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2015年08月18日 07:00

韓国経済ウォッチ~人民元の切り下げショック(後) 韓国経済ウォッチ 

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

sora それでは、なぜ中国は、いきなり人民元の切り下げを断行したのだろうか――。

 中国の人民銀行は、去年11月と今年の3月、5月に、3回にわたって0.25%ずつ政策金利を引き下げている。それだけでなく、4月からは、1兆5,000億元の貸出し緩和策を打ち出している。それにも関わらず、最近の中国の景気は振るわないため、最後の手段として輸出を促進するため、為替まで手を出すようになったという分析がある。
 中国政府はその間、輸出よりも内需を刺激することによって経済成長を達成しようとしていた。しかし、内需を刺激しようとして投入した資金は不動産に回り、不動産バブルを形成してしまった。その不動産バブルは今、臨界点に達しつつあるし、金融制度の不備により、その資金の一部はシャドーバンキングに回り、まだ表面化していないだけで、大きな問題になっている。
 このような問題を抱えているなかで、どうしても経済成長はしなければならない中国政府の苦渋の選択が、今回の為替レートの引き下げであろう。

 為替レートを切り下げることは、諸外国の抵抗にあう可能性が高いが、それを覚悟で為替レートを引き下げたのは、それほど中国は状況が悪いことを物語っていると、専門家は口をそろえる。中国は景気が落ち込んで不満が蓄積され、それが原因で暴動でも起きれば一大事なため、それよりは、それを防ぐ方策として為替の切り下げを選択したのではないだろうか――。

 それではなぜ、中国の輸出は低迷しているのか。言うまでもなく、世界経済が低迷しているので、それが原因の1つであることは間違いないが、実はドル高が、輸出不振の原因の1つになっている。
 人民元はドルにほぼペッグされているので、ドル高になると、アメリカに対しては輸出は有利になるが、その他の世界の主要通貨に対しては、ドル高は元高を意味することになるので、輸出競争力を失う。それに、今年の9月に米国連邦準備理事会での利上げが予想されていて、さらなるドル高が進む可能性があるため、中国の輸出は不利になることが予測される。

 では今回の人民元の切り下げは、韓国経済にはどのような影響を及ぼしているのか――。
 今回の人民元の切り下げに対し、韓国政府は警戒を緩めていない。人民元の切り下げでドル高になることによって、ウォンは大幅にドルに対しては切り下げになったが、為替市場は大きく揺れている。為替市場の動揺は株式市場に飛び火し、株式市場では外国人投資家が1日に914億ウォンもの株式を売却するなど、人民元の切り下げは、株式市場にまで波紋を投げかけている。株式市場への影響は韓国だけでなく日本、香港などの株式市場にも影響している。日経平均株価は1日に数百円の下げを記録するなどm敏感に反応している。

 韓国はこのような金融市場への影響だけでなく、輸出などの実物経済への影響を心配している。韓国の輸出において中国の比重が最も高いため、今後の行方に韓国企業は神経を尖らせている。韓国の対中輸出の7割は中間財なので、ウォン安になったことで輸出が増えるという観測もある反面、今回の中国政府の措置は、中国経済が相当悪いという証でもあるので、今後の悪影響を懸念する声も根強い。

 今年の9月に習近平主席の訪米を控えているので、アメリカとの関係を考慮して、これ以上の切り下げはないだろうという意見を出す専門家もある。その反面、中国政府は人民元を基軸通貨とするため、人民元の切り上げなどを通して努力してきたが、今回の切り下げは国際通貨基金(IMF)のSDR(特別引出権)のバスケットになっている米ドル、英ボンド、ユーロ、円に次いで人民元をバスケットに入れるための戦略であるという分析もある。
 今回の人民元の切り下げは、輸出を促進したいという中国政府の狙いは明確であるが、一方では、切り下げは通貨戦争のトリガーになるのではないかと懸念する声もある。

(了)

 
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