2024年12月10日( 火 )

建設産業を取り巻く状況(前)

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建設産業の果たす社会的役割

kensetu_img4 建設産業は地域インフラの整備やメンテナンスなどの担い手であると同時に、地域経済・雇用を支え、災害時には最前線で地域社会の安全・安心の確保を担う。地域の守り手として、国民生活や社会経済を支える大きな役割を持っている。しかし、現在、建設産業を取り巻く環境は改善を重ねながらも、課題もまだ存在する。バブル崩壊後、建設投資の急激な減少や競争の激化により、建設産業の経営を取り巻く環境の悪化と、現場の技能労働者の減少、若手入職者の減少といった構造的な課題に直面している。中長期的なインフラ品質確保のためには、持続可能な建設産業の構築が重要である。

今後解決すべき具体課題

<地域の建設産業の再生>
 建設投資の急激な減少にともない、受注競争が激化し、ダンピング受注、企業の利益率の悪化、人員削減などが進行した。ピークとなる1992年の建設投資額は約84兆円だったが、2010年に約41兆円まで落ち込んだ。しかし、その後増加に転じ、14年には48.4兆円となる見通し。ピーク時に比べ、42.3%減となっている。地域社会の担い手である建設企業の事業継続に不安が広がっている。

<建設産業の担い手の確保、育成>
 ダンピング受注、下請けへのしわ寄せから技能者の賃金が下落。就業者の労働環境が悪化し、入職者の減少、高齢化が進行している。技能労働者の賃金水準を見てみる。14年の年収を比較すると全産業平均の536万円に対し、建設業では408万円と大きな開きがある。また建設就業者の年齢を見てみると、14年時点で3割以上が55歳以上、29歳以下は約1割にとどまっている。これでは、将来の担い手は集まらず、技術の継承にも大きく影響が出ると懸念される。

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講じている施策などの概要

(1)低入札価格調査基準の見直し(2013年5月)
 一般管理費の算入率を30%から55%に引き上げ、標準的な土木工事において、入札価格が予定価格に対し、約86%から約88%へと上昇した。

(2)公共工事設計労務単価の引き上げ
 同単価を15年2月に4.2%(被災地では6.3%)引き上げ、12年度比では、+28.5%(被災地では+39.4%)まで上昇している。

(3)社会保険未加入対策
 13年度公共工事設計労務単価には、社会保険未加入者の加入に必要な経費についても算入した。若年者の入職促進のため、最低条件である社会保険未加入対策について、行政・元請、下請企業が一体となって取り組みを推進する。17年度をメドに、企業単位で許可業者の加入率100%を目指す。14年8月より、国交省直轄工事においては、3,000万円以上の工事の一次下請企業について、社会保険加入企業に限定している。15年4月より、入契適正化法改正により、施工体制台帳作成の下限額を撤廃した。

(4)公共事業関係予算の確保
 14年度当初予算はほぼ前年並みの5.4兆円を確保。予算編成時に、「今後の社会資本整備については、厳しい財政状況下、国民生活の将来を見据えて、既設施設の機能が効果的に発揮されるように計画的な整備を推進していく必要がある」との基本方針を発表した。今後も安定的、継続的な予算確保に向けた第一歩である。

(5)担い手3法改正(2014年6月施行)
 インフラなどの品質確保とその担い手確保を実現するため、公共工事の基本となる「品確法」を中心に、それと密接に関連する「入契法」「建設業法」も一体として改正した。

1.品確法の改正
・基本理念の追加:将来にわたる公共工事の品質確保とその中長期的な担い手の確保、ダンピング防止など
・発注者の責務(基本理念に配慮し、発注関係事務を実施)を明確化
・事業特性に応じて、選択できる多様な入札契約方式の導入・活用し、行き過ぎた価格競争を是正
2.入契法の改正
・ダンピング対策の強化(入札時の入札金額の内訳の提出、発注者による確認)
・施工体制台帳の作成・提出義務を拡大
3.建設業法の改正
・建設業者・団体、国土交通大臣による担い手の育成・確保の責務
・業種区分を見直し、解体工事業を新設
・ 建設業許可について、暴力団排除条項を整備

(つづく)
【東城 洋平】

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