2024年05月09日( 木 )

ウクライナで西側追随の岸田政権を鈴木宗男氏と佐藤優氏が批判(前)

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鈴木氏と佐藤氏(左)
鈴木氏と佐藤氏(左)

 地域政党「新党大地」代表で「日本維新の会」副代表でもある鈴木宗男参議院議員が1月25日、支持者向けの勉強会「東京大地塾」を永田町で開催、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏が同席した。両者は「ゼレンスキー大統領=善、プーチン大統領=悪」という単純な善悪二元論と一線を画し、多角的視点で今回の侵攻を捉えながら早期停戦を訴え続けてきた(2022年5月19日の本サイト記事「『東京大地塾』ウクライナ侵攻で激論」を参照)。

 この日も鈴木氏が冒頭の挨拶で、西側諸国とともにロシア批判を繰り返す岸田首相を「国益を損ねている」と批判。具体的事例として「ロシア、日本との漁業協定交渉応じず 北方領土周辺、操業に影響」(『毎日新聞』23年1月21日付)と報じられた漁業交渉頓挫をあげ、こう問題視した。

「岸田首相がフランス・イタリア・イギリス・カナダ・アメリカを訪問し、首脳と会って、ロシアの悪口ばかりいっていた。結果、ロシアと協定交渉に入れず、今年に入って『交渉はしない』と通告を受けた。これは日本に何のプラスにならない。一にも二にも停戦、日本が大きな役割をはたすべきだ。」

 これを受けて佐藤氏も、岸田政権の姿勢を次のように疑問視した。

「日本は仲介者となり得る客観的に有利な点がロシアに対してある。殺傷兵器を送っていないのはG7で日本だけ。日本は意外と独自の立場を取っている。トルコと比べても仲介者となるのに有利な立場にあるのに、その可能性を岸田政権は自らつぶしている。非常に下手なことをやっている。

 とにかく人を殺すのを止めて、そこのところから外交に舞台を切り替えて、そのなかで問題を解決することを考えればいい。なぜ、そういう現実的発想に日本が立てなくなっているのかが不思議だ。ある意味、平和ボケ。実際に戦争に巻き込まれるのがどういうことか、人が死ぬのがどういうことかというリアリティが希薄になっている。」

 続いて佐藤氏は「外務省に不満をもっている」と切り出し、次のような批判をした。

 「外交官が勇ましいことを言ったらダメだ。戦争は軍人の仕事なのだから、外交という自分の仕事をなくすようなことを外交官がしてはいけない。今、ロシア語を勉強した『ロシアスクール』と呼ばれる人々が、ギリギリのところまでロシアとの関係悪化を防ぐために努力しているとは到底いえない。自己保身に立っている。」

 また佐藤氏は、戦争を食い物にする専門家が論壇で跋扈していることも紹介した。この日は名前を伏せたが、「小泉悠氏の危険な言説 根拠なき安保政策共有せず<佐藤優のウチナー評論>」(『琉球新報』1月21日付)で批判した小泉悠氏であることはネット検索で確認できた。

 「ロシア軍事の専門家と言っている人が今月の文藝春秋(2月号の「『平和ボケ』日本はウクライナで目覚めよ」)で沖縄について書いている。『近く中国は沖縄の南西諸島沖で核を爆発させるかもしれない。台湾での中国の武力侵攻があったときにアメリカの側に立たないように牽制するかもしれない。そのときにひるまずに政府と一体となって戦えるのかどうかが問われている』とこの人は言っている。これはとんでもない。そもそもウクライナ戦争によって、中国が台湾に侵攻するのかどうかは分からない。『侵攻する』というシナリオもある。しかし中国だって、これだけ全世界を敵に回すような状況、これだけ経済制裁をかけられて孤立する状況になるのであれば、台湾を侵攻するよりも経済力をつけて、20年後にアメリカと同じ経済力を持てば、(台湾の)国民党の中には大陸と一緒にやりたいと思っている人もいるわけだから『柿が熟するように落ちてくる』と考える人もいると思う」(佐藤氏)。

 こうした危険な言説が月刊誌『文藝春秋』に掲載され、自民党にも勇ましい主張をする政治家が増えるなか、佐藤氏は公明党とその支持母体の創価学会と維新に注目していた。

「公明党、その支持母体である創価学会に期待している。(防衛費倍増を盛り込んだ)今回の安保3文書でも、日本の兵器産業は殺傷能力のある兵器を売りたいわけだが、ここは公明党は非常に堅い。支持母体の創価学会の平和主義、『殺傷能力のあるような兵器を外国に輸出することは一線を画さないといけない』という考え方がある。

 維新はある意味、良い意味での選挙互助会。そうすると、鈴木さんは選挙強いからね。それに正面切って大喧嘩したいと思っている人は維新のなかでもあまり数多くないと思う。となると、歴史における個人の役割で、鈴木宗男さんという突出した人の役割が発揮できると維新もいい政党になる」(佐藤氏)。

(つづく)

【ジャーナリスト/横田 一】

(後)

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