2024年06月23日( 日 )

Z世代時代の街力(まちりょく)~学園都市復権の道筋~(3)

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 2022年、今年の新卒は大学生活の半分をコロナ禍で過ごした世代といえる。新たな常識にも柔軟に対応しながら就職という大事な意思決定をした彼らは、社会人1年目の時点で変化の激しい時代を生き抜くリテラシーが身についている頼もしい存在ともいえるかもしれない。キャンパスへの通学を前提とされていた大学生活も、大きな変化を求められた。大学キャンパスとその周辺の街とは密接に関係し、かつて学園都市として隆盛した街も多い。これから学び舎と都市の関係はどのように進化していくのか、若者の象徴として語られるZ世代の取り巻く思想や属性、環境を通して学園都市の未来を考察してみたい。

人が“環境”を、“環境”が人をつくる

 私は住環境デザインを仕事としているので、築30~40年あたりの古いマンションの内装を見ることが多い。昔の間取りを解体し、今の暮らし方にリノベーションしていくとき、50年近く経つような古い空間に概ね共通するところに、「個室」の存在がある。6畳程度のしっかりした広さを持つ個室+収納。部屋と部屋の間に押入やクローゼットを挟んで音の伝播を防ぎ、部屋の独立性を保つ。キッチンやリビングは窓から離れても、個室はしっかり日の当たる南側へ。そんな個室尊位な空気感が漂う。

 1970年代は「子どもに個室を」「個性を重視」といった時代だった。新人類世代がちょうど小~中学生くらいだろうか。自己主張や個性が叫ばれた時期の彼らの眼には、個室は独自性を磨くための、さながら秘密基地のように映ったのではないだろうか。個人中心へと移り変わっていった時代の動向がうかがい知れる。環境は人の頭のなかから生まれるが、生まれた環境は次の世代の人格にも影響を与えていくのだ。

1970年代のマンション間取り例(センターリビング型)
1970年代のマンション間取り例
(センターリビング型)

    ちなみに令和時代においてのリノベーションの流行は、「個室の解体」だ。個室の名残は続いているものの、限られたキャパのなかで個室は最小限へ、寝られるだけの広さがあればいいと限界まで絞って、3畳程度の個室を設計したこともあった。収納は各室の分を集約させて、家族全体で使うウォークインクローゼットへ。余裕が出た分でリビングやダイニングを広く取っていく。幼少期の勉強はリビング学習をさせたいと、勉強机を個室に置きたくないとする親御さんも多い。近年では在宅ワークでもう1部屋欲しいというところだが、スペースに限りがあるマンションでは、書斎をつくることが叶わず、部屋の片隅にデスクエリアを設けるのがやっとのところ…といった具合だ。

人が“慣習”を、“慣習”が人をつくる

 環境だけでなく、慣習も人を変える。子どもたちの内側から発せられる感性も、社会の流れとともに我々大人がつくり出した外的慣習の影響が大きい。環境と一緒で慣習も人がつくるが、その慣習がまた人を創っていく。10年前にはなかった慣習として今やSNSによる影響力は、経済を反転させるほど大きな存在になった。発信されたものと受信されたものの、集合体が拡大し、雪だるま式に拡張していく。その影響力を得るため、企業や営業がすり足で近づいてくる。

_SNSで育った世代は次に何をつくるのか
SNSで育った世代は次に何をつくるのか

松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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