2024年05月10日( 金 )

広域交通の要衝・古賀市で進む6つの開発(前)

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古賀市の開発動向
古賀市の開発動向

恵まれた交通アクセス

 福岡都市圏の北東部に位置し、豊かな自然環境や交通アクセスに恵まれた立地から、ベッドタウンや工業団地、物流拠点などの多様な発展を遂げてきた古賀市。とくに交通の利便性は極めて高く、市内を南北に国道3号、国道495号の2本の国道のほか、主要地方道である筑紫野古賀線(福岡県道35号)が通る。

 さらに九州自動車道・古賀ICを擁し、移動所要時間1時間以内の距離に国際拠点港湾2港(博多港、北九州港)および重要港湾(苅田港)1港があるほか、2つの空港(福岡空港、北九州空港)もあり、陸・海・空それぞれの拠点に対しての抜群の交通アクセスを誇っている。

 そうした地理的優位性を背景として、これまで古賀市内では多くの工業団地・物流団地が開発されてきた。その皮切りとなったのは、地域振興整備公団(現・中小企業基盤整備機構)が事業主体となって開発し、1968年度に完成した今在家工業団地(35.7ha)だ。その後も需要に応じて隣接部の拡張を行うかたちで、青柳工業団地(83年度完成、15.2ha)、鹿部工業団地(福岡食品加工団地/90年度完成、14.1ha)、三田浦工業団地(94年度完成、19.6ha)、楠浦工業団地(2000年度完成、11.1ha)などの開発を繰り返し、現在では全体として約70社の製造業・卸売業・倉庫などが集積した産業クラスターが形成されている「古賀工業団地」となっている。

 その一方で、古賀物流団地(14年度完成、19.0ha)や玄望園地区物流団地(19年度完成、19.2ha)、古賀青柳工業団地(20年度完成、10.4ha)など、古賀工業団地から離れたエリアでは主に物流団地の開発も順次進行。前述のように陸・海・空それぞれの拠点へのアクセスに優れた立地から、多くの企業からの引き合いが相次ぎ、いずれの物流団地もすでに全区画が埋まっている状況だ。

 こうした豊富な工業団地整備により、古賀市は県内でも有数の製造品出荷額を誇り、なかでも食料品製造品出荷額では福岡市に次いで県内2位を長年キープするなど、製造業を中心とした企業の進出需要が高い地域となっている。だが現在は、市内既存工業団地に空き区画がなく、土地の確保が難しい状況となっている。

 そうした状況下で古賀市では現在、市内6地区で新たな開発が進もうとしている。以下、それぞれの地区の開発概要について見ていこう。

(1)今在家地区

今在家地区
今在家地区

 今在家地区は国道3号沿いに位置しており、前述の古賀工業団地とは青柳川を挟んだ対岸に位置する約21.1haのエリアだ。古賀工業団地の拡張としては、約四半世紀ぶりとなる。21年6月に市街化区域への編入および用途地域(工業地域)の決定、地区計画の決定がなされた。

 土地利用の方針としては、隣接する工業団地と調和した産業集積を図り、著しく環境を悪化させる恐れのない製造業等の誘致を図るとともに、良好な市街地環境の形成・保全を図るというもの。エリア内は国道3号に面したA地区(約2.5ha)と、その南側にあたるB地区(約16.0ha)、さらに幅員16mの区画道路を隔てて南東部に位置するC地区(約2.6ha)の3つに区分。A地区では沿道サービス等の商業系の建築物の建築も認めるほか、BおよびC地区では一定規模以上の敷地面積による良好な工業団地の形成を図るとともに、工場併設店舗などの小規模店舗の立地によって、まちの賑わい等の創出も図るとしている。

 現在、当該地区では一面田畑が広がっているが、開発に向けた土地造成工事は今秋にも着工する予定。完了まではおよそ3年間を要する見込みとなっている。

(2)青柳大内田地区

 青柳大内田地区は、市の農産物直売所「コスモス広場」から九州自動車道を挟んだ反対側に位置しており、もともとは荒廃農地だった場所だ。近年、企業立地ニーズが高まる一方で、市内の既設団地が埋まっていることから、新たな受け皿とするべく、開発に向けた地区計画を設定するための手続きを開始。都市計画審議会などを経て、22年4月に地区計画が決定した。

 計画地の敷地面積は約18.9haで、流通・工業系を中心に産業振興を図るA地区(約16.6ha)と、公園や緑地の保全を図るB地区(約2.3ha)に区分して、それぞれにふさわしい適正な土地利用を誘導。また、地区内には新たに幅員12mの区画道路も整備する。筑紫野古賀線にほぼ隣接しているうえ、古賀ICにも近く、利便性は抜群の地区だ。現在、現地調査の一環で生い茂った雑木林の伐採などが行われており、今後、造成工事も順次進行していく予定となっている。

青柳大内田地区&青柳釜田地区
青柳大内田地区&青柳釜田地区

(3)青柳釜田地区

 筑紫野古賀線を挟んで古賀グリーンパーク(総合健康文化公園)に隣接する青柳釜田地区は、市の都市計画マスタープランにおいて「古賀グリーンパークに隣接する立地条件を生かし、観光や産業振興の拠点機能の充実のため、工業系土地利用をはじめ、併設店舗やレジャー施設等の誘導に取り組む区域」として位置づけられている。同地区において適正かつ計画的な工業系施設等の土地利用を誘導し、市の活力維持・向上を図るとともに、周辺環境と調和した良好な産業振興地区の形成を目指すため、23年1月に地区計画が決定。計画地の敷地面積は約6.8haで、既存の流通系施設用地である北側のA地区(約2.3ha)と、工場・店舗等の土地利用を誘導するB地区(約4.5ha)に区分し、周辺環境と調和した良好な産業振興地区としての土地利用を図るとしている。

 なお、同地区ではすでに(株)ピエトロの新工場が立地することが決定している。21年3月には、ピエトロと古賀市が立地協定を締結。22年10月に新工場の計画概要が発表されている。「ピエトロ古賀新工場(仮称)」は、S造・地上2階建、延床面積約8,158m2となる計画で、現在3工場に分散している生産機能を集約することなどにより、生産性の向上を図る。また、工場見学コースを設置して“コト消費”の観光に資する機能を有するほか、レストランやショップの併設により賑わい創出にも寄与する。新工場建設の着工は24年6月を予定しており、25年秋の稼働を見込んでいる。

(つづく)

【坂田 憲治】

(後)

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