2024年04月26日( 金 )

世界に誇り得る縄文文化にハマった時~「縄文道」講演(後)

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(一社)縄文道研究所 代表理事 加藤 春一 氏

 日本学ユニバーシティ(JU)が主催する日本文化の源流「縄文道」講演の第1回目として、「世界に誇り得る世界最古の縄文文化にハマった時」というテーマで、(一社)縄文道研究所代表理事・加藤春一氏によるオンライン講演が7月21日に行われた。加藤氏は、「縄文道は今の日本の在り方に大きく影響しており、日本復元のカギになります」と語る。

世界最古級の縄文土器(続き)

縄文土器 イメージ    世界最古級といわれる縄文土器は、草創期の約1万6,500年前の大平山元遺跡から出土しており、煮炊き用に使われていた。宇宙物理学者の池内了氏は著書の『30の発明からよむ日本史』のなかで日本の画期的な発明として、食生活を一変させた縄文土器を挙げている。

 縄文土器は火と土と水の結晶であり、縄文人に高いレベルの知性があったことがうかがわれ、時代によって、そのかたちを変えている。縄文時代早期(約1万1,500~7,000年前)には、底が尖った尖底深鉢土器が出現する。尖底土器は土器を炉に立てかけたり、周りを石で支えたりして使ったと考えられている。前期(約7,000~5,500年前)になると、平底の深鉢形土器が一般的になる。底が平らのため、竪穴住居内の煮炊き用に使われた。

 中期(約5,500~4,400年前)は最も縄文文化が栄えた時期で、取っ手の装飾が燃える炎のように見えることから名づけられた火焔型土器が出現する。粘土に鉱物や繊維を混ぜ、低温で焼くため、複雑な造形をつくることができるようになった。縄文遺跡として世界遺産に登録された青森県の三内丸山遺跡も、この時代の遺跡だ。後期(約4,400~3,200年前)になると、急須のようなかたちをした注口土器が一般化した。晩期(約3,200~2,400年前)になると、土器の厚さが全体的に薄くなり、大きさも小さくなり、土器の装飾に日本列島の東西で明確な差が出てくる。

 縄文土器の「技術の道」は、弥生土器や古墳時代の土器を経て、現代の陶器、磁器、そしてセラミックという素材産業につながっていった。とくにセラミックを原料とする最先端の半導体は宇宙船・ハヤブサのような宇宙航空産業、AI、ロボット産業、さらに最先端の医療産業にも使用されている。現代の陶器や磁器などのセラミックに受け継がれ、最先端の半導体、航空機エンジンの開発へとつながっている。多くの陶磁器メーカーがある愛知県から、日本ガイシ(株)などの企業が生まれ、セラミック技術を生かした製品を世界中に輸出している。半導体は土器、陶器、磁器の原料であるカオリン(アルミナとシリカが中心)から、シリカのみ(二酸化珪素)を抽出して高度に純化した素材からできている。

縄文人の独創性から生まれた文化

 旧石器時代・縄文時代に世界最古級の事例が多いのはなぜだろうか。旧石器時代には、世界最古級といわれる磨製石器が約3万8,000年前の群馬県の岩宿遺跡から出土している。2万7,000年以上前の静岡県の愛鷹山麓の旧石器遺跡では、動物を捉えるために使われたと考えられている約2mの深さの落とし穴が60基も見つかっており、世界最古の落とし穴の可能性がある。沖縄の洞窟では、約2万3,000年前のものとみられる巻貝からつくられた世界最古の釣り針2個が発見された。縄文時代には、約1万6,500年前の青森県の大平山元遺跡から、世界最古級の縄文土器のかけらが見つかっている。また、約9,000年前の北海道の垣ノ島遺跡からは、世界最古の漆製品が出土している。

 縄文文化からわかるのは、縄文人はゼロからモノをつくり出せる創造性があるということだ。加藤氏は、「日本人は加熱用の調理器具を世界で最初につくった、世界最初の料理人ではないだろうか」と語る。縄文人のモノを創造する力は、日本の地理的条件や風土から生まれた。日本は海に囲まれ、ユーラシア大陸から離れた島だ。加えて、四季があり、面積の約70%が森林であり、多くの河川や湖、沼があって水資源が豊富で、水場に近いところに、多くの縄文文化が栄えた。

 加藤氏は「縄文文化の独創性は、日本史のなかで現代まで脈々と基層に流れています。第二次世界大戦敗戦後の奇跡の高度経済成長期を経て現在まで生き続けています。約30年、停滞を続けている日本ですが、約1万4,000年続いた縄文文化には歴史学者の故・梅原猛氏がいわれるように、環境適応力、日本化力、そして復元力があります。従ってこの30年の停滞を打ち破り、独創力、起業家精神も復元すると確信します。温故知新で縄文の精神を未来に復元したいと考えています」と語っている。

(了)

【石井 ゆかり】


<プロフィール>
加藤 春一
(かとう・はるいち)
(一社) 縄文道研究所 代表理事・(株)APIコンサルタンツマネージングパートナー。1944年満州大連にて日本の陶祖 加藤藤四郎景正の末裔(23代)として生まれる。1968年上智大学経済学部卒業後 大手商社・日商岩井にて資源ビジネスに30年間従事。西豪州代表、ベルギー・ブリュッセル製鉄原料部門欧州代表、この間5大陸56カ国訪問。1998~2016年、東京エグゼクティブ・サーチ勤務(2000年から2008年まで社長)、世界のサーチファームITPグループ日本代表。2016年(一社)縄文道研究所創設 代表理事に就任。明治大学公開講座講師(2015年~)元上智大学客員講師。著書として、『能力Q セルフプロデュース』(ビジネス社)、『グローバル人財養成塾』(生産性出版)、『世界一美しいまち―オーストラリア‐パースへのいざない』(「国会図書館永久保存版」。

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