2024年03月29日( 金 )

数年後に実用化が期待される量子コンピューター(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

量子コンピューター イメージ    コンピューターは70年くらい前に開発され、現在私たちの生活に深く浸透している。コンピューターというと、キーボードとマウスがつながっていて、自分が何かを操作して動作させることを連想しがちだが、実は家のなかの家電製品もほとんどコンピューターなのだ。コンピューターはこのようにさまざまな場面で活用され、その活躍の場はますます広がっている。その結果、私たちの日常ではビジネス業務、分析や研究開発などの業務にコンピューターは欠かすことのできない身近な存在となった。

 ところが、このようなコンピューターに大きな変化が訪れようとしている。次世代のコンピューターと言われている「量子コンピューター」の開発をめぐって、激しい競争が繰り広げられているからだ。「量子コンピューター」という言葉は、量子コンピューターを使って最先端のスーパー・コンピューターでも1万年かかる計算をわずか数分で終えたという論文をGoogleが発表したことで世界を驚かせ、その後何かと話題となっている。

量子コンピューターとは

 IBMやGoogleが積極的に投資を行い、開発を進めていることでも知られる「量子コンピューター」とは、簡単にいえば「スーパーコンピューターを大幅に上回る処理速度をもつ、次世代のコンピューター」のことだ。量子力学という、従来のコンピューターとはまったく違う原理を採用することで、圧倒的な情報処理能力を有するとされている。量子コンピューターを使えば、従来型のコンピューターでは処理に時間がかかりすぎ、不可能だったことが、できるようになる。

 私たちが普段使っているコンピューターは「ビット」という単位を用いて演算を行うが、量子コンピューターは「量子ビット」という量子力学上の単位を使う。情報を扱う際、ビットでは「0と1のどちらの状態にあるのか」を基礎とするが、量子ビットでは「0と1という2つの状態」が同時に存在する「重ね合わせ」という概念を用いて、複数の計算を同時に進めることができるのだ。

 実際のコンピューターでは、0か1の状態を表すのに電圧をオン・オフで切り替えて行なっているのでわかりやすいが、一方、量子コンピューターの「重ね合わせ」という現象は、量子力学で明らかになった現象であり、目に見える世界で起こっている現象とは違ってそれを理解するのが難しいとされる。しかし、スーパーコンピューターは、その性能が良くなるにつれてますます複雑な計算に利用されているとはいえ、量子コンピューターとは比べられない。量子コンピューターはシミュレーションなど膨大な時間がかかる複雑な計算でも、実用に応じた速さで出来てしまうと言われる。

(つづく)

(後)

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