2024年05月20日( 月 )

県調査は全ルート赤字、地下鉄と福北ゆたか線の接続可否(前)

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概算事業費720~1,480億円で、時短効果は15~23分

 昨年6月の公募型プロポーザル方式での事業者募集の時点では、「実現可能性を勘案し抽出したルート案の中から6案の検討を行う」とあったが、今回公表された基礎調査の概要で提示されたのは、JR福北ゆたか線との接続駅をJR長者原駅(粕屋町)とする2ルートと、JR原町駅(粕屋町)とする2ルートの計4ルートだった。

 長者原駅は、福北ゆたか線(篠栗線)と香椎線との接続駅となっており、篠栗線用の島式ホームの上に、香椎線用の単式ホームが高架となってほぼ直角に立体交差する構造。篠栗線ホームの上部、香椎線ホームの横に橋上駅舎が設置されている。駅周辺には粕屋町役場や町立図書館などをはじめとした公共施設が集積しているほか、すぐ近くを幹線道路である福岡篠栗線が通っているが、篠栗線と香椎線の立体交差部に後付けで設置された駅であることから、住宅街のなかの少々わかりづらい場所に立地している。駅前にはロータリーがあるが、福岡篠栗線から駅に向かう交差点には信号機も設置されておらず、西鉄の路線バスも駅前には乗り入れていない。また、福岡篠栗線の沿線を中心として商業店舗が立ち並んではいるものの、駅前にまとまった商店街などは形成されていない。住宅街のなかにあるため、周辺住民などからの駅利用者はそれなりに多いうえ、篠栗線と香椎線との乗り換えには便利な駅ではあるが、外からはわかりづらく、周辺エリアの開発余地はあまり残されていない印象だ。とくに駅から福岡空港駅方面の南西方向に向けては、花ヶ浦(1~4丁目)や仲原などの住宅街が広がっており、長者原駅からどうルートを結ぼうとしても、用地取得や開発が難航するであろうことが想定される。

 一方の原町駅は、福北ゆたか線で長者原駅から博多方面に1駅行った隣駅にあたり、2駅の距離は約600m。相対式ホーム2面2線を有する地上駅で、互いのホームは跨線橋で連絡している。駅前にはロータリーがあり、福岡篠栗線から駅に向かう原町駅前交差点には信号機も設置されているが、西鉄の路線バスは駅前までは乗り入れていない。駅から南西方向にかけての仲原2~3丁目には同じく住宅街が広がっているが、長者原駅と比べると田畑なども多く、幾分かは開発余地がある。

 今回提示されたルート案では、長者原駅と原町駅からそれぞれ、地下鉄福岡空港駅までを最短距離で結ぶルートと、中間に新駅を2つ設置して迂回するルートの2パターンが示されており、長者原駅接続の最短距離が「Aルート」(新設区間約3.7km)、長者原駅接続の中間駅設置が「Bルート」(同約6.3km)、原町駅接続の最短距離が「Cルート」(同約3.2km)、原町駅接続の中間駅設置が「Dルート」(同約6.4km)となっている(図参照)。

発表された4ルート案および調査概要
発表された4ルート案および調査概要

 設置される中間駅のうち、「新駅1」は志免町南里付近への設置を想定しており、近くには大型商業施設「イオンモール福岡」がある。もう1つの「新駅2」は福岡市博多区東平尾公園への設置を想定しており、博多の森陸上競技場やベスト電器スタジアムなどの大規模スポーツ施設が近くにある。どちらの駅付近も、現状では自動車移動がメインの立地ではあるものの、仮に鉄道路線が通って駅が設置されれば、それぞれ相応の利用者は見込めるだろう。

 長者原駅から福岡空港駅までの所要時間は、Aルート・4分、Bルート・11分、Cルート・7分、Dルート・12分となっており、原町駅を経由する分、A・Bルートに比べてC・Dルートの所要時間が長くなっている。また、現状の博多駅乗り換えの長者原駅~福岡空港駅間の所要時間(約27分)と比べると、それぞれの短縮時間はAルート・23分、Bルート・16分、Cルート・20分、Dルート・15分となっており、最大で23分、最小でも15分の所要時間の短縮が見込めることになる。

 概算事業費は、Aルート・870億円、Bルート・1,480億円、Cルート・720億円、Dルート・1,420億円。15~23分の時短効果のために、概算事業費720~1,480億円をかけて2つの路線を接続することが妥当か否かは、今後の議論における争点の1つにはなりそうだ。

新駅1付近(志免町南里)
新駅1付近(志免町南里)
新駅2付近(博多区東平尾公園)
新駅2付近(博多区東平尾公園)

【坂田 憲治】

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