四条 内閣府は、前条第一項の任務を達成するため、行政各部の施策の統一
を図るために必要となる次に掲げる事項の企画及び立案並びに総合調整に関す
る事務(内閣官房が行う内閣法(昭和二十二年法律第五号)第十二条第二項第
二号に掲げる事務を除く。)をつかさどる。

三十三 国の儀式並びに内閣の行う儀式及び行事に関する事務に関すること
(他省の所掌に属するものを除く。)。

内閣府設置法の規定は、

「国の儀式」の企画及び立案並びに総合調整に関する事務をつかさどることを(内閣府の)任務とする

ことを定めているに過ぎない。

何が「国の儀式」であるのかを定めるものでない。

国葬を「国の儀式」として執り行うのであれば、国葬を国の儀式とする法令を定める必要がある。

その法令があって初めて国葬は法的根拠を有することになる。

国葬の費用が税金で賄われる以上、国葬に関する法規定が必要である。

国葬の法的根拠が必要であることをかつて閣僚が国会答弁で明らかにしている。

日刊ゲンダイが伝えている。

https://bit.ly/3Pt4eOm

1967年の吉田茂元首相の国葬をめぐり国会で論戦があった。

国葬に予備費を支出したことについて、1968年5月の衆院決算委員会で社会党の田中武夫議員がこう発言した。

「そのときの内閣の思い付きによってやられるということには賛成しかねるわけなんです。

だから、今後はやはり1つの基準を設けるべきである、そのように思います。」

質問に対して水田三喜男大蔵大臣が次のように答弁した。

「国葬儀につきましては、御承知のように法令の根拠はございません。

(略)私はやはり何らかの基準というものをつくっておく必要があると考えています。

(略)私はやはり将来としてはそういうことは望ましいというふうに考えています。」

「国葬についての法的根拠は存在せず、今後、国葬を実施する場合に備えて何らかの基準、すなわち、法的根拠を備えることが必要である」

ことが当時の大蔵大臣から答弁されている。

このことに関連して、7月21日、安倍元首相の国葬に反対する市民グループのメンバーなど50人が、国葬を実施しないよう、国葬に関する閣議決定と予算の執行をしないことを求める仮処分を東京地方裁判所に申し立てた。

市民グループは

「安倍氏については森友・加計学園や桜を見る会の問題など数々の疑惑が取り沙汰され、国民の評価が分かれている。

『国葬』を行い、国民を強制的に参加させることは憲法で定められた思想・良心の自由に違反する」

と主張している。

正当な主張だ。

世論調査結果でも、国葬に賛成する国民と国葬に反対する国民が拮抗する状況が伝えられている。

岸田首相は間違った判断を撤回し、国葬実施を断念すべきだ。

仮に国葬を強行すれば、これを契機に岸田内閣が衰退に向かう可能性が高い。

※続きは7月22日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「民主主義は特定価値観強要しない」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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