2024年04月29日( 月 )

【福岡IR特別連載121】大阪IR、岸田政権、予想通りの政府承認(3)

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 筆者は、ここ数日、長崎IRについての「継続審査」という、政府の表向きの「方便会見」を観て、また、その当事者である長崎IRの政治行政責任者ならびにその民間協力組織の責任者たちが、各社マスコミから質問され、インタビューに応えている姿に落胆し、この国の政治経済界の行く末を強く憂うのである。

 筆者は本稿連載にて、長崎IR関係責任者のほぼすべての人たちが、最終的に、我々は頑張ったけど、すべては「国の判断」だから仕方がないという自己責任回避に終始するだろうと予測し解説してきた。それが案の定になったとは、何という情けない姿であろうか。

 その筆頭たる大石県知事による「継続審査」の結果を受けた発言は、「より、実現に向けて取り組みたい...」というもので、いかにもいまだ可能性があり、より努力すれば報われるとでもいうような表現を用い、一貫して姑息としかいいようがない応答に終始しているのだ。これは一見、物事をあきらめず、最後まで本件に執着し、頑張っているような姿で、その場を取り繕っているに過ぎない。また、ほかの各組織関係者たちの発言も異口同音で大きな違いはない。

 なぜに、彼らは潔く、自らの責任で、本音で物がいえないのか?

 これらは今後間違いなく悪循環になる! 詭弁と自己責任からの逃避は、さらに墓穴を掘るものだ! なぜに、このような人たちばかりが各組織の責任者に多いのか? インタビューしている記者たちも、本音ではすでに長崎IRの可能性はないとわかっているのである。にもかかわらず記者たちにも、責任者たちのその場しのぎの取り繕いに対して、さらに突っ込んで問いただす者は皆無である。インタビューをする側もされる側も示し合わせた茶番を演じているにすぎない。なんとも胆力のない人間ばかりだ。

分をわきまえるとは、その人の“器”と“度量”である

ハウステンボス イメージ    今回、インタビューされる側の姑息な人たちは、近日中に、政治的にも追い込まれ、まんまとマスコミの餌食になるだろう。

 一方で、彼らを手のひらに乗せた「HIS澤田氏の能力」は言うまでもなく、愚鈍な彼らを踊らせて「澤田氏が1人勝ち」した本件の帰結は、十分に納得できるだけの長崎IRの顛末である。簡潔にいうと、長崎IRは、ハウステンボスの高額な取引、転売譲渡に際して、より付加価値の高い条件として利用されただけで、結果として、巨額な転売ビジネスの余興として演じられた茶番劇なのだ。

 「ハウステンボス転売譲渡」問題は、倫理観からいえば、HIS側に多少の落ち度はあるが、ビジネスとしては"国際取引での高い能力"を示した結果といえるのだ。従って、これは責められるべき問題ではないと以前から解説している。中国習近平共産党政権に近い中華系企業PAGに譲渡転売されることなど、本件関係者の誰1人気付いていなかった。これが完全な“致命傷”となって長崎IRは事実上崩壊した。正に危機感のまるでない関係者の平和ボケぶりが露呈されたのである!

 現在の米中覇権争いと台湾有事が現実味を帯びるなかで、我が国の古くからの“西の防衛の要”軍事基地佐世保市において、中国企業PAG所有のハウステンボスにIR事業のライセンスを付与するなどは絶対にあり得ないことだ! 政治行政機関の人間なら、それは「イロハのイの字」ではないか。

 また、時代遅れの「ギャンブル依存症」を主たる理由にした国際感覚もない反対派の人たちも、併せて、この舞台に登場して踊っていただけでの話しである。

 すでに、解説しているように、今回の岸田政権による"思いやり?"「方便会見」は、先ずは、今月末の佐世保市長選挙ならびに佐世保市議会議員選挙を踏まえての“思惑”であって、一方で長崎県行政に対しては、国に頼らず自らの責任で「自己完結」し“名誉ある”「撤退」をする様、親切に促しているのかもしれないのだ。おそらく、今月末の選挙後の近い時期に長崎IRは正式に否認されるであろう。

 現政権下、IR審議会は昨年5月から約1年にわたり審査作業を行った結果、約1年、「大阪IR」のみを承認した。大阪IRは、長崎IRとは比較できないほど大規模で政府指導通りのコンソーシアムによる事業運営体を予定している。それとひきかえ、小規模で杜撰な計画の長崎IRの審査結果など、当に答えは出ていたも同然なのである。

 ただ、岸田政権の政治的戦略で、その影響力を考慮し、「全国統一地方選挙」後までその結果公表を先延ばししたに過ぎないのだ。

 これらは、以前から、重ねて本稿連載にて解説してきた。

 今も昔も...、先の大戦、太平洋戦争において、時の政治責任者や、軍人達、民間組織、マスコミ含めて、最初から無理な戦を仕掛けて、新聞などはそれらを煽り、それぞれがヤバいと気付いても、誰もが自己責任回避に走り、途中で止めることができず、最悪な結果を招いたことは、この国の紛れもない歴史である。

 今回の長崎IRの顛末はこれに近い。この国の組織人の基本的な習性ともいうべき、“問題先送りによる責任回避”という基本構造はいまだに変わっていないのだ。

 元県知事や元市長が招いた長崎IRの基本的な過ち、すなわち、HIS澤田氏のビジネス戦略に乗らされたということに途中で気付いても、それを誰も指摘せず、修正をかけようともしないまま、無責任に踏襲し、信念も器も度量もない人たちのもとで、ずるずる飲み込まれていったことは、誠に嘆かわしい限りである。もし、各責任者が、「これに気付いていなかった」などというものなら、その人たちは能無しであって、即刻辞任すべき話しである。

 長崎IRは年間670万人などという論外の集客想定をもとに、達成できる筈もない計画として打ち上げられた事業であり、責任者は勇気をもって「これは最初から間違いであった」と発言行動すべきである。そんな侠気のある、器、度量の大きな人物が出てきて欲しいものだ! 今、この国の組織責任者に絶対に必要なものは、事に当たっての「人間の胆力」であり、それは現在、衰退の一途をたどる我が国の政治経済にもっとも必要とされる“人材”であると言いたい。

【青木 義彦】

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