2022年08月20日( 土 )
by データ・マックス

再開発で生まれた 公開空地活用の現状

 昨年9月、天神ビジネスセンターが竣工した。今後も天神ビッグバンによる新しいビルが、天神の街中で竣工を控えている。アジアの拠点都市としての役割・機能を高め、新たな空間と雇用を創出するプロジェクト「天神ビッグバン」の詳細についてはほかのページに委ねるが、福岡市のHPによれば、その内容の1つに「ビル建替えに合わせた賑わい・憩い空間創出、広場、歩行空間、緑化」という項目がある。つまり、天神ビッグバンの恩恵を受けるためには、歩行空間をつくり、緑化をする必要があるのだ。

天神ビジネスセンター

福岡市HP内 天神ビッグバン紹介動画より

 当初の計画については、福岡市HPの天神ビッグバン専用ページ内の動画でうかがい知ることができる。この動画によれば、セットバックされた空間では緑化が進められ、花壇には色とりどりの植物が植えられている。芝生や池も見て取れる。通路には多くの人が行き交い、キッチンカーの出店もある。その空間はただ人が通過するためだけのものではなく、人がベンチに腰掛けてくつろいだり、食事したりとさまざまな活用が想定されているように見える。

天神ビジネスセンタービル
天神ビジネスセンタービル
天神ビジネスセンタービル
天神ビジネスセンタービル

    セットバックにより生じた空間の活用の現状について、天神ビッグバンを企画した福岡市都心創生課と建築主である福岡地所(株)に問い合わせた。曰く、「日常的に通行の用に供しているが、現時点ではコロナ禍でもあり、賑わいづくりの観点では活用できていない」とのこと。オープンした建物を実際に見ると、たしかに以前よりも歩道が広くなっていて歩きやすい印象はあった。また、建物東側の面は壁面緑化がされていた。しかし、それ以上の活用は見られなかった。これは、隣接するビル群が天神ビッグバンの影響でまだ建替え工事中であることも影響しているかもしれない。前述の計画は、ビル単体のセットバック空間だけでは実現できるような広さではなかったので、周囲のビルが完成した暁には、動画のようなセットバックを活用した空間になるのかもしれない。

 今後の計画については、「コロナの状況も見ながら、その活用方法も検討していきたい」(福岡地所)と回答した。

都ホテル博多

 天神ビッグバンには含まれないが、約1年半前の2019年9月にリニューアルオープンした「都ホテル博多」もセットバックを行った建物として、同様に取材を行った。

 都ホテル博多マーケティング部は同様の質問について、「博多まちづくり推進協議会とともに検討中」と回答した。博多まちづくり推進協議会とは、福岡県、福岡市を含め176の企業、学校、団体からなる組織(6月1日現在)で、コンセプトは天神ビッグバンに通じるものがある。

 都ホテル博多も協議会会員で、これまでのセットバックされた空間の活用実績として、開業直後の19年12月に、クリスマスコンサートを開催したことを挙げた。現在はコロナの影響もあり、積極的にイベントは開催しづらいとしながらも、地下1階の店舗「あら木」がその前のスペースにテーブルを設置し、三密回避のテラス席を設けるテスト活用を行っているとのこと。

 こちらもリニューアル前と比較すると、周辺の歩道は歩きやすくなっている。建物の形状的にも、圧迫感が緩和された印象を受けた。博多駅側にはバス停があるが、バス待ちの人が多いときは歩道がふさがり、歩きにくいときがあった。現在ではセットバックされた空間を歩くことができるので、困ることはほぼないだろう。また、筑紫口中央通り側は、以前は歩道に植木があり狭く、少し人通りの多いランチタイムだと歩きにくかったが、リニューアル後は、開放的な広さがあり、歩きにくさは感じなかった。地下鉄の入り口が直結されたことも、要因の1つだろう。

都ホテル

今後の活用は「検討中」

 取材を進めるうえで筆者が感じたことは、天神ビジネスセンター、都ホテルのどちらにおいても、セットバックされた土地の活用に苦労していることだ。苦労している最大の要因はコロナ禍だ。しかし、そこで思考停止してしまっていないだろうか。コロナ禍であっても、天神・博多ともに働いている人が多くいるため、何らかの活用は可能にも思われる。

 コロナの影響は、まだすぐには完全に解消されないことが予想される。また、すでに2年半近くがコロナ禍だ。残念だったのは、コロナ禍となって久しいにも関わらず、いまだに活用方法が「検討中」ということだ。

【外部ライター・奥野 晃市】

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