2024年04月29日( 月 )

虎ノ門再開発が佳境 超高層ビルが続々(後)

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表参道と奥原宿の境 原宿クエストが建替え

 NTT都市開発は商業施設「原宿クエスト建替え計画」に着手。25年春の竣工を目指し、10月から建設工事が進められている。新生「原宿クエスト」は、地上6階・地下1階建の複合商業施設で、フラッグシップ店舗が並ぶ表参道と、個性豊かな路面店が点在する奥原宿の境界という立地を生かした二面性のある計画となる。デザインアーキテクトは、建築設計集団OMAのパートナーおよびニューヨーク事務所代表・重松象平氏が手がける。

 昨年10月に閉館した旧・原宿クエストは、NTTグループ前身の電電公社・総裁公邸跡地にあった複合施設で、1988年に開業していた。

ターミナル駅が一新へ 新宿でも大規模再開発

 山手線や中央線などJRの主要路線、さらに小田急電鉄、京王電鉄、東京メトロ、都営地下鉄の各路線が乗り入れる巨大ターミナル・新宿駅の周辺でも再開発は活発だ。

 小田急電鉄(株)と東京地下鉄(株)は、小田急百貨店新宿店本館と新宿ミロードの一部を建替え、地上48階建・高さ約260mの大規模複合施設を建設する。高層部にはハイグレードなオフィス機能、中低層部には商業機能、低層部にはビジネス創発の情報や小田急沿線、東京メトロ沿線等の情報を発信する機能が設けられるという。「にぎわいと交流を生み出す滞留空間の整備」「人中心の駅前広場整備への協力」「交流・連携・挑戦を生み出すビジネス創発機能の整備」「帰宅困難者支援や面的な多重エネルギーネットワークの構築による防災機能強化」などが整備方針には掲げられる。

 道路が未整備で老朽化した建物や木造建物が多く、地区全体として住環境、商環境、防災上などに問題があった「西新宿五丁目北地区」では、約2.4haの区域で大規模複合ビルが開発されている。住友不動産による地上33階・地下2階建、延床面積約7,980m2のオフィスおよび高級賃貸マンション「(仮称)ラ・トゥール西新宿五丁目」、地上35階・地下2階建、延床面積約4,300m2の分譲マンション「シティタワー新宿」が23年春に完成予定。「世代をこえて喜ばれるまち」というまちづくりビジョンを掲げている。

27年完成のTorch Tower 虎麻抜いて高さ日本一へ

 「虎ノ門・麻布台プロジェクト」のA街区ビルは23年、完成すれば「あべのハルカス」(大阪市)を抜いて日本一の高さとなるが、27年には地上62階・地下4階建、高さ約390mの超高層ビル・Torch Towerが完成予定で、約4年で日本一高いビルの座を奪われることとなる。Torch Towerを開発するのは三菱地所で、お膝元・丸の内に近い大手町2丁目で進められる「TOKYO TORCH」街区内にできる。

 常盤橋プロジェクトは、東京駅周辺で最大となる敷地面積3.1haにおよぶ大規模複合再開発で、下水ポンプ所および変電所といった東京都心の重要インフラの機能を維持しながら段階的にビル開発を進める計画。21年6月には常盤橋タワー(A棟)が竣工した。TOKYO TORCHは、日本・東京の玄関口として「都心観光の核」となることを目指しており、そのシンボル的存在のTorch Towerには、アジア初進出となるラグジュアリーホテル「Dorchester Collection」が誘致されることが、11月に発表された。三菱地所の執行役社⾧・吉田淳一氏は、「東京の新たなランドマークとなるTorch Towerの大切な要素であるホテルに同社が⾧年培ってきた文化とホスピタリティを吹き込むことにより、この場所でしかできない『唯一無二の体験』をこのホテルは提供できるものと確信しております」とコメントした。

東京・八重洲で超高層ビルが続々

 TOKYO TORCHに近い八重洲エリアでも、大型再開発が進められている。三井不動産(株)は8月に地上45階・地下4階建、高さ約240mの超高層ビル「東京ミッドタウン八重洲」を竣工。八重洲1丁目では、東京建物(株)らがオフィス、店舗、バスターミナル、カンファレンス、医療施設を備えた地上51階・地下4階建、高さ約250mの複合施設ほか1棟を建設中で、25年3月の完成を予定している。常盤橋タワーの向かいでも、東京建物が地上45階・地下5階建、高さ235mの大型複合施設を計画しており、25年度の着工、35年度の竣工予定となっている。

 さらに、八重洲2丁目では約1.9haの敷地において、三井不動産らが地上43階・地下3階建、高さ226mの複合施設を計画中。オフィスなどのほか、外国人の多様な滞在ニーズに対応したサービスアパートメント、外国人子女に高水準の教育を提供するインターナショナルスクールが導入される。24年度の着工、28年度の竣工を予定している。

 三井不動産は、日本橋1丁目でも大型再開発に取り組む。「日本橋一丁目中地区第一種市街地再開発事業」は、約1.9haの敷地に地上52階・地下5階建、高さ284mの大型複合施設を建設中で、25年度の完成を予定。延床面積は38万m2で、オフィス、商業店舗、サービスアパートメントのほか、ホテルには日本初進出となるヒルトンの最上級ラグジュアリーブランド「ウォルドーフ・アストリア東京日本橋」が誘致される。

 また、日本橋1丁目東地区では、東急不動産らが約1.9haの敷地で地上40階・地下4階建、高さ約240mのオフィス・店舗・カンファレンスなどの複合施設や住宅、サービスアパートメント、生活支援施設、店舗などの複合施設の開発を計画中で、それぞれ30年度、34年度の完成が、全体完成は37年度の予定となっている。

 このほかにも、東京都心では大規模再開発が計画されており、至るところで建設工事が続けられている。その多くが、オフィスを中心とした複合ビルだ。オフィス仲介大手の三鬼商事(株)が発表しているデータによれば、今年10月時点の東京ビジネス地区(都心5区/千代田・中央・港・新宿・渋谷区)の平均空室率は6.44%と21年6月以降は6%超で推移しており、空室率の高止まりが続いている。平均賃料も右肩下がりで推移しており、コロナ禍以降は空室率の高止まりと賃料下落トレンドが続いている。それでも、足元の売買マーケットは堅調のようで、取引は活発に行われている。数年後に巨大再開発ビルが次々と完成を迎えていくころ、都心の不動産市況はどのような局面を迎えているのだろうか――。

(了)

【永上 隼人】

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