2024年06月21日( 金 )

長浜再開発で注目、海辺空間「ベイサイド北天神」(5)

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(上)ベイサイドプレイス博多埠頭、(下)博多港国際ターミナルとマリンメッセ福岡
(上)ベイサイドプレイス博多埠頭
(下)博多港国際ターミナルとマリンメッセ福岡

都心部ウォーターフロントと臨港鉄道跡地が再開発へ

 88年12月に福岡市は「都心部ウォーターフロント開発構想」を策定・発表した。同構想の対象地域は、①都心部ウォーターフロント地域(陸域約170ha:中央ふ頭地区、博多ふ頭地区、須崎ふ頭地区、博多漁港および鮮魚市場地区)、②周辺地区(都心部ウォーターフロント地域の周辺に位置し、都心部ウォーターフロント地域と都心部などを結ぶ地域)としており、今回触れている「ベイサイド北天神」ともオーバーラップするエリアだ。同構想の目標は、ウォーターフロントの立地特性を生かしながら、ゆとりとうるおいある魅力的空間の形成を目指そうというもので、以降の開発の指針となり得るものとなった。

 また、同構想との整合性を図りながら、89年3月には21世紀を目標とした都心部ふ頭地区再開発の青写真となる「博多港ポートルネッサンス21計画」が策定された。同計画では「中央ふ頭地区」「博多ふ頭地区」「須崎ふ頭地区」の3つのふ頭を対象エリアとして、「人・物・情報が交流し、ウォーターフロントを生かした福岡市の海の玄関口の形成」「物流機能と調和し、広域交通アクセス性とウォーターフロントを生かした国際情報業務地区の形成」をコンセプトに再開発の方針を策定。この再開発方針に基づくかたちで、91年6月に博多ふ頭で複合施設「ベイサイドプレイス博多埠頭」が開業したほか、93年4月に中央ふ頭で「博多港国際ターミナル」が供用開始。95年8月には中央ふ頭の基部でコンサートホール・コンベンションセンター「マリンメッセ福岡」が開館した。

 なお、ベイサイドプレイス博多埠頭はその後、経営母体であった第三セクターの(株)サン・ピア博多が05年9月に経営破綻したことを受けて、九電工に売却。管理運営は九電工子会社の(株)九電工ネットプロデュースを経て、(株)ベイサイドプレイス博多に移管され、現在も営業を継続している。

(左)各ふ頭の臨海部には倉庫施設等が集積、(中)国内航路のターミナル機能をもつ博多ふ頭、(右)国際交流機能を担う中央ふ頭
(左)各ふ頭の臨海部には倉庫施設等が集積
(中)国内航路のターミナル機能をもつ博多ふ頭
(右)国際交流機能を担う中央ふ頭

 こうした都心部ウォーターフロントの再開発が進む一方で、廃止された臨港鉄道の跡地でも土地所有者であるJR貨物による再開発が進行していった。長浜地区の福岡港駅の跡地では、99年2月に賃貸マンション「エフメゾン北天神」が竣工したほか、同年9月に立体駐車場「エフパーキング北天神」およびスポーツクラブ「NAS北天神」がオープン。さらに01年9月には「ローソン長浜一丁目店」が、同年12月にはスーパー銭湯「天神ゆの華」が相次いで開業していった。冒頭で閉店したことを触れた施設は、このときの開業だ。なお、東区東浜町にあった博多港駅跡地でも、2000年6月に大型商業施設「ゆめタウン博多」が開業している。

 こうして都心部のウォーターフロントエリアであるベイサイド北天神では、埋立によって陸域を拡張して港湾機能を拡充する一方で、時代の変遷による担う役割の変化に合わせて再開発を行いながら、現在に至っている。

海と都心部とをつなぐ立地ポテンシャル

 改めて現在のベイサイド北天神エリアを見ると、3つのふ頭(須崎ふ頭、博多ふ頭、中央ふ頭)とその基部で構成されており、ちょうど博多湾の海と都心部との間をつなぐエリアだということがわかる。エリアの用途地域を見ると、ふ頭をはじめとした海に直接面している臨海部が準工業地域(建ぺい率60%、容積率300%[一部200%])で、少し内陸に入れば商業地域(建ぺい率80%、容積率400%[一部500%])となっている。

 3つのふ頭の概要については本誌vol.47(4月末発刊)でも紹介したが、おおまかに説明すると、須崎ふ頭は大規模な保管施設を備えた九州の穀物基地としての役割を担っているほか、博多ふ頭は壱岐・対馬や五島航路などへの国内航路のターミナル機能、中央ふ頭が博多港国際ターミナルやクルーズセンターなどの国際交流機能といった具合だ。また、博多ふ頭および中央ふ頭の基部エリアにかけては、国際会議場や展示場、ホールなどのMICE関連施設も集積している。エリアの南側では幹線道路・那の津通りが東西に走るほか、須崎ふ頭への入口部分には福岡高速道路(都市高)の天神北出入口もあり、都心部・天神から広域に移動する際のアクセスの起点ともなっている。ちなみに、福岡国際センターや福岡サンパレス、福岡国際会議場の前を通り、那珂川と御笠川に挟まれた約700mの区間だけ不自然に整備された、一見すると幹線道路のように見える片側2車線の道路「石城町487号線」は、かつての臨港鉄道が通っていた線路跡である。

 ふ頭基部にあたる築港本町や石城町、長浜1・2丁目、港1・2丁目などでは、主に幹線道路である那の津通りに沿って、オフィスビルやマンションなどが集積。また、那の津通りと渡辺北通りが交わる那の津口交差点の角には、九州朝日放送(株)(KBC)が本社を構えている。長浜から那の津通りを挟んで南側の舞鶴には、繁華街である「親不孝通り」もあり、居酒屋・飲食店をはじめとした商業機能も備えている。ただし、港湾施設や卸売市場、ターミナル、MICE関連施設などの人が住むのには適さない施設が集積している関係上、ベイサイド北天神は決して人口が多いエリアというわけではない。前述したように那の津通り沿いなどでマンションの立地は見られるものの、福岡市の住民基本台帳に基づく登録人口(22年10月末現在)では、中央区那の津(1~5丁目計)93人、長浜(1~3丁目計)3,290人、港(1~3丁目計)4,481人、博多区築港本町2,366人、石城町1,366人、沖浜町26人という状況だ。

16_(左)築港本町で建設中の「(仮称)築港本町_136」、(右)解体工事が進む「ENEOS福岡セントラルSS」
(左)築港本町で建設中の「(仮称)築港本町_136」
(右)解体工事が進む「ENEOS福岡セントラルSS」

 とはいえ、同エリアが市内の他エリアと比べて、マンションなどの開発があまり行われていないかというと、そうでもない。たとえば地場デベロッパーの(株)えん(現・(株)えんホールディングス)では01年に「エンクレスト天神東」を完成させたのを皮切りに、この20年で10棟以上を築港本町周辺で供給している。現在も中央区港では、(株)グッドライフカンパニーによる「LIBTH西公園」(ワンルーム21戸、22年2月竣工)や(株)モダンプロジェによる「MODERNPALAZZO大濠Porto」(ワンルーム27戸、22年8月竣工)、博多区築港本町では、グッドライフカンパニーによる「(仮称)築港本町_136」(ワンルーム56戸、23年3月竣工予定)や生和コーポレーション(株)による「シャンボールなごみ」(ワンルーム48戸、23年2月竣工予定)、博多区石城町では、(株)コーセーアールイーによる「(仮称)グランフォーレ博多ウォーターフロント」(247戸、23年3月竣工予定)のほか、(株)マリモによる「(仮称)アルティザ博多」(ワンルーム48戸、23年3月竣工予定)、(株)LANDICによる「(仮称)石城町マンション」(ワンルーム84戸、22年9月着工予定)、DM都市開発(株)による「(仮称)ResidentialGem石城町新築工事」(ワンルーム45戸、23年2月着工予定)など、マンション開発などは相応に行われている印象だ。ほかに、那の津口交差点の角に位置するガソリンスタンド「ENEOS福岡セントラルSS」は現在、解体工事が実施中。11月18日時点でまだ土地の所有権は移転していないものの、解体工事完了後には何かしらの開発が行われると見られる。

(つづく)

【坂田 憲治】

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